【R18】超女尊男卑社会〜性欲逆転した未来で俺だけ前世の記憶を取り戻す〜

広東封建

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二章

17-門出

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 生まれてから長い間―――ずっと苦渋と恥辱の中に俺を縛り付けていた監獄から抜け出し、俺は礼子の用意した車に揺られていた。

 揺られていた、というのはただの慣用的表現であって、実際に車の揺れは全くといっていいほどない。
 流石は22世紀の未来というだけあって、前世の頃より技術が大幅に進歩している。

 ドライバーは搭乗しておらず―――というより運転席すら何処にも見当たらない。
 完璧な自動運転によって、最早自分で運転することを想定しない作りとなっているのか、あるいは音声認識等別の方法によって操作するのか―――いずれにせよハンドルやアクセルといった見慣れた部位はもはや過去の産物として失われたようだ。

 運転席だけではない。
 車のボディは全てマジックミラーのように外の光景が鮮明に映し出されており、まるで透明の箱の中にいるようだ。
 更に礼子の話によると、映し出せるのも外だけでなく森林や他国の風景、はたまた宇宙といったように好きな内観に変えられるらしい。

 天井には大型バスで見るようなシャンデリアがぶら下がり、冷蔵庫や棚なんかも置いてある。
 座席は指定した数が床から飛び出し、その配置や向きも自由自在に変更出来、ベッドに変形する事も可能らしい。

 運転が全て自動化されたことによって、車に求められる性能はエンジン性能や操作性よりも、車内を快適に過ごすためのインテリアに特化したようだ。
 22世紀ともなると、自家用車が空を飛んでいる世界を想像していたが、現実は普段使いする乗り物は地上を走るのが最も効率が良いとして、今もなお四輪自動車は健在だった。
 ただし人を乗せるドローンは21世紀の時点で実用化されており、緊急車両やバスといった公共の乗り物は、宅配用ドローンに混ざって摩天楼の間をビュンビュン飛んでいる。

 ちなみに今俺が乗っている車は、座席がベッド状に組み換えられている。
 敷かれた布団の上で礼子が嬉しそうに俺の右隣に寝転がり、相変わらず顕になった胸や素肌を俺の腕に擦り付けている。

 一方の俺はというと、施設を出る前に凛から貰った男子用の服を着ている。
 一応こんな時代でも、男に着せるための服の需要もあるようだ。
 さしずめ着せかえ人形のように弄ぶためといったところだろうが、凛はその中でも一番まともな洋服を選んで俺に渡した。
 やはり凛はスーツを着ているだけあって、他の調教員達や礼子のように破廉恥なファッションセンスを有していなくて助かった。
 前世で街を歩いていても違和感のない、普通の少年らしい格好に、俺は言葉には言い尽くせない安堵感を覚えた。

 そして俺の心に安心をもたらす要素がもう一つ、俺の左隣にもいた。

「スゥ……スゥ……」

 そこには親友のたくやが毛布にくるまれ、愛くるしい寝顔で眠っていた―――


 ~~~

「―――礼子、F-23733のDランク奴隷を落札してもらえないかな?」

 先程俺が礼子にお願いしたのは、たくやを買い取ってもらうことだった。

「もちろん構いませんが、游助様も同性の奴隷を持つことにご興味がおありだとは、い、意外でしたわ……
 で、でも游助様が奴隷と戯れるお姿も、わ、悪くありませんわね……」

 何を勘違いしたのか、礼子が怪しい妄想を浮かべながら『ジュルリ』と涎を拭う。

「ち、違う違う! そういう目的じゃない!
 あいつは―――たくやは俺の親友なんだ……」

 親友であるたくやがDランクとして安く買い叩かれ、便所として酷い目に遭う姿を想像したくない。
 昔のたくやはもう戻ってこないかもしれないが、せめてマシな環境に置かせたい。

 その思いから、たくやを俺の目の届くところに置こうと俺は決心した。

「そうでしたか……ちなみにそのお友達は游助様のお側に置くおつもりですか?」

「一応そのつもりだけど……」

 どこの誰とも分からない者のところでは、どんなことをされるか分からない。
 決心したからには俺がたくやの面倒をみる。
 たとえ今はたくやの心が失われていようとも、何年もかけて必ずその心を取り戻す。

 俺はそう腹をくくっていたが―――

「それは―――あまりオススメしないな」

 話を聞いていた凛が、冷静な口調でそれを静止した。

「游助様の望むとおりにして差し上げたいのですが……わたくしもそれには賛同いたしかねますわ」

 礼子までもが、俺の決断に横槍をいれてくる。

「な、なんでだよ! たくやは辛い時を俺と共に支え合ってきた親友なんだ!
 俺がまだガキだから面倒をみれないってのか!? 」

「そうじゃない、落ち着け。
 確かに君は他人の人生を担げる程大人ではないが、側に礼子が付いているし、そうでなくとも君のSランクという肩書を使えば生活くらいはどうとでもなるだろう。
 家に住まわせて飯を食わせるくらいのことは君にも出来る」

「そ、それなら……!」

 ならば一体何が問題だと言うのか。
 凛の意図が掴めない俺に対し、代わって礼子が言葉を続けた。

「Dランクに堕ちた奴隷は、既に薬とセックスの快楽を求めるだけの傀儡と化しておりますわ。
 少しでもそれらを断たれれば、苦しみ、わめき、見るも無惨な餓鬼憑きのように地べたを這い擦り回りながらその身を掻きむしる。
 ご友人のそのような姿をご覧になられたいですか? 游助様」

「そ、そんな……」

 礼子の口から語られた、便所行き奴隷の恐ろしい末路に、俺は言葉を失った。

「彼らのようにDランクとなった子達にとっての幸福は、友の情けではなく快楽だけだ。
 快楽は誰にとっても等しく幸福をもたらす。
 故に今の世は快楽こそが最も尊ぶべきものであり、性欲の沸かない男にとっては、なまじ低いランクとなり苦労を強いられるよりも、薬によって性の快楽を享受出来る肉体となった方が幸せだという考えが一般的だ。
 友を思うならば、少しでも多く気持ちいいことを味わえるように、彼らの進むべき道に送り届けてやるべきだ。
 それとも―――その快楽を君の身体をもって与えてやるとでも言うのか?」

 凛の冷酷な言葉に、俺は全身の血が沸き上がった。

「―――ふざけるな!! お前達があんな薬を使わなければ、たくやはこんなことにならずに済んだんだ!
 彼らにとっての幸福だと……?
 たくや達を奈落に突き落とした張本人が、俺達の幸福を語る資格なんてあるか!!」

 奴隷として尊厳を奪われ、運が悪ければ人間性すら奪われる――この社会の理不尽さに対する怒りを凛に向かってぶつけた。

「私も、うちの可愛い子達には少しでも良いランクになって欲しいと心から願っている。
 それは単にこの調教場への利益だけではなく、君達自身の幸福を願ってのことだ。
 だが―――ここで働く調教員達皆が皆、私と同じ思いで働いている訳ではない。
 己が欲望を満たすためにここで働いている者も、少なからずいる。
 だがそれでも奴隷への調教という範疇を超えなければ、私はそれを咎めることはない。
 私が幾ら君達を可愛く思っても、Dランクの奴隷を必要とする人達も大勢いるのだ。
 その需要に応えるためにこの調教場があり、笛水AIや各調教員が判断した君達の能力に従ってランクを決定するのが我々の使命だ」

 凛が粛々と俺達への想いを語っているが、そんなもの、俺からすれば自分が育てた家畜への愛を語っているようなものだ。
 養鶏場の鶏は卵を産めなくなれば用なし。
 いくら可愛がったところで、女達に食わせるために出荷するのは何も変わらない。
 そんな気休めにもならない言葉で俺の気が収まるはずもなかった。

「快楽に堕ちた奴隷達の体を元に戻す方法はないのか!? 礼子!」

「えっ……ええと……」

 俺に怒りを向けられ、礼子は戸惑いつつも必死に思考する。

「その……元に戻す、というのは残念ながら難しいですわ……
 Dランクの奴隷は去勢をすることで、激しい衝動が収まるというのは知られておりますが……
 それ以外にも女性がセックスの際に薬物を過剰摂取し中毒状態に陥った場合に処方される抗精神薬も、一時的にですが、奴隷に対しても有効だと聞いたことはありますわ。ですが―――」

「!! それ! その抗精神薬っていうのを使えばたくやも今の状態が治るんだな!?」

 去勢するというのは出来れば避けたい。
 可能性があるのであればと、俺は藁にもすがる思いで矢継ぎ早に礼子へと質問を被せた。

「で、ですが、長期間をかけて抗精神薬を使い、薬物とセックスへの依存症を和らげたところで、一度壊れた精神は元には戻りませんわ……
 いずれの方法にせよ心に何のさざ波も立たず、ただ抜け殻のように虚ろな目を浮かべるだけになってしまいますの……」

 恐らく唯一残された可能性すらも絶望的な状況であることを告げられ、俺は力なく肩を落とした。
 狂気のように薬とセックスを求め続ける奴隷となるか、物言わぬ草木のようにただ息をするだけの廃人となるか……いずれにせよ人と呼べるようなものではない。だが―――

(それでも……それでも……! たとえ限りなく無に等しくても、僅かな可能性があると俺は信じたい……!)

 かつて高校生だった俺が事故で死んで、肉体も自我も思念も何もない完全なる無となって蒸発しても、またこうして未来に生を受けたように―――

「―――どれだけ長い年月がかかっても、空っぽになったたくやの心に愛情を注ぎ込めば、いつかまた人としての感情が芽生えるかもしれない。
 俺はその僅かな可能性に賭けたい」

 ひょっとしたら、無理かもしれない。
 ひょっとしたら、俺がやろうとしていることが、たくやにとって苦しい結末となるかもしれない。
 ひょっとしたら、そんな可能性など元からあり得ないのかもしれない。

 だけど、俺はここで親友を見捨てて、見たくないものから目を逸らして生きる道を選びたくない。

 俺の心に迷いはなかった。

「たくやは―――俺が人に戻してみせる」

 いつかまた、たくやが俺の名を呼んでくれる日が来ると信じて。

 俺は真っ直ぐに前を見据えながら、力強くそう答えた―――



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