テスト

こあめ(小雨、小飴)

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1日目

2限目、数学

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「それでは、はじめ!」
 その声と同時に裏返された問題用紙を翻す。ガサガサと音がして教室内を反響し、約一時間ぶりの静寂が教室に訪れた。続いて聞こえてきたのは電卓の音、今回のテストは電卓、定規とコンパス、分度器の使用を許可されており、持ってきた生徒はそれを利用して問題を解いていく。もちろんそんな話は寝ていて聞いておらずに、仕方なくハンドフリーで書く生徒もいるが…
 大問は全部で9つあり、8と9は製図、作図問題になっている。人によっては大量得点の問題であり、人によっては捨て問である。関数の問題は、電卓の性能によって難易度が代わるだろう。数学の教師からは、
『関数電卓は持ってこないように、また途中式のない奴は不可にするから』
 と、明言されていた。しかし上位勢の数人は関数計算のできる電卓をもってきていた。監督教師は学年の違う先生が来て基本読書などをしているため、電卓のことなど気にも留めていないだろう。もっとも、そういう先生に限って、なぜかカンニングの見極めが上手い。
「あ、お前、それ携帯だろ!」
 電卓を忘れた生徒が携帯で計算してるのがばれ、別室へ移動させられる。上位関数電卓勢はこれ幸いと関数の計算をさっさと済ませ、答えを書いた後に、途中式を書き込む。答えさえわかれば後は公式に数字を入れるだけだからこんな簡単なことはない。中堅あたり、いつも平均点の上下すぐくらいにいる生徒は製図など面倒なものを片付けて関数に挑む。彼らの中にも関数計算のできる性能の電卓もちはいるものの、途中式がわからないため、公式から手書きで計算をする。

「よし、そこまで! ペンを置いて机に伏せろ」
 チャイムが鳴ってから監督教師がテスト用紙を回収する。1限の教師は列ごとに後ろから回収を生徒にさせたが、この教師は自分が出席番号の若い側から回収をしていった。次の教科は比較的誰もが点数を取りやすいため、1限目と2限目の間よりも、教室の外にいる生徒は増えていた。
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