追放されたΩの公子は大公に娶られ溺愛される

grotta

文字の大きさ
59 / 59
番外編【マルセル視点】

【追加番外編】マルセルとオットーの結婚初夜

しおりを挟む
最近pixivで本作を公開するにあたり、全体を加筆修正しました。
もうお忘れと思いますがこの二人のお話しです↓
(1話完結でサクッと読めます)

・マルセル・アードラー(α)…デーア大公国宰相。ブルネットヘアの美形。仕事の鬼、性的に不能。

・オットー・リーゼンフェルト(α)…デーア大公の幼馴染。ブラウンヘアの屈強な伯爵。大金持ち。



――――――――――――


 オットー・リーゼンフェルト伯爵と結婚するにあたり、どちらの屋敷に住むか議論になった。爵位で言えば私――マルセル・アードラーの方が侯爵なので上だ。しかし、資産や屋敷の大きさはリーゼンフェルト家に敵わない。

「私としてはマルセル、あなたに嫁いでもらうというのは夢ではあります。しかし、婿入りを望まれるのでしたら喜んでそうしますよ」

 彼にそう言われて話し合った末、私の屋敷は叔父に管理してもらうことにし、私がリーゼンフェルト家の屋敷に移り住むことにした。結婚式は私が恥ずかしいと言って私達二人と、グスタフ殿下、それと叔父だけでひっそりと挙げさせてもらった。
 
 オットーは寝室をわざわざ改装させ、蒐集癖を発揮させて妙に凝った造りの大きなベッドを設置していた。

「あなたとこうして眠ることができるなんて夢のようです」
「いちいち大げさだな君は」
「何年越しで恋が成就したと思うんです? ですが、浮かれる男の姿は滑稽ですよね。すみません」

 彼がおしゃべりなのは今に始まったことではない。しかしはじめてベッドを共にするんだからもう少し黙ってほしいものだ。私は彼の腕を引き、二人でシーツの中に倒れ込んだ。

「このまま話をして夜を明かしたいのか? そういうことなら別に構わないが」

 私の言葉を聞いてオットーは目を見開いた。

「いいえ! 黙ります。ただ、緊張しているんです……あなたに触れることができて嬉しくて……」
「私だって同じだ。何せ、こういうことははじめてだから――」
「嬉しいです、優しくしますね」

――言われなくても君がいつだって優しいのはわかっている……。

「愛しています、マルセル」
「私もだ」

 唇が重なる。その温かさにうっとりしていたら、舌が口の中に潜り込んできた。さっきまで二人で飲んでいた葡萄酒の味がする。緊張を解そうとして、いつもそれほど飲まないのに私もたくさん飲んだ。触れ合う唇も、頬も、彼の手もどこもかしこも熱い――。
 彼は私の洋服を全て脱がせ、自分も裸になる。彼の唇が首へ、胸へ、腹へと滑り、私の下腹部まで到達した。私は酔いに任せて全て彼に委ねようと思っていた。しかしその部分に彼の唇が到達したときはやはり恐怖で震えた。
 萎えたままピクリとも反応しないそれを彼がどう思っているのか――。こんなに気持ちが昂ぶっているというのに……。オットーは眠ったまま動かないその部分を優しく口で包み込んだ。

「ぅ……ん」

 反応がないだけで、そこの感覚がないわけではなかった。はじめてされる行為に戸惑い、私は彼の頭に手を添えたまま目を瞑って耐えていた。

「どんな感じですか?」
「く、くすぐったい……変な感じがする」
「お嫌ですか?」
「……嫌ではない」

 少し思案した後、オットーが聞いてくる。

「後ろを試しても?」

 さすがの私も男同士でどうするかを知らないわけではなかった。知識だけはあるが、そんな場所を触ったことも触られたこともない。少し怖かったが、彼と一つになろうと思えばそれに耐えなければならない。

「かまわない、やってくれ」

 オットーは用意してあった潤滑剤を私の秘部に塗り込めた。私はアルファだから、オメガのように自然とそこが濡れることはない。それをわかっていて彼はゆっくりと少しずつそこをほぐしてくれた。
 私は彼と肌を合わせるだけで気分が高揚し幸せを感じていた。だから無理につながらなくても良いと思っていたが、彼はそうではないだろう。どんなに痛みを伴っても、彼の望みを叶えたい。そう思っていたのだが……。

「あっ……?」

 彼の指が私の中のある一点をかすめた時、思わず声が出た。

「痛かったですか?」
「いや、ちがっ……んっ」

――痛いんじゃない。これは……気持ちがいい……?
 オットーも私の反応の意味に気づいたようで、また同じ部分をぐっぐっと押してくる。その度に私の口から聞いたこともないような嬌声が上がった。
――なんだこれは……?

「マルセル。気持ち良いのですね」
「あっ、あっ……。オットーだめだ、それ以上……んんっ……」

 彼は調子に乗ってそこをグリグリと指で刺激する。私は彼にしがみついたまま、彼に与えられる快感に体を震わせていた。

「だめ、変になるからもう……やめてくれ――」
「素敵です。なんて美しいんだ。あなたのこんな姿を見られる日が来るなんて」

 彼に全て見られていると思うと羞恥で全身が火に包まれたように熱くなる。
――おしゃべりがすぎると何度言えば……。

「そろそろあなたの中に入ってもよろしいですか?」

 私は無言で頷いた。もう、口を開いたら自分が何を言ってしまうかわからなくて怖かった。オットーは私が頷くのを見て、自分の昂ぶった物を私の秘部に押し付けた。
――硬い……それになんて大きいんだ。
 自分のものが萎えたままなので、成人した男性のそれがどのように変化するのか私は知らなかった。自分に欲情してこうなっていると思うと背筋がぞくぞくする。そして一瞬体の力が抜けたのを見計らったように彼の陰茎が私の中に入ってきた。

「ぅっ……んう……」

 痛みもさることながら、愛するアルファのものを自分が受け止めたという誇らしさで胸がいっぱいになる。目の前がチカチカと明滅して前後不覚のまま、彼が私の体をゆっくりと揺さぶり始めた。無意識のうちにその動きに合わせて体を揺する。

「マルセル……」
「あっ……んっ……ああっ」
「愛しています。私の肉体も心も全てあなたに捧げます」

 オットーの汗の匂いに、その息づかいに私は追い立てられて自分の体がどうにかなってしまいそうな感じがした。

「ぁうっ……んんっ……!」

 ビクリと私の腰が跳ね、体内でオットーの物を締め付けた。

「マルセル、中が痙攣してる……達したのですね」
「え……?」

 後ろの刺激で性的な絶頂を味わったということらしい。私は初めての感覚にただ呆然としていた。

「感じてくれて嬉しいです。もう少し我慢していただけますか?」

 そう言ってオットーはまた動き始めた。果てたばかりで敏感になっている内部を擦られ、私はまた淫らな声を上げた。

◇◇◇


 力尽きて寝台に突っ伏した私のこめかみにオットーが優しく口づけた。

「とても素晴らしかったです――。ありがとうマルセル」

 私はなんと返したら良いかわからず黙っていた。ただ、彼の偽らざる愛情を全身で感じていた。

「あなたと、そしてエミールのことを一生大切にします」

 私は彼の方を見て答える。

「私も……君の愛に報いるよう努力するよ」

 するとそっと彼の唇が私の唇に重なった。
 



END


――――――――――――

最後までご覧いただきありがとうございました。

さて、今年もBL小説大賞が始まりました!
本作は昨年40位という結果で受賞はなりませんでしたが、今年も違うお話しで参戦しているのでよければ応援お願いします。
このお話しの20年後、クレムス王国のΩが主人公となる転生モノをエントリー中です。

『転生花嫁と雪豹α王の人質婚~北海道民の記憶持ちΩは寒さに強くてもふもふ好き~』
という、笑いあり切なさありのお話しとなっています。
(40代になったグスタフ、オットーそして成長したエミールが少しだけ出る予定)
ご興味を持って頂けたらぜひ覗いてみてください♡
しおりを挟む
感想 30

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(30件)

hiroe
2022.01.02 hiroe

本編も番外編も面白かったです。
オットーの器の大きさがすごく良かったです!!

2022.01.02 grotta

本編、番外編共に読んで頂きありがとうございます!
何気なく書いた脇役が予想以上に生き生きと動いてくれることがあります。オットーもプロットの時点より、実際書いてみたら案外面白い人物になったなと感じていたのでそのように言って頂けてとても嬉しいです!

解除
すず
2021.12.05 すず

番外編完結お疲れ様です!おもしろかったです!
宰相殿、そんな過去があったんですねぇ……すれ違いや上手くいかないモヤモヤを抱える主人公大好きなので、すごく好みでした(/// ^///)
結ばれた今イチャイチャしたらどうなるんだろう…と少し気になりましたが、心が結ばれたのならそれでよき…( ˇωˇ )

2021.12.05 grotta

ありがとうございます。
私もこういう面倒くさい子好きなので、好みと言って頂けて嬉しいです(*´∀`)♪

いちゃいちゃ書けてないですよね!
当初はR18シーンまで入れようと思ってたんですが、そこまで辿り着けずキス止まりになっちゃいました_(:3 」∠)_
エミール視点の後、オットー視点でただいちゃいちゃしてる話書くかもしれません…(*´∇`*)

解除
あか
2021.12.04 あか

番外編完結おめでとうございます!
本編も勿論素敵ですが、α同士のカップルがどうすれ違いを乗り越えて行くのか続きをドキドキしながらお待ちしてました。
書いてくださってありがとうございました!エミール視点も楽しみです。

2021.12.04 grotta

ありがとうございます!
ドキドキしながら読んで頂けたということで書き手としては嬉しい限りです!
エミール視点、子どもが主人公のお話しは初挑戦なので頑張ってみようと思います(๑˃̵ᴗ˂̵)

解除

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる

尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる 🌟2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟 ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。 ――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。 お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。 目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。 ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。 執着攻め×不憫受け 美形公爵×病弱王子 不憫展開からの溺愛ハピエン物語。 ◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。 四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。 なお、※表示のある回はR18描写を含みます。 🌟第10回BL小説大賞にて奨励賞を頂戴しました。応援ありがとうございました。 🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

冷酷なアルファ(氷の将軍)に嫁いだオメガ、実はめちゃくちゃ愛されていた。

水凪しおん
BL
これは、愛を知らなかった二人が、本当の愛を見つけるまでの物語。 国のための「生贄」として、敵国の将軍に嫁いだオメガの王子、ユアン。 彼を待っていたのは、「氷の将軍」と恐れられるアルファ、クロヴィスとの心ない日々だった。 世継ぎを産むための「道具」として扱われ、絶望に暮れるユアン。 しかし、冷たい仮面の下に隠された、不器用な優しさと孤独な瞳。 孤独な夜にかけられた一枚の外套が、凍てついた心を少しずつ溶かし始める。 これは、政略結婚という偽りから始まった、運命の恋。 帝国に渦巻く陰謀に立ち向かう中で、二人は互いを守り、支え合う「共犯者」となる。 偽りの夫婦が、唯一無二の「番」になるまでの軌跡を、どうぞ見届けてください。

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした

水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。 強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。 「お前は、俺だけのものだ」 これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。