嫌われ者の美人Ωが不妊発覚で婚約破棄され運命の番に嫁ぐまで

grotta

文字の大きさ
37 / 46
妊娠・出産編

6.礼央の両親に会う(2)

こんな状況で寝られないと思ったのに気づいたら寝ていたようで、礼央に起こされて目が覚めた。
妊婦の眠気ってすごい。

「美耶さん、体調はどう?」

「ん…ありがとう。落ち着いたみたい」

吐き気もないしもう起きられそうだ。

「ごめん、すぐにご両親に謝りに行かなきゃ」

「謝らなくて良いって、わかってるよ。母さんだって3児の母だもの」

礼央には姉と弟がいると聞いていた。
育児経験豊富なお義母さんならこの失態も許してくれるだろうか。

リビングに顔を出すとお義父さんはソファでテレビを見ていてお義母さんはキッチンに居た。

「あの、はじめまして。神崎美耶と申します。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。しかも初めてお邪魔するのにお布団に寝かせて頂いて…本当にすみません」

俺は頭を深々と下げた。

「あらあら、そんなの良いのよ。ほら、そんな姿勢で居たらお腹苦しいでしょう。さぁそこに掛けて?」

「すみません、失礼します」

「はは、美耶くん。そんなにかしこまらなくていいよ。取って食ったりしないから」

「お父さんったら変な言い方したら美耶さんがかえって怯えるわよ」

俺は勧められてソファに腰掛けた。
お義母さんがノンカフェインの紅茶を淹れてくれる。

「ごめんなさいね。まだ調子が悪いのに来てくれてありがとう。私たちも早く美耶さんにお会いしてみたくて」

お義母さんは優しく微笑んだ。小柄な女性だけど雰囲気は礼央に似ていた。

「あ、いえ!違うんです。最近はもうつわりもほとんどなくて調子良かったんです。今日は緊張しちゃって…」

「そんなに緊張しなくて良いのよ。もうここが自分の家だと思ってくれて良いんですからね」

「あ、ありがとうございます…」

礼央も優しいけど、お義母さんもすごく優しそう。

「礼央はちゃんと手伝いしてくれてる?この子ったら勉強ばかりしてたからあまり料理や掃除は得意じゃないのよ」

「あ、はい!それはもう。何でもしてくれます」

「それなら良かったわ。礼央、あなた仕事ばかりしてないで美耶さんのことちゃんと労ってあげなさいよ」

「えー、でも産まれてくる子のためにもたくさん仕事しないとって…」

「とにかく不安な時期なんだから、一緒にいる時間を増やしなさいよ」

お義母さんは俺のことをすごく心配してくれて、αの礼央よりΩの俺を優先してくれる人だった。
お義母さん自身がΩで、お義父さんはαだと言っていた。俺の母と同じΩ女性でも、こんなに考え方が違うものなのか。
俺の母ならとにかくΩはαの子を産むだけって考えだったからな…
具合が悪いならこのまま泊まってもいいのよと言われたけど、さすがに何の準備もしてきていないし丁重にお断りしてその日は帰宅した。

帰りの車中で俺は礼央に言った。

「お母さんすごく優しいね。びっくりした」

「そうですか?僕はなんだかあれこれお小言を言われましたけど…」

礼央は帰り際にも妊婦を労れとお義母さんに指示されていた。
今後お腹がもっと大きくなったら更に大変なんだから、と。

「あはは。とにかく俺なんかにあんなに優しくしてくれて…ホッとしちゃった」

「だから何も心配いらないって言ったでしょう?うちの親、あんな感じですから今後も頼って下さい」

「うん…よかった…」

「眠いですか?寝ていいですよ。着いたら起こします」

「うん」

俺は目をつぶってうとうとしながら考えていた。
礼央の家庭はあんな感じなんだ。実は自分が育ってきた環境が少々厳しかったので、子育てにも少し不安があった。
どうやって自分の子と接したら良いのかわからないというか…
でも、礼央の家族を見て安心した。
俺が迷ってもきっと礼央がちゃんと導いてくれるって気がして。
優しいお義母さんと、物静かだけど頼りがいがありそうなお義父さん。俺達もあんな夫夫になって、フクちゃんが礼央みたいな優しい子どもに育ってくれたらいいなぁ。

信号待ちで停車したとき、礼央が俺の頭をそっと撫でた。
ちゃんと俺のことを気遣ってくれ、いつも見ていてくれる夫がそばにいるから安心して眠れる。

帰宅して夕飯の支度をしようとしたら礼央に座っているように言われた。
早速お義母さんに言われたことを実行しようとしているらしい。

「もう十分休んだから大丈夫だよ」

「いえ、だめです。座ってて下さい」

「でも先生も適度に動いたほうが良いって言ってたし」

「それは…じゃあ一緒にやりましょう」

そして結局2人でキッチンに立った。
礼央はお義母さんが言う通りあまり料理はできない。でも盛り付けたり洗い物などは積極的にやってくれる。
といっても俺も勉強とスポーツばかりやってきたから料理はあまり得意じゃなかった。結婚して家に居る時間が増えて色々やり始めた程度だ。

「いただきます」

しばらく黙々と食べていたら礼央が口を開いた。

「フクちゃんが産まれたら…実家にまた一緒に出向いてくれますか?」

「え?当たり前じゃない。フクちゃんと挨拶に行かないと」

「良かった。今日美耶さん泣いちゃったんで、もう行かないって言われるんじゃないかと思って…」

「そんな訳ないよ。ちょっとホルモンのせいなのか涙もろいだけだから気にしないで。というかあの失態はもう忘れてくれ」

「わかりました」

礼央はくすくす笑った。

「笑うなよ」

「いえ、すいません」

「まだ笑ってる…」

「はい」

俺もつられて吹き出した。
とにかく礼央の実家に無事挨拶ができて良かった。
あとは…俺の実家をどうするか、だな。
感想 49

あなたにおすすめの小説

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った

こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。最後におじいさまの番外編を追加しました。

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

ooo
BL
君に愛されたくて苦しかった。目が合うと、そっぽを向かれて辛かった。 結婚した2人がすれ違う話。