12 / 21
12
しおりを挟むその名前が体育館に響き渡った瞬間、僕は一瞬にして体が固まった。いや、僕だけじゃない。生徒全員が時を止められたかのような状態になった。
体育館の壇上に立ったのは、あの日と全く変わらない、雪のように白い肌、長いまつげが印象的な、あの美青年だった。玲央はゆっくりと歩を進め、壇上に立つと、そこから会場全体に視線を送った。彼の存在が、ただその場に立っているだけで、すべての視線を奪ってしまう。
玲央は冷静に、そして自信に満ちた様子でマイクを取った。その顔立ちは先日と同じで、どこか冷徹さを感じさせるが、どこか気品に満ちていて、まるで芸術品のように美しかった。
「はじめまして。白銀玲央です」
その一言に、僕はあまりにも驚いて、思わず息を呑んだ。周りの生徒たちも、皆同じだ。先生らですら固まっている。
テレビで見たあの天才俳優が、今、ここにいる。そんな現実が信じられないような感覚だった。玲央はさらりと髪をかきあげながら、朗らかに笑った。
「この学校には、色々と事情があって転校してきました。短い間ですが、よろしくお願いします」
その言葉を終えると、彼は軽く頭を下げ、改めて会場全体に微笑みを向けた。
しばしの静寂。
誰も何も言わない沈黙があり。
そして
「……し、白銀玲央だぁー!!!」
割れんばかりの歓声が、体育館中で爆発した。
僕の耳が壊れるぐらいの大歓声だった。
周りの女子たちが興奮のあまり立ち上がって叫び始めている。女子生徒たちが手を振ったり、叫んだりして、まるで祭りのような熱気を放っていた。
「玲央くんー!」
「うわぁ! 白銀玲央だ!」
「本物だ…! テレビで見てるのと全然違う!」
「かっこよすぎ!!」
「同じ人間なの……!?」
そんな声が何度も繰り返され、周りの空気はまさに熱狂そのものだった。と、突如として何人かの女子生徒が顔を真っ赤にして倒れ込んだり、号泣し始めた。彼の美しさに圧倒されたのか、あまりの興奮に耐えきれなくなったのだろう。
「うぅ、玲央くん……!」
「だめ、こんな、耐えられない……!」
涙を流しながら膝をついている女子生徒たちもいて、まるで夢を見ているような、興奮と感動の入り混じった雰囲気が体育館全体を支配していた。
誰もが目を輝かせ、息を呑んで彼を見つめている。
その一方で、僕はただ呆然と立ち尽くしていた。
まさか、この学校に彼が転校生として来るなんて。あの日、美少女として会ったあの子が、こんな形で全校生徒の前に登場するとは、全く予想していなかった。
玲央はもう一度軽く頭を下げ、また微笑んだ。そのたびに歓声が爆発する。
その光景を目の当たりにしながら、自然と自分の口が動いた。
「どうして、玲央がこの学校に……?」
92
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
あなたのいちばんすきなひと
名衛 澄
BL
亜食有誠(あじきゆうせい)は幼なじみの与木実晴(よぎみはる)に好意を寄せている。
ある日、有誠が冗談のつもりで実晴に付き合おうかと提案したところ、まさかのOKをもらってしまった。
有誠が混乱している間にお付き合いが始まってしまうが、実晴の態度はいつもと変わらない。
俺のことを好きでもないくせに、なぜ付き合う気になったんだ。
実晴の考えていることがわからず、不安に苛まれる有誠。
そんなとき、実晴の元カノから実晴との復縁に協力してほしいと相談を受ける。
また友人に、幼なじみに戻ったとしても、実晴のとなりにいたい。
自分の気持ちを隠して実晴との"恋人ごっこ"の関係を続ける有誠は――
隠れ執着攻め×不器用一生懸命受けの、学園青春ストーリー。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる