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腹減り雀

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本編

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 諸々の実験と確認が終わった後は、リビングに移動して鞄から取り出した蔦の加工を始めます。

 最初は縦八本(一本だけものすごく長い)を軸に円形で編みはじめ、直径二センチ程でおこして少し太くなるように広げながら円筒状に編み始めます。十センチ程の円筒ができたら、四本はそのまま。残り四本を外側に曲げて傘部分の編み込み。

 これと同じものを十個作ったら、リビングに二つ。キッチンに一つ。奥へ行く廊下に二つ。各部屋に一つ。奥の作業部屋だけ二つ。それぞれの天井に釘を押し込んで(強化魔法でできました。便利です)、残していた四本を使って天井に吊るします。

 長い一本はそのまま垂らして、頭より少しだけ上になるよう長さを調整して一部を開けた球状に編み込み。

 角灯と違って空気中の魔力で作動する様にして、魔石を補助として細かい調整ができるように魔法陣を貼り付け。球状の部分を突くと円筒の先に光球ができて辺りを照らします。

 範囲と照度は夜に確認するとして、点灯と消灯を確認して完成です。

 明かりの作業が終了すると、テラスに移動して木材を選別してこちらの加工を開始。今回の木材は、冷蔵庫、糸繰り車、機織り機の順に優先し、余裕があればソファやロッキングチェアも作る予定です。

 いつになったら指し物職人を脱して魔具職人らしく暮らせるのか。そんな雑念に捕らわれないように、集中して作業をこなしていきます。

 作業途中、何かに髪を引っ張られる感覚が数回。不思議に思って下――毛先を見れば、土、風、植物の精霊がじゃれついていました。
 仲よく遊んでいる姿が非常に可愛いです。こちらの事は気にしていないようなので、そのままにして作業の再開。

 手元が暗くなってきたので作業を止めます。
 ストレッチで強張った筋肉をほぐすと、テラスに置いていた木材を屋内へと移動させます。雨の日や暗くなっても作業できるように、テラスに屋根と照明でもつけようかな。ですが、そうなると……また木材加工が増えます。その辺も要検討ですね。

 お腹もすいてきたので、テラスの近くで素振りをしていたディンさん達に声をかけて笹熊亭へ。

「あ、桜華さんだ」

 笹熊亭の前で、疲れた様子のミッケさんとルルに会いました。

「お疲れ様です。晩御飯はこれからですか?」
「うん。もうペコペコ」
「早く行こうよ~」

 お腹をさすっているミッケさんと、ミッケさんの肩に寝転びながらお腹を摩っているルル。二人の様子に苦笑しながら店の中へ入り、カウンター付近にいたピエナさんに手を振ってから空いている席に座ります。

「明日も二人は訓練ですか?」
「明日は昼までで、そのまま明後日も休みだって。桜華さんは?」
「明日の午前中はカームさんのお手伝いと、魔具の仕上げですね。ルル、もうじき来るから寝ないでください」
「ふぁい」
「ベアーシチュー、お待たせしました!」
「ありがとうございます。ピエナさんは食べましたか?」
「うん! 美味しかった!」

 ピエナさんが軽く手を振りながら、妙にキラキラした目で周囲を見渡してから私を見てきます。
 一瞬意味が分からなかったけれど、少し経ってから意味に気がついたので、大きく頷きます。

「皆さん! 本日は桜華さんのお陰でベアーシチューがあります! どうぞ注文してください!」

 ピエナさんの元気な売り込みに反して、周囲の人達が静まり返る。その反応にピエナさんが戸惑っていると、ミッケさんが少し手を上げました。

「あの~。ベアーって熊だよね?」

 普段、笹熊亭で使われるのは羊、豚、兎の肉。熊は週に一度程度です。

「はい。グルーベアです。美味しいですよ?」
「美味しいのか~……って、桜華さんのお陰って、まさか!」
 
 ミッケさんが目を見開いて見つめてきます。同時に、店中の視線を感じます。

「ちょっと森に入った時に出会ったので。比較的弱い個体だったかと思いますよ?」
「いやいや、三メートルの巨体だから! 滅茶苦茶強いから!」

 一緒の席についていたディンさんが二段階のツッコミを入れた、その直後。周囲の様子を窺っていた人達が、口に含んでいた人達が一斉に噴き出しました。
 近くにいたミッケさん、ルル、ピエナさんも目を丸くしています。

「三メートルって、本当か! しかし、いいのか? 激闘だっただろ」

 後ろの席に座っていた小父さんが話に入って来る。これだけ反応されると、流石に何かおかしいと分かります。うまくごまかして鎮静化しようと思いましたが、ヨハンさんの方が早かった。

「いや、二撃。しかも、初撃で頭蓋骨を砕いたのが致命傷」

 エールを飲んでいる訳でもないのに、ヨハンさんがかなりの勢いで一部始終を話し始めます。さすがにディンさんも頭を抱えてしまっているが、今さら止められそうもありません。

 なので、一切合切無視して大人しくシチューを食べます。
 うん。美味しい。どうせだったら猪も食べたいですね。あの森にいるのでしょうか。
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