転生したらオメガだったんだけど!?

灰路 ゆうひ

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一人になりたい俺と、ドーベルマンの子犬くん

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 雅孝の恐ろしいこちょこちょ尋問タイムの後。
 ここ一か月、俺が変な夢の影響でちょっとぎこちない態度になっちゃってたんだけどさ。俺と雅孝は話し合って、今後は無理なく、イヤじゃない範囲でなかよしの触れ合いをしていこうねって事になった。
 いや、俺は、ちょっとの間、なかよしの触れ合いはお休みにしようかって提案したんだけど、雅孝に笑顔で却下された。ニコニコしてるけど、一ミリも譲らない構えだった。

「なんでかわからないけど、急にぐわっと来て、濃密ななかよしの触れ合いを求められると、ゾクゾクってしちゃうんだよな。嫌なゾクゾクじゃないと思うんだけど」

 って、(自分がオメガだってことは伏せて)正直に言うと。何故か雅孝は嬉しそうにニコニコして、

「…それって、僕のことをちょっと意識してくれるようになったって事かな?…ふふふっ!いい傾向!うん、エッチな夢もいいもんだね。グッジョブだよ」
「ふあっ…!エッチな夢のことは、どうかどうか他のみんなにはご内密に…!」

 親友と、夫婦?みたいなシュチュエーションでお口のチュウをする夢を見ちゃうだなんて、変態さんだと思われちゃいますので!
 …父ちゃん、母ちゃんは泣くんじゃないだろうか。姉ちゃんは大笑いして弄ってきそうだし、ピュアな屈強さんたちは筋肉をふるわせて悲しむだろう。ちくわぶは…何のことかわからずにボールを咥えて、「そんなことより、遊ぼうぜ~っ!」って、つよめに突撃してきそう。
 マメシバ隊のみんなは、刺激が強すぎて目を回して倒れちゃうんじゃないだろうか。…プルプルプル!そんな恐ろしい事、知られちゃったら大変だ!

「あははっ…!もちろんだよ。二人だけの秘密ね」

 よくわからないけど、雅孝はとってもゴキゲンな笑顔で、すべてを許してくれたみたいだ。菩薩かな?
 …『意識』っていうのが、ちょっと俺にはよくわからなかったんだけど。いや、言葉の意味はわかるよ。わかるけど…どういうニュアンス?…まあ、いっか。こいつってば、音楽家さんの卵だからなのか、感受性が強いのよね。こういうよくわからないこと言うのは、いつものやつ、いつものやつ。

 そんなこんなで、仲直り?した俺たちは、ちょっとした変化にとまどいつつも、平和に楽しく小学生ライフを過ごしていった。
 そんな中で、俺は改めて、「ああ、やっぱり俺って、転生したんだなあ」って実感していた。
二回目ともなると、やっぱりどうしても、前世との違いを感じるんだよね。どうやらここは、やっぱり前世の世界とは違うらしい。オメガやアルファ、ベータという第二の性別がある、似てるけどまったく違う世界に、前世の記憶を持ったまま生まれなおしたんだなって。
 自分の体について、将来的にはいろいろ不安もとまどいもあるんだけどね。
 でもまあ、転生したとはいえ、前世同様、かわいいお嫁さんをもらって、あたたかい家庭を作るのを目標に、二回目の人生も頑張ろうってふんわり考えてたんだ。

 …そう、能天気に構えていたのが悪かったのかな。
 あいかわらず俺も雅孝も攫われそうになったり、知らない人にしつこく話しかけられたりして、何度か屈強さんたちのお世話になった。
 クラスの女の子たちには嫌われ続けていたし、関係改善に向けて、俺からもいろいろアクションを起こしてるんだけど、残念ながら今のところ、効果なし。
 俺の悪いうわさが校内に流れたり、俺の学校に置いていた持ち物がなくなったり、ぐちゃぐちゃに壊されて捨てられていたりと、ちょっと落ち込むような事件も頻繁にあったんだけどさ。どうやら、確実に状況は前世より悪化している。
 人間って強い生き物だなって思うけど、人の悪意ってやっぱり怖いよね。幼稚舎のころ、雅孝に向けられる人間の悪意にはじめてふれて、雅孝を背中にかばいつつも、正直恐ろしくてたまらなかった。
 …ちょっとお兄さんになったからって、それに慣れることはできなかった。
 俺が嫌がらせを受けるたびに、近くにいるマメシバ隊のみんなはすごく悲しそうな顔をして、事前に阻止できなかったことを泣いて謝るし、マメシバ隊のみんなだけじゃなくて、雅孝や屈強さんたちや…すっかりなかよしになったすみれくんもますます過保護になって、一人になる時間が減った。

 でも、俺だって、悲しい事があると、たまには一人になりたいっていうか。そういう気分になる事はあるんだよね。
 わかってる。俺が一人になると、危険なんだって。余計に狙われたりして、守ってくれようとしてるみんなに迷惑かけちゃうんだってこと。
 …頭ではわかってるんだけど、ね。

 それは、ある日の図工の時間に描いた、一枚の絵がきっかけだった。
大好きなマメシバ隊のみんなとすみれくん、雅孝の笑顔を描きたくて、ある日のランチ中の楽しい光景を絵に描いたんだ。タイトルは、『大好きな友達』
 心をこめて描いたこの作品は、先生や周りのみんなの評判も凄くよくて、自分でもよく描けたなって思う出来だったんだ。
 マメシバ隊のみんなもすみれくんも、ほっぺをバラ色にして喜んでいたし、雅孝は「額に入れて家宝にしたい」って顔中にちゅっちゅして、やめて~って言ってもなかなかやめてくれなかった。
 こどもの絵画コンクールで最優秀賞を取ったらしくて、立派な賞状をもらって、僕も大好きなみんなの笑顔が、偉い人たちにいいねって褒めて貰えたみたいな気がして嬉しかったんだけど。
 
 コンクールから返却されて、しばらく教室に飾られていたそれが…ずたずたに切られた状態で発見される事件があったんだ。

 僕ももちろんショックだったんだけど、周りの衝撃はものすごいものだった。
「はじめてお友達に、自分の絵を描いてもらったの…っ」って嬉しそうに言っていたすみれくんは、半狂乱になって、泣きすぎて過呼吸になって倒れてしまったし。
 マメシバ隊は僕を気遣いつつ、ほっぺをぐしょぐしょにしながら絵の破片を拾って片付けるのを手伝ってくれた。
 雅孝と理事長先生と担任の先生は、穏やかな笑顔に般若のような怒りを滲ませて、

「安心して。絶対に犯人は見つけて、生まれて来たことを後悔させてやるからね」

 と、優しく慰められたんだけど…。あれ、俺より激おこじゃない…?
 後日、顔色の悪い両親を伴った数人の女子生徒たちが、泣きすぎてまともに話せないような状態で土下座して謝りに来てくれたんだけど。とにかくその様子が尋常じゃなかった。申し訳なくて謝りに来たっていうより、すごく恐ろしい何かに怯えて、けじめを取らされに来たっていうか。
 …俺は、雰囲気にちょっと引きつつ、謝罪を受け入れることにしたのだった。
「もういいだろっ!帰れ帰れ!」って、父ちゃんと屈強さんにすぐ追い出されて、ちくわぶは吠える吠える。母ちゃんと姉ちゃんは塩まで撒いてたけど。
 翌朝、学校に登校したら…昨日謝りに来ていたクラスの数人の女の子たちの席が空白で。私物もすべて撤去されていた。

「…以上の生徒は、急遽、ご家庭の都合で転校することになりました」

 って全体朝礼で言われて、はじめて異様なほど急に転校して行っちゃったんだってことがわかった。
 …穏便にすめばいいなあって思ったから、謝罪を受け入れたんだけどな~…。

 まあ、そんな事件があって、俺も疲れちゃったわけ。
 あれだけ周りに迷惑かけちゃったら、ちょっと…まだ悲しい顔をしてるみんなのフォローもつらくなってきて、一瞬だけでいいから、一人になりたいなって思って。
 俺は、とうとうある日のお昼休みに、いろいろ頭をひねって、あの手この手で友達のみんなを撒きに撒いた。
 雅孝はもちろん、すみれくんもマメシバ隊のみんなも、それぞれスポーツや頭脳プレイなどの得意分野をもつ優秀な子たちだ。まともに勝負したって、俺なんて叶うわけがない。
だから、いたずらっこ時代の知識と経験を総動員して、トラップやズル満載で逃げ切った。

 …ひさしぶりの一人っきり。普段ならまず来ることのない、ひとけのない校舎裏の花壇。
 開放感と、達成感。…それと、同時に感じる寂しさと罪悪感。
 あんなに一人になりたいと願ったのに。実際に一人になってみたら、思いがけず苦い気分を味わうことになった。
 とぼとぼと色鮮やかな花壇の花に目を癒されながら歩いて…俺は、そこで、彼と出会った。

 小学生らしからぬ、キレたナイフのように鋭すぎる三白眼と、ひょろっと背の高い浅黒く焼けた褐色の肌。ちょっと気崩した制服。
 まるでドーベルマンの子犬のような、一見怖そうな彼が…ニコニコ幸せそうに、可愛いクマさんの編みぐるみを編んでいるところに…出くわしてしまった。

「ふえっ…?」
「あ゛ァ!?」

◇◇◇

 マメシバ隊「しーっ、みんな、静かに、静かに…」「みっちゃんに気付かれちゃ、ダメ、です」
 すみれ「っていうかさ。みっちゃん、足おっそ。あれで逃げてるつもりなの?」
 雅孝「ふふっ…。そこがみつきの可愛いところだよね」

 マメシバ隊&すみれ「「「確かに。」」」
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