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本編
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朝の作業を終えて空を見上げると、今にも振り出しそうな曇天が広がっています。
「しゅ~」
「おはよう、ラウラ」
雨が降りそうなのを感じているのでしょうか。いそいそと家の中へ入っていきます。
「踏まれないように気を付けてね」
「しゅ~」
作業部屋の方へ行くラウラを見送り、朝ご飯の準備を始めます。
「きゅ~」
「シエロ、おはよう。もう少し待ってね」
シエロの頭を撫でて、アクアにもお礼を言ってから朝食の準備を続けます。
そういえば、シエロが少し大きくなっているようです。早いうちに牧場に池を作る必要性がありそうです。
「おはようござ……」
もうじき準備が終わるという所で、マコちゃんとノノさんが起きてきました。
「おはようございます。どうしました?」
途中で声が聞こえなくなったので様子を窺うと、二人共シエロの方を見て唖然としていました。
「えっと、シエロちゃん……だよね」
「他の子なんていませんよ」
「大きくなったね」
マコちゃんがシエロの頭を撫でると、嬉しそうにしています。
「ミッケさんとルルを起こしてきてもらってもいい?」
「は~い」
二人が部屋を出ていくのを機に作業に戻ってパン生地を石窯に入れていると、玄関をノックする音が聞こえてきたのでそちらに向かいます。
「おはよう」
「おはようございます、イアンさん」
「今日の分だよ」
「ありがとうございます。あと、牧場に池を作ろうと思いっています」
「それは、あの子の為?」
「はい。大きくなったので」
「分かった」
トトを見に行くイアンさんを見送り、夜番と交代を終えたディンさんがいたので軽くお辞儀します。
中に戻るとマコちゃんとノノさんに引っ張られながら、ミッケさんとルルが大きな欠伸をしながらやってきました。
「おはよう、二人共。顔洗ってきてください」
「ふぁ~い」
準備が終わって二人が戻ってきたところで朝ご飯。後片付けをしながら、仕事に向かう四人を見送ります。
一通りの作業を終えると、ルーナさんを待ってからシエロと一緒に牧場へ向かいます。
体を膨らませて座り込んでいるココットの間を縫って牧場の北側の外に移動します。
「桜華さん、どこへ行くのですか」
「目印があるあたりです」
ルーナさんの質問に答えながら柵から離れる事十数分。拡張工事を行うための目印として、等間隔で杭が刺さっています。
「では、精霊の皆さん。お願いします」
目印に沿う形で幅と深さともに十メートルで掘ってもらい、湧水で満たしてもらいます。
「フェエエエ!」
このままだと溢れてしまうので、池から溢れる水は家の傍までひいて小さな池を作ると、そこから地下にある川へ流してもらいます。池と池の間は川という形になるので、途中途中で土を盛り上げて暗渠にしておくことで通り道を確保します。
「シエロ、この池がシエロの家だからね」
「きゅ~」
アクアにお願いして池の方へ移動してもらいます。最初は戸惑っていたようですが、アクアが泳ぎ(?)始めるとその後を追うように泳ぎ始めます。
「気持ち良さそうですね。これで安心です」
「……そうですね」
ディンさんが胃のあたりを抑えながらどこか遠くを見つめ、ルーナさんが泣きそうな顔をしています。
「お姉ちゃん。この川は?」
マコちゃんがココットを抱きかかえつつ毛繕いしながらやってきました。抱えられているココットが気持ち良さそうにしているので頭を撫でます。
「シエロとアクアの道です。あっちに大きな池を、家の近くに小さな池を作りました。イアンさんに伝えておいてください」
「うん」
「それじゃあ、シエロとアクア。広場に行くけど、どうする?」
少し離れたところにいた二人に声をかけると、まずアクアが浮かび上がってからシエロがその中へ飛び込みます。
「フェエエエ!」
「な!」
「わぁ……!」
池から上がったアクアの大きさが、少し前と比べて二倍に膨れ上がっているのを見たルーナさんとディンさんが何時もの反応をしてくれました。マコちゃんは感動しているようですね。
マコちゃんと別れて、広場へ移動します。日が昇ってから少し過ぎた頃合いなので、広場にいるのは元気な子供達とお年寄りの方々。ほんの少し離れたところにゴーレムと大工の若い男性が待機していました。
「おはようございます」
「おはようございます」
「この丸太が要に使うやつですか?」
丁度足元に丸太があったので聞いてみると、どうせだからと広場の建物側に屋根を作ろうということになったそうで、今日は柱を建てるだけの予定だそうです。
「では、始めます」
丸太の中程に魔法陣を貼り付けていくと、ゴーレムが丸太を立てて拳で打ち込み固定します。
最初の丸太は腰位までの高さに揃えられ、二本目はそれに継ぎ足す形で建てられて屋根に届くぐらいになります。
後は後日になるというので、柵の現場へ向かうゴーレムを見送ります。
帰る前に広場を歩いていると、食堂の前でピエナさんが机と椅子を並べていました。
「ピエナさん、おはようございます」
「あ、おはようございます」
「これはどうしたのですか」
「これはですね、店外席です!」
この間やったのが結構人気だったために、四席設けることにしたそうです。時間はあるので、作業を手伝うことに。
鼻歌を奏でながら細めの柱を拳で打ち込み、長さを調整するために手刀で切り落とし、杭や釘は指で押し込むピエナさん。私も身体強化を行いながら同じ作業を行っていますが、中々難しいです。
「ピエナさん、手慣れていますね。断面が綺麗です」
「ありがとう。お母さんに花嫁修業だからって教えてもらったの」
「じゃあ、いつでもお嫁に行けますね」
「はい!」
はにかむように笑うピエナさん。後は相手を探すだけのようです。
「フェエエエ!」
「花嫁修業に素手での木材加工なんてありませんよ!」
ルーナさんの叫びが聞こえてくると同時に、ディンさんの全力の突っ込みが聞こえてきました。
「でも、手先が器用な奥さんって素敵ですよね?」
私は現実だと普通です。木材加工なんて鳥の巣箱が限界です。
「まあ、そこは否定しませんけど……って、せめて道具を使ってください!」
「そうしたいところですが、道具が頼りないので仕方ありません」
突然会話に加わったエレノアさんの声に、ディンさんが固まり、ルーナさんが尻尾を膨らませたまま硬直しました。
「エレノアさん、どうされたのですか?」
「店外席の様子を見に来ました。良い感じですね」
エレノアさんがうっとりとしていますが、ディンさんが私の横に移動してきて直立姿勢になりました。顔色が悪く視線で助けを求めてきます。
「後は、布を張って終了かな。桜華さん、そっちお願いします」
「はい。あ、ディンさんもお願いします」
私とピエナさん、必死な様子のディンさんで布を引っ張って四隅を紐で括って固定します。シエロも手伝ってくれたお陰で、綺麗に布を張り終えることができました。
エレノアさんが隅々まで確認をして満足そうにうなずきます。
「しゅ~」
「おはよう、ラウラ」
雨が降りそうなのを感じているのでしょうか。いそいそと家の中へ入っていきます。
「踏まれないように気を付けてね」
「しゅ~」
作業部屋の方へ行くラウラを見送り、朝ご飯の準備を始めます。
「きゅ~」
「シエロ、おはよう。もう少し待ってね」
シエロの頭を撫でて、アクアにもお礼を言ってから朝食の準備を続けます。
そういえば、シエロが少し大きくなっているようです。早いうちに牧場に池を作る必要性がありそうです。
「おはようござ……」
もうじき準備が終わるという所で、マコちゃんとノノさんが起きてきました。
「おはようございます。どうしました?」
途中で声が聞こえなくなったので様子を窺うと、二人共シエロの方を見て唖然としていました。
「えっと、シエロちゃん……だよね」
「他の子なんていませんよ」
「大きくなったね」
マコちゃんがシエロの頭を撫でると、嬉しそうにしています。
「ミッケさんとルルを起こしてきてもらってもいい?」
「は~い」
二人が部屋を出ていくのを機に作業に戻ってパン生地を石窯に入れていると、玄関をノックする音が聞こえてきたのでそちらに向かいます。
「おはよう」
「おはようございます、イアンさん」
「今日の分だよ」
「ありがとうございます。あと、牧場に池を作ろうと思いっています」
「それは、あの子の為?」
「はい。大きくなったので」
「分かった」
トトを見に行くイアンさんを見送り、夜番と交代を終えたディンさんがいたので軽くお辞儀します。
中に戻るとマコちゃんとノノさんに引っ張られながら、ミッケさんとルルが大きな欠伸をしながらやってきました。
「おはよう、二人共。顔洗ってきてください」
「ふぁ~い」
準備が終わって二人が戻ってきたところで朝ご飯。後片付けをしながら、仕事に向かう四人を見送ります。
一通りの作業を終えると、ルーナさんを待ってからシエロと一緒に牧場へ向かいます。
体を膨らませて座り込んでいるココットの間を縫って牧場の北側の外に移動します。
「桜華さん、どこへ行くのですか」
「目印があるあたりです」
ルーナさんの質問に答えながら柵から離れる事十数分。拡張工事を行うための目印として、等間隔で杭が刺さっています。
「では、精霊の皆さん。お願いします」
目印に沿う形で幅と深さともに十メートルで掘ってもらい、湧水で満たしてもらいます。
「フェエエエ!」
このままだと溢れてしまうので、池から溢れる水は家の傍までひいて小さな池を作ると、そこから地下にある川へ流してもらいます。池と池の間は川という形になるので、途中途中で土を盛り上げて暗渠にしておくことで通り道を確保します。
「シエロ、この池がシエロの家だからね」
「きゅ~」
アクアにお願いして池の方へ移動してもらいます。最初は戸惑っていたようですが、アクアが泳ぎ(?)始めるとその後を追うように泳ぎ始めます。
「気持ち良さそうですね。これで安心です」
「……そうですね」
ディンさんが胃のあたりを抑えながらどこか遠くを見つめ、ルーナさんが泣きそうな顔をしています。
「お姉ちゃん。この川は?」
マコちゃんがココットを抱きかかえつつ毛繕いしながらやってきました。抱えられているココットが気持ち良さそうにしているので頭を撫でます。
「シエロとアクアの道です。あっちに大きな池を、家の近くに小さな池を作りました。イアンさんに伝えておいてください」
「うん」
「それじゃあ、シエロとアクア。広場に行くけど、どうする?」
少し離れたところにいた二人に声をかけると、まずアクアが浮かび上がってからシエロがその中へ飛び込みます。
「フェエエエ!」
「な!」
「わぁ……!」
池から上がったアクアの大きさが、少し前と比べて二倍に膨れ上がっているのを見たルーナさんとディンさんが何時もの反応をしてくれました。マコちゃんは感動しているようですね。
マコちゃんと別れて、広場へ移動します。日が昇ってから少し過ぎた頃合いなので、広場にいるのは元気な子供達とお年寄りの方々。ほんの少し離れたところにゴーレムと大工の若い男性が待機していました。
「おはようございます」
「おはようございます」
「この丸太が要に使うやつですか?」
丁度足元に丸太があったので聞いてみると、どうせだからと広場の建物側に屋根を作ろうということになったそうで、今日は柱を建てるだけの予定だそうです。
「では、始めます」
丸太の中程に魔法陣を貼り付けていくと、ゴーレムが丸太を立てて拳で打ち込み固定します。
最初の丸太は腰位までの高さに揃えられ、二本目はそれに継ぎ足す形で建てられて屋根に届くぐらいになります。
後は後日になるというので、柵の現場へ向かうゴーレムを見送ります。
帰る前に広場を歩いていると、食堂の前でピエナさんが机と椅子を並べていました。
「ピエナさん、おはようございます」
「あ、おはようございます」
「これはどうしたのですか」
「これはですね、店外席です!」
この間やったのが結構人気だったために、四席設けることにしたそうです。時間はあるので、作業を手伝うことに。
鼻歌を奏でながら細めの柱を拳で打ち込み、長さを調整するために手刀で切り落とし、杭や釘は指で押し込むピエナさん。私も身体強化を行いながら同じ作業を行っていますが、中々難しいです。
「ピエナさん、手慣れていますね。断面が綺麗です」
「ありがとう。お母さんに花嫁修業だからって教えてもらったの」
「じゃあ、いつでもお嫁に行けますね」
「はい!」
はにかむように笑うピエナさん。後は相手を探すだけのようです。
「フェエエエ!」
「花嫁修業に素手での木材加工なんてありませんよ!」
ルーナさんの叫びが聞こえてくると同時に、ディンさんの全力の突っ込みが聞こえてきました。
「でも、手先が器用な奥さんって素敵ですよね?」
私は現実だと普通です。木材加工なんて鳥の巣箱が限界です。
「まあ、そこは否定しませんけど……って、せめて道具を使ってください!」
「そうしたいところですが、道具が頼りないので仕方ありません」
突然会話に加わったエレノアさんの声に、ディンさんが固まり、ルーナさんが尻尾を膨らませたまま硬直しました。
「エレノアさん、どうされたのですか?」
「店外席の様子を見に来ました。良い感じですね」
エレノアさんがうっとりとしていますが、ディンさんが私の横に移動してきて直立姿勢になりました。顔色が悪く視線で助けを求めてきます。
「後は、布を張って終了かな。桜華さん、そっちお願いします」
「はい。あ、ディンさんもお願いします」
私とピエナさん、必死な様子のディンさんで布を引っ張って四隅を紐で括って固定します。シエロも手伝ってくれたお陰で、綺麗に布を張り終えることができました。
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