1億の犠牲と1つの居場所

雷兎

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【第2話】目覚め

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 「……まったく…何なのよ……」

 ため息をつきながら私は部屋を調べる。
 私は目を覚ましたらここにいて、なぜここにいるのか、私にもわからない。
 でも記憶喪失なわけではない。
 名前は『ノア』で、家族構成も今までのこともちゃんと言える。
 でもなぜここにいるのか。それだけが思い出せない。

──ただここで何もしないのはよくないから、自分で脱出しようと思っているわけだけど……

「もう……なんでこんなところにいるのよ……」

 この部屋には窓と小さな本棚くらいしかない。そして、ドアには鍵がかかっている。

──こういうとき鍵は本棚にあるのが小説のお決まりだけど……

「まぁ……そんな簡単にあるわけないわよね」

ドアの前に立って鍵穴をみてみる。

──この形は

 私は首にかけている鍵を取り出す。

──やっぱり、鍵の形が違う

 そもそも鍵があうなんて最初から思っていない。でもこの鍵で開いてほしいとは思わずにはいられない。窓の方へなんとなく近づいて、カーテンを開ける。
空には月が登っていて、ここは木に囲まれているようだった。

────綺麗……

 その月を見ていると、昔の頃を思い出す。本当に本当に綺麗な月で、しばらく月に見とれていた。

 ──そうだ……ここから出られないかな?

 窓の向こうを見ると出られないようにしているのか、木の枝が引っ掛かっている。

「だめか……」

 鍵を探そうと振り返るときに何か光ったような気がした。

──もしかして!鍵!?

 窓をよくみると窓の鍵のところに鍵が貼り付けられている。

────これで出られる!
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