New Page on-line

腹減り雀

文字の大きさ
51 / 61
本編

49

しおりを挟む
 朝の作業を終えて空を見上げると、今にも振り出しそうな曇天が広がっています。

「しゅ~」
「おはよう、ラウラ」

 雨が降りそうなのを感じているのでしょうか。いそいそと家の中へ入っていきます。

「踏まれないように気を付けてね」
「しゅ~」

 作業部屋の方へ行くラウラを見送り、朝ご飯の準備を始めます。

「きゅ~」
「シエロ、おはよう。もう少し待ってね」

 シエロの頭を撫でて、アクアにもお礼を言ってから朝食の準備を続けます。
 そういえば、シエロが少し大きくなっているようです。早いうちに牧場に池を作る必要性がありそうです。

「おはようござ……」

 もうじき準備が終わるという所で、マコちゃんとノノさんが起きてきました。

「おはようございます。どうしました?」

 途中で声が聞こえなくなったので様子を窺うと、二人共シエロの方を見て唖然としていました。

「えっと、シエロちゃん……だよね」
「他の子なんていませんよ」
「大きくなったね」

 マコちゃんがシエロの頭を撫でると、嬉しそうにしています。

「ミッケさんとルルを起こしてきてもらってもいい?」
「は~い」

 二人が部屋を出ていくのを機に作業に戻ってパン生地を石窯に入れていると、玄関をノックする音が聞こえてきたのでそちらに向かいます。

「おはよう」
「おはようございます、イアンさん」
「今日の分だよ」
「ありがとうございます。あと、牧場に池を作ろうと思いっています」
「それは、あの子の為?」
「はい。大きくなったので」
「分かった」

 トトを見に行くイアンさんを見送り、夜番と交代を終えたディンさんがいたので軽くお辞儀します。
 中に戻るとマコちゃんとノノさんに引っ張られながら、ミッケさんとルルが大きな欠伸をしながらやってきました。

「おはよう、二人共。顔洗ってきてください」
「ふぁ~い」

 準備が終わって二人が戻ってきたところで朝ご飯。後片付けをしながら、仕事に向かう四人を見送ります。
 一通りの作業を終えると、ルーナさんを待ってからシエロと一緒に牧場へ向かいます。
 体を膨らませて座り込んでいるココットの間を縫って牧場の北側の外に移動します。

「桜華さん、どこへ行くのですか」
「目印があるあたりです」

 ルーナさんの質問に答えながら柵から離れる事十数分。拡張工事を行うための目印として、等間隔で杭が刺さっています。

「では、精霊の皆さん。お願いします」

 目印に沿う形で幅と深さともに十メートルで掘ってもらい、湧水で満たしてもらいます。

「フェエエエ!」

 このままだと溢れてしまうので、池から溢れる水は家の傍までひいて小さな池を作ると、そこから地下にある川へ流してもらいます。池と池の間は川という形になるので、途中途中で土を盛り上げて暗渠にしておくことで通り道を確保します。

「シエロ、この池がシエロの家だからね」
「きゅ~」

 アクアにお願いして池の方へ移動してもらいます。最初は戸惑っていたようですが、アクアが泳ぎ(?)始めるとその後を追うように泳ぎ始めます。

「気持ち良さそうですね。これで安心です」
「……そうですね」

 ディンさんが胃のあたりを抑えながらどこか遠くを見つめ、ルーナさんが泣きそうな顔をしています。

「お姉ちゃん。この川は?」

 マコちゃんがココットを抱きかかえつつ毛繕いしながらやってきました。抱えられているココットが気持ち良さそうにしているので頭を撫でます。

「シエロとアクアの道です。あっちに大きな池を、家の近くに小さな池を作りました。イアンさんに伝えておいてください」
「うん」
「それじゃあ、シエロとアクア。広場に行くけど、どうする?」

 少し離れたところにいた二人に声をかけると、まずアクアが浮かび上がってからシエロがその中へ飛び込みます。

「フェエエエ!」
「な!」
「わぁ……!」

 池から上がったアクアの大きさが、少し前と比べて二倍に膨れ上がっているのを見たルーナさんとディンさんが何時もの反応をしてくれました。マコちゃんは感動しているようですね。

 マコちゃんと別れて、広場へ移動します。日が昇ってから少し過ぎた頃合いなので、広場にいるのは元気な子供達とお年寄りの方々。ほんの少し離れたところにゴーレムと大工の若い男性が待機していました。

「おはようございます」
「おはようございます」
「この丸太が要に使うやつですか?」

 丁度足元に丸太があったので聞いてみると、どうせだからと広場の建物側に屋根を作ろうということになったそうで、今日は柱を建てるだけの予定だそうです。

「では、始めます」

 丸太の中程に魔法陣を貼り付けていくと、ゴーレムが丸太を立てて拳で打ち込み固定します。
 最初の丸太は腰位までの高さに揃えられ、二本目はそれに継ぎ足す形で建てられて屋根に届くぐらいになります。

 後は後日になるというので、柵の現場へ向かうゴーレムを見送ります。
 帰る前に広場を歩いていると、食堂の前でピエナさんが机と椅子を並べていました。

「ピエナさん、おはようございます」
「あ、おはようございます」
「これはどうしたのですか」
「これはですね、店外席です!」

 この間やったのが結構人気だったために、四席設けることにしたそうです。時間はあるので、作業を手伝うことに。

 鼻歌を奏でながら細めの柱を拳で打ち込み、長さを調整するために手刀で切り落とし、杭や釘は指で押し込むピエナさん。私も身体強化を行いながら同じ作業を行っていますが、中々難しいです。

「ピエナさん、手慣れていますね。断面が綺麗です」
「ありがとう。お母さんに花嫁修業だからって教えてもらったの」
「じゃあ、いつでもお嫁に行けますね」
「はい!」

 はにかむように笑うピエナさん。後は相手を探すだけのようです。

「フェエエエ!」
「花嫁修業に素手での木材加工なんてありませんよ!」

 ルーナさんの叫びが聞こえてくると同時に、ディンさんの全力の突っ込みが聞こえてきました。

「でも、手先が器用な奥さんって素敵ですよね?」

 私は現実だと普通です。木材加工なんて鳥の巣箱が限界です。

「まあ、そこは否定しませんけど……って、せめて道具を使ってください!」
「そうしたいところですが、道具が頼りないので仕方ありません」

 突然会話に加わったエレノアさんの声に、ディンさんが固まり、ルーナさんが尻尾を膨らませたまま硬直しました。

「エレノアさん、どうされたのですか?」
「店外席の様子を見に来ました。良い感じですね」

 エレノアさんがうっとりとしていますが、ディンさんが私の横に移動してきて直立姿勢になりました。顔色が悪く視線で助けを求めてきます。

「後は、布を張って終了かな。桜華さん、そっちお願いします」
「はい。あ、ディンさんもお願いします」

 私とピエナさん、必死な様子のディンさんで布を引っ張って四隅を紐で括って固定します。シエロも手伝ってくれたお陰で、綺麗に布を張り終えることができました。

 エレノアさんが隅々まで確認をして満足そうにうなずきます。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

処理中です...