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腹減り雀

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本編

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 蜘蛛と交渉しながら、合計で二回の物々交換を行いました。
 バッグの中を確認してみると、まだ入りそうな感じがします。ですが、これ以上欲張ってもしょうがないのでそろそろ帰りましょう。

「蜘蛛さん、ありがとうございました」
「しゃ~」

 お互いに手を振り合って別れの挨拶を交わしていると、ディンさんから懐から通り出した手巾を渡されました。

「もし良かったらですが、狩猟者の皆さんにも分かりやすいよう目印に」

 手巾を受け取ると、蜘蛛さんに確認して足に括り付けます。再度挨拶を交わして散策を再開します。

 木に巻き付いている蔦を回収しながら歩いていると倒木を見つけました。気になって調べてみると、根元近くからへし折ったような感じになっています。断面もまだ新しく、表面に苔も付着していません。
 勿体ないのでどう処理するか悩んでいると、ディンさんが近寄ってきます。

「あのどうかしま――!」
「ディンさん。これ、どうやって持っていけばいいと思いますか?」

 二人が疑問の途中で武器を構えまたけれど、気にすることなく質問。

「何を悠長にしているんですか! 何か近づいてきます!」

 周囲に気を配りながら小声で怒鳴る器用なディンさん。一旦倒木から離れると、緊張した様子の二人の方へ向き直ります。

「何を緊張しているんですか? 二人とも兵士ですよね」
「いや、そうじゃなくて――」

 ディンさんが突っ込みを入れようとした途端、私の後ろでガサッという茂みをかき分ける音と共に何かが飛び出してくる音がしました。
 溜息をつきながら振り返ると、雄叫びを上げている熊さん。戦闘態勢に入っているようで鼻息が荒くなっています。

 彼我の距離は十メートル程度、周りの木々から判断して、熊の身長は三メートルぐらい。

 少し睨みあった後、熊は殺気の篭った雄叫びを上げると足を地につけて四足で勢いよく走り始める。

 それに合わせて、左手にナイフを逆手で持ち、右手に鉈を持ってこちらも走り始る。そして、熊の後ろ足が地面を蹴る瞬間に魔法を発動させます。

 一瞬で二メートル程度の土壁が生成され、熊は大地を蹴ると土壁の勢いもあって、見事に後ろ足を上に跳ね上げられる。

 呪文を唱えた直後、右手を後ろに持っていき力を溜めてから、熊の手前めがけて跳びます。

 熊は引っくり返って背中から倒れ、それまでの勢いがある為に前転のようにクルンと回って頭が無防備に晒される。

 その熊の頭へ、大上段から振り下ろした鉈を着地と同時に叩きつけます。

 ゴキッ! という鈍い音共に鉈がめり込む。更に、熊の頭が後ろへと戻っていく際、がら空きの喉元へ左手のナイフを振り抜く。

 巨大熊が後ろへと倒れると、いつでも動ける体制を維持したまま様子を見ていたけれど、ピクリともしません。

「仕留めたかな?」

 様子を伺っていてもしょうがないので、近くの木に巻き付いていた蔦を引きはがして、熊の足に巻き付けて外れないように固定すると、植物系の魔法で蔦の強化と近くの木の上の枝へと持って行って、熊を逆さ吊りにします。

 魔法を使っている間に鉈を点検して仕舞うと、ナイフを手に取る。

「グルーベアをあっさりと倒すなんて……」
「何を呆気に取られているのか分からないですけど、解体の仕方分かりますか?」
「あ、ああ。まずは――」

 ディンさんの指導を受けながらなんとか解体を進めていきます。難しいですね。

「ところで、先程グルーベアとおっしゃっていましたが、これの名前ですか?」
「……もしかして、知らずに狩ったの?」
「ただ単に熊かと」
 
 何だか知らないけれど、二人は顔を見合うと同時に苦笑しました。

「ハンター殺しと言われていて、こいつを数人で狩れるなら一人前と言われているんだ」
「へ~。そうでしたか」

 毛皮を剥ぎ終わったので、鞄から大きめの布を取り出し、広げておいてから肉の解体。匂いを嗅ぎつけて何かが来てもおかしくないので、手元に集中して手早く解体していきます。

 半分ほど肉を取り出すと、毛皮と丸めた布を鞄の中へ。熊の死骸は蔦を切って地面に転がしておき、蔦は回収して鞄の中へ入れて倒木に向き直る。

「大きくて、手で運ぶのは無理ですね。そうなると、ゴーレムかな」

 周辺の土を利用して三メートル程のゴーレムを作りだし、そこらにいた土の精霊にゴーレムの操作をお願いします。
 そのゴーレムで倒木に巻いた蔦を引っ張ってもらうことに。

 ゴーレム作りに結構な魔力を消費したけど、維持に必要な魔力は少ない様子。便利です。なお、操作している精霊は、非常に楽しそうです。

 そのまま街道まで出ると、一休みしてから村へと向かってゆっくりと歩きはじめます。

「今夜は熊鍋かな。でも、シチューにするのもありか。でも、焼肉というのもあるし……」

 一人献立に頭を悩ませていると、後ろを歩くディンさんが溜息をつく気配がします。気にしてもしょうがないので、気にしないで村へと帰還。
 人のいない道を慎重に選んで木材屋まで来ると、倒木と引き換えに木材を家に運んでもらえるように頼み、それとは別に幾つかの木材を購入。
 精霊にお礼を言ってから、ゴーレムを土に還してから笹熊亭へ。

 昼を少し過ぎているので比較的静かな店内を進み、厨房の前で仕込みをしている大将に声をかけます。

「嬢ちゃんか。どうした」
「忙しい時にすみません。これを料理してもらえないかと思いまして」

 布を大将に手渡すと、受け取った大将は中身を確認していく。

「こいつは……熊肉か?」
「グルーベアだそうです」
「グルーベアって言ったか?」

 大将が目を丸くして叫ぶ。次の瞬間、ピエナさんが飛んできて大将の手元を覗き込む。

「あそこにいる二人から教えてもらったのが正しければ、そうなりますね。あ、毛皮がありました」

 鞄から毛皮を取り出すと大将の目がさらに大きくなり、ピエナさんも目を大きく開けて口に手を当てます。

「でかいな。よくも倒せたもんだ。あ、後ろの奴らにも手伝ってもらったのか」
「いえ、私達は何もできませんでした」

 声を揃えて苦笑いを浮かべるディンさん達を見て、大将が自身の頭を軽くたたく。結構いい音がしました。

「やれやれ。おっと、この肉だが、リクエストはあるか?」
「第一希望はシチューですね。後は大将のおススメで」
「分かった。余った分の肉はどうする」
「皆さんで食べてください。どうしても食べたくて狩った訳ではないので」
「……熊も災難だったろうな」

 若干呆れの混じった声音の大将。ピエナさんと後ろの二人も軽く笑っています。

「あ、お昼ですが、サンドイッチとスープ下さい」
「分かった。だが、先にその毛皮を処理した方がいいぞ」

 ギルドに持っていけば処理できると、親切に教えてくれたので笹熊亭を出てギルドに向かいます。
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