テスト

こあめ(小雨、小飴)

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1日目

1限目、現代文

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 チャイムが鳴り一斉にテスト用紙が広がる音が響き渡り、すぐに静寂が訪れる。聞こえるのはペンの音と紙のこすれる音、そしてテキストのページが捲れる音。 1限目の現代文はテスト範囲が2か月前に公開され、授業でこれでもかというほど対策授業をしてもらった。今更、何を迷うこともない。が、ふと手がとまる。ちょうど全員が同じタイミングで進んでいたためか、ほぼ一斉にペンの音がとまる。周りから聞こえなくなって不安になり止めたやつもいるかもしれないが、本当に一斉にとまったのだ。

 それは大問の2『次のテキストのページを読み、問題を解け。なおこの問題は対策範囲外である』
と、書かれていた。先生の言葉を思い出す。
『いいか、お前たち。”俺は”対策範囲内で出すからな』
 そういわれた、つまり先生はこの問題を作っていない。おそらくはもう一人の国語教師、このクラスでは古典を担当している先生による作問だろう。理解した生徒から順番にまちまちとペンを走らせ始める。成績上位の生徒はすでに幾度かのテストにより古典教師の出題傾向を把握していたため難を逃れる。中堅成績の生徒郡は、古典教師の作問であることを察するが、攻めあぐねているように見えた。そして最後はクラス下位、過去に赤点やそのギリギリにいるいわばがけっぷちの生徒。テスト対策授業も寝ていたりおしゃべりをしていた彼彼女らは、この出題にほぼついていけずペンがとまっている。思考さえも止まっているのではないだろうか。時間だけが過ぎていき徐々に焦りの表情がうかがえる。中にはあらぬページを開いて半ば逃避している生徒も見受けれた。

「そこまで!」
 監督教師の声と時を同じくして終了を告げるチャイムが鳴る。各々満足した表情の生徒もいれば1限目から絶望している生徒もいる。 休憩時間に次の教科を早々見返す生徒と、廊下に出て世間話をする生徒でその差は生まれる。
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