野菜室の叫び

クマ不吉

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カップルをいためる

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 あの裏切り者キュウリとゴミ箱行きになったワサビさんが消えて2日。やはり男は野菜室を開けることはなく、ジャガイモとキャベツは暗闇の中で過ごしていた。

「男ー、早く食わないと毒作るよー毒」
「うるさいのぉジャガイモ。いい加減静かにせんか」
「黙れジジィ」
「口も悪くなっとる」

 ジャガイモはいつまでたっても食べられないことにイライラを感じていた。そして、萎れてきたキャベツには老化が見受けられる。完全に年寄りになっていた。

「それにしてもワサビさんと同じ思考になりそうだ。俺はジャガイモだぞ? デンプン蓄えてるんだぞ? 早くカレーにしろよ。そして食中毒になれ」
「2日前と変わらんのぉ」

 そんな愚痴を溢していると、外から女の声が聞こえた。

「あの子の好きな野菜炒めをつくってあげないとねぇ」

 どうやら、あの男の母親が家にきたらしい。ガサゴソと袋の中から取り出している音が聞こえる。ゴトゴトと固いなにかが置かれたが、正体はすぐに分かった。

「外に出られるー」
「なにこの部屋汚ーい」
「にん子、いつまでも一緒だよ」
「じん男さん……」
「ニラです!」
「下から豚肉の臭いするよー!臭いよー!」

 なんともフレッシュな声が聞こえた。出荷されたてなのだろうか。しかし、中に付き合っている野菜がいるとジャガイモは気づいた。イチャイチャしやがって。暗闇にいすぎたせいか、ジャガイモはイライラしだした。

「薄命リア充め。皮剥かれてくたばれ」
「野菜に言っても効果はないぞ? 」
「知ってるわジジィ」
「なら言うんじゃないわい。それに、もうすぐジャガイモが好きな声が聞こえると思うぞ?」

 キャベツがそう言うと、ジャガイモが好きな声が聞こえ出した。
「フフンフーンフフーフン」
「いだーーーい! 皮を剥かないでーーー! じん男さん助けてーーーー!」
「にん子ーーーー!」

 鼻歌混じりでリア充の片割れが悲鳴をあげだした。確かに悲鳴が好きなジャガイモは静かに清聴する。

「み、見ないでじん男さん」
「み、見てないさにん子! 君の痛々しい姿なんて……何で俺まで! ああああああぁぁぁぁ!」
「じん男さーーーーん!」

 今度は片方の奴が皮を剥かれる。この声を聞いていたジャガイモは恍惚とした顔になっていた。

「ほんとだー快っ感」
「ひねくれておるのジャガイモ」
「ヤバい、子孫出そう」
「ドーパミンが出るみたいに言うなジャガイモ」

 突っ込みに体力を使って疲れてしまい、さらに老化を進めてしまったキャベツ。リア充の悲鳴を聞いてニヤニヤしているジャガイモはお母さんもっとやれと応援していた。

「あらいけない。これ冷蔵庫にいれないと」

 そう言って、野菜室を開けたお母さん。光が差し込むと、あの男似の顔と他に、手には皮を剥かれたニンジンの姿があった。

「あのジャガイモに見られてる! 見ないで、見ないでーーー!」
「見るんじゃねぇよ!あっち向けーーー!」

 現在裸族のリア充が叫んでるが気にしない。目を細め笑っているジャガイモに対して、この子孫繁栄クソ野郎と蔑んだキャベツだった。
 男のお母さんは赤い何かが入った透明パックを置いて再び閉める。
 
「ジジィ、このバックはなんだ?」
「……とちおとめと書いてるのぉ」
「とちおとめぇ? トチ狂ったオトメってか? おい笑えよ」
「拒否権はあるかの?」
「あのーすいません……」

 どこからか女性の声が聞こえた。男のお母さんでもない少し若い声。どうやら、パック詰めされているイチゴが発した声だと気づく。

「先程からニンジンさんの声が聞こえなくなりましたが、どうなったのでしょうか?」
「耳を澄ませば聞こえるよ?」

 耳を澄ますと微かにだが聞こえる。

「短冊にされちゃったよぉぉぉぉ!」
「俺もだにん子ーーー!」
「いてぇぇよ!この女め、反撃してやる!硫化アリル食らえーー!」
「あら、この玉ねぎ目に染みないわね」
「どうして効かないんだーーー!」
「ニラです!」

 さっきからニラのやつ、ニラです!しか言っていないな。なんだかカオスに思えてきたジャガイモである。
「……少し聞こえますが、もう大丈夫ですかね。皆、もういいわよー!」

「「「「「「「「はーい!」」」」」」」」

 子供の声が重なりあい、この室内が煩くなった。

「皆、ここがこれから住む家よ。さぁ先住民の方に挨拶しなさい」
「いち子でーす」
「に子」
「さん子です」
「よん子っす!」
「ご子……」
「ストロベリーデース」
「しち子なのよ!」
「ブルーベリー!きゃるるん」
「おい、アメリカ育ち混じってるし、イチゴでもねぇ奴もいるんだけど!ホームステイかよ!」
「「「「「「「「イチゴだよ?」」」」」」」」
「見りゃ分かるわ餓鬼ども! ストロベリーは分かるさ。イチゴなのにブルーベリーって反抗期かお前は!」
「お姉ちゃんいじめられたー」
「「「「「「「めっ!」」」」」」」

 ……もう突っ込むのも疲れたジャガイモはぐったりと心を無にする。

「ジジィ……パス」
「無理じゃ」
「ごめんなさい皆さん、この子たち元気が有り余ってるの」
「見りゃ分かるよ……うるせぇもん」

 なるほどね。確かにこれは気が滅入るわ。キャベツや裏切り者、あと……誰だっけ?。ごめん。俺静かになるよと悟ったジャガイモであった。とりあえず落ち着こうと外の奴等の声を聞こうと耳を傾けた。

「今度はなに?じん男さん!」
「下を見てみろにん子! 油だ!油が敷いてある!」
「私たち炒められるの?嫌よ! 私たち何か悪いことをしたの!?」
「してないさ……俺達はただ愛し合っていただけなのに……こんなの酷すぎるよ!」
「なぜだ……俺は最弱だったのか? 俺の技が効かないなんて……」
「ニラです!」

 ニラ、どんだけ自己主張するんだとジャガイモは思う。そんな事を思っていると、油に炒められる音が響いた。

「あああぁぁぁ熱いぃぃぃ! 」
「にん子ぉぉ! 愛してるぅぅぅぅ! あああぁぁぁ!」
「俺は最弱……最弱……最弱なんだぁぁぁ!」
「ニラでーーーす!」

ジュワーと焼ける野菜たちの声はニラ以外は絶望を感じている。ニラの声だけを省いたジャガイモは、

「あああぁぁ心がピョンピョンするんじゃーー!」

 よい子には見せられないジャガイモになっていた。ヘブン状態になり宙に浮いているように見え、心なしか虹も見える。子孫も生えて来そうな勢いだ。

「キャベツお爺さん、あの人へんー」
「いい子は見ないようにの」
 
 キャベツはそう言うことしか出来なかった。
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