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Ⅲ.霞む、君
帝都散策
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ヴィクトワール帝国は、決して広い国ではない。よって、自然と建物は縦に長くなる。大通りに出ると、それはそれは大きな高層ビルが群をなして私たちを出迎えた。学園の建物はどれもアンティーク調で、近代的な街の姿に違和感を覚えるが、帝国は技術の進んだ国。皮肉だが、戦争で経済も発達している。
帝都は3つのエリアに分けられるが、高等部の校舎からすぐ出るのは東エリア。今日はこのエリアにお出かけだ。
私たちはビルの一つに入った。ここはショッピングモール的な、色々な店が揃っていて買い物にはここがぴったりな建物なのだ。この様な施設はもう一つある。
そこそこの人で賑わっている中をぶらぶら。
「さて、どうしよっかー」
「そうだ、新しくオープンしたカフェのパフェが美味しそうなんだよね~」
適当に雑貨店を覗きながら、エイミーが言うカフェの話をする。ここの三階にあるらしい。これこれ、と見せてきた携帯の画面を皆が覗き込む。
「はっ!このチョコブラウニーバナナパフェ!幸せの香りが画面からします!」
「いやいやいや、スペシャルプリンパフェでしょ!メロンとかイチゴとか刺さってるよ!」
「私はベリーソースがけチーズケーキパフェかな」
「チーズケーキッ!?」
私が言うと、シャルとエリンがすごい声を上げる。二人は頭を抱えて悩み始めた。
「二人とも、ちょっともらったらいいんじゃないかな?ね、ハンナ?」
「そうね」
エイミーの提案に、なるほどっ!と顔を輝かせる二人。四人とも甘党でよかった。楽しい。
「私は……うーん……小倉抹茶クリームパフェにしよう!」
「抹茶もいいわね」
エスカレーターを登りながら四人でわいわい。
「あっほらほら、これ絶対エイミー似合うわよ」
「わあ、かわいい……!」
洋服屋で夏物を探す。ビジューの付いた白いワンピースはエイミーに似合いそうだ。私はエイミーが持っている服に目をつけた。
「それ、かわいい」
「でしょ?ハンナに似合うと思って」
白のトップスと黒いキャミソールビスチェのセット。キャミソールビスチェはレースで、下のトップスが透ける。大人っぽくていいと思った。
「じゃあ、交換ね」
ふふ、と笑いあって交換する。
ふと見れば、向かいの店でシャルとエリンが帽子のかぶせ合いをしている。シャルが好むような、女の子らしい店で、いつもクールな印象の服を着ているエリンがいると違和感だが、エリンはなんでも似合うようだ。リボンの付いたベレー帽をかぶっても、なんだか様になっている。
私とエイミーはお会計を済ませ、エリンたちと目的のカフェに向かった。
「美味しかった~」
「あの時間を至福のひととき以外に、言い表せる言葉はありません……!幸せ~」
「やっぱり、甘いものって癒やされるわ……」
「うんうん!噂通り、どれも美味しかったねぇ。」
その後、五階の水族館で二時間ほど時間をつぶした。エスカレーターを降りながら感想を言い合う。
「あの魚、美味しそうでしたよね!あのーなんだっけ……」
「カクレクマノミ?」
唸り始めたシャルに、エイミーが助け舟を出した。それ、オレンジ色と黒のしましまの……?
「いやいや、あれは美味しそうじゃないでしょ」
首を振るエリン。
「あの、ちっちゃくて、ブワーって!」
腕を使って必死に表現しているシャルに、三人の顔が綻ぶ。
「…………イワシ?」
「あっ!そう!それですそれですー」
……イワシは美味しそうというより、美味しいでしょう。
つっこみたくなるが、シャルが嬉しそうなのでそれはやめた。
確かに、光る、小さな魚達が群れを成して泳いでいる様子は綺麗だった。美味しそうかどうかはわからない。
「あれだよね、あんなに一匹一匹は小さくても、たくさん集まれば大きな一匹の魚になって、力も大きくなるよね。それって私たち人間にも言えることなんだろうなって……」
エイミーがポツリと漏らした言葉を皆が飲み込み、深いなぁと感じる。え?
「そうだね……ってどした!?」
「エイミーって基本天然だけど、たまに深いこと言うわよね」
「な、なんかいきなりスイッチ入りましたね」
驚きに三人が振り返って口々に言う。
「そんな話どっかでありませんでした?初等部で習ったような……」
「ああ!あったあった」
「懐かしいわね。魚の話してたらお腹空いてきちゃった。今日の晩ごはん何にしようかしら」
「私、魚のフライにします!」
「いいね、私もそうしようかなー。あーでもエビフライも捨てがたい!シャル、ちょっとちょうだいよー」
「ちょっと酷いこと言われた上に、既に別の話題に移ってる!?」
つっこむタイミングを伺っていたエイミーがやっとつっこむ。
「あはは、で、エイミーは晩ごはん何にする?」
「えーっと……」
エイミーが答えようとした時だった。
けたたましいアラート音と共に、カバンのなかの携帯が振動する。
「!?」
鳴っているのは私たち四人だけのようだ。ビルの入り口、通り過ぎる人たちがチラチラとこちらを見ている。
すばやく取り出して画面を確認。経験したことのない事態に心臓がバクバクとうるさくなる。
✾
!緊急事態!
壁付近に敵国の攻撃。来週の討伐任務に参加予定だった部隊は、至急東ゲートへ向かうように。
対象部隊
第一部隊
第三部隊
第六部隊
第十八部隊
✾
「どういう、こと……?」
「わからない。でも、緊急事態だよ。すぐに向かおう」
混乱しているエイミーにエリンが声をかけ、四人で壁から外へ通じる、東ゲートに向かって駆け出した。壁の上まで半月が、ちょうど真ん前に昇っていた。
帝都は3つのエリアに分けられるが、高等部の校舎からすぐ出るのは東エリア。今日はこのエリアにお出かけだ。
私たちはビルの一つに入った。ここはショッピングモール的な、色々な店が揃っていて買い物にはここがぴったりな建物なのだ。この様な施設はもう一つある。
そこそこの人で賑わっている中をぶらぶら。
「さて、どうしよっかー」
「そうだ、新しくオープンしたカフェのパフェが美味しそうなんだよね~」
適当に雑貨店を覗きながら、エイミーが言うカフェの話をする。ここの三階にあるらしい。これこれ、と見せてきた携帯の画面を皆が覗き込む。
「はっ!このチョコブラウニーバナナパフェ!幸せの香りが画面からします!」
「いやいやいや、スペシャルプリンパフェでしょ!メロンとかイチゴとか刺さってるよ!」
「私はベリーソースがけチーズケーキパフェかな」
「チーズケーキッ!?」
私が言うと、シャルとエリンがすごい声を上げる。二人は頭を抱えて悩み始めた。
「二人とも、ちょっともらったらいいんじゃないかな?ね、ハンナ?」
「そうね」
エイミーの提案に、なるほどっ!と顔を輝かせる二人。四人とも甘党でよかった。楽しい。
「私は……うーん……小倉抹茶クリームパフェにしよう!」
「抹茶もいいわね」
エスカレーターを登りながら四人でわいわい。
「あっほらほら、これ絶対エイミー似合うわよ」
「わあ、かわいい……!」
洋服屋で夏物を探す。ビジューの付いた白いワンピースはエイミーに似合いそうだ。私はエイミーが持っている服に目をつけた。
「それ、かわいい」
「でしょ?ハンナに似合うと思って」
白のトップスと黒いキャミソールビスチェのセット。キャミソールビスチェはレースで、下のトップスが透ける。大人っぽくていいと思った。
「じゃあ、交換ね」
ふふ、と笑いあって交換する。
ふと見れば、向かいの店でシャルとエリンが帽子のかぶせ合いをしている。シャルが好むような、女の子らしい店で、いつもクールな印象の服を着ているエリンがいると違和感だが、エリンはなんでも似合うようだ。リボンの付いたベレー帽をかぶっても、なんだか様になっている。
私とエイミーはお会計を済ませ、エリンたちと目的のカフェに向かった。
「美味しかった~」
「あの時間を至福のひととき以外に、言い表せる言葉はありません……!幸せ~」
「やっぱり、甘いものって癒やされるわ……」
「うんうん!噂通り、どれも美味しかったねぇ。」
その後、五階の水族館で二時間ほど時間をつぶした。エスカレーターを降りながら感想を言い合う。
「あの魚、美味しそうでしたよね!あのーなんだっけ……」
「カクレクマノミ?」
唸り始めたシャルに、エイミーが助け舟を出した。それ、オレンジ色と黒のしましまの……?
「いやいや、あれは美味しそうじゃないでしょ」
首を振るエリン。
「あの、ちっちゃくて、ブワーって!」
腕を使って必死に表現しているシャルに、三人の顔が綻ぶ。
「…………イワシ?」
「あっ!そう!それですそれですー」
……イワシは美味しそうというより、美味しいでしょう。
つっこみたくなるが、シャルが嬉しそうなのでそれはやめた。
確かに、光る、小さな魚達が群れを成して泳いでいる様子は綺麗だった。美味しそうかどうかはわからない。
「あれだよね、あんなに一匹一匹は小さくても、たくさん集まれば大きな一匹の魚になって、力も大きくなるよね。それって私たち人間にも言えることなんだろうなって……」
エイミーがポツリと漏らした言葉を皆が飲み込み、深いなぁと感じる。え?
「そうだね……ってどした!?」
「エイミーって基本天然だけど、たまに深いこと言うわよね」
「な、なんかいきなりスイッチ入りましたね」
驚きに三人が振り返って口々に言う。
「そんな話どっかでありませんでした?初等部で習ったような……」
「ああ!あったあった」
「懐かしいわね。魚の話してたらお腹空いてきちゃった。今日の晩ごはん何にしようかしら」
「私、魚のフライにします!」
「いいね、私もそうしようかなー。あーでもエビフライも捨てがたい!シャル、ちょっとちょうだいよー」
「ちょっと酷いこと言われた上に、既に別の話題に移ってる!?」
つっこむタイミングを伺っていたエイミーがやっとつっこむ。
「あはは、で、エイミーは晩ごはん何にする?」
「えーっと……」
エイミーが答えようとした時だった。
けたたましいアラート音と共に、カバンのなかの携帯が振動する。
「!?」
鳴っているのは私たち四人だけのようだ。ビルの入り口、通り過ぎる人たちがチラチラとこちらを見ている。
すばやく取り出して画面を確認。経験したことのない事態に心臓がバクバクとうるさくなる。
✾
!緊急事態!
壁付近に敵国の攻撃。来週の討伐任務に参加予定だった部隊は、至急東ゲートへ向かうように。
対象部隊
第一部隊
第三部隊
第六部隊
第十八部隊
✾
「どういう、こと……?」
「わからない。でも、緊急事態だよ。すぐに向かおう」
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