公爵様、どうか僕を忘れてください

まんまる

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番外編

神のいる場所

人は都合のいい生き物だ。
普段は忘れているのに、困った時だけ神に祈る。
人は幸せになった瞬間、神に感謝する。でもそれは、この幸せがずっと続きますようにと、神に祈るためだ。

それでも、人を愛おしく思うのは、僕が神だからだろうか。
なんて、難しいことをつい考えてしまうのは、僕が意識だけの存在になってしまったからかもしれない。

ルディアと腹の子に命を吹き込み、目覚めぬはずのジルを、再び目覚めさせた代償に、僕はもう、人間界に触れる事ができなくなってしまった。

でも、それでも構わない。僕の愛し子たちが、幸せになってくれるのなら。


『本当は、もう一度、愛し子に触れたい。直接触れる事はできなくても、近くで見守っていたい』


ぐいっ


『えっ?何っ?』


僕は突然、あるはずのない銀色の髪を、何かに強く引っ張られた。


ヒヒーン


「わわっ!スカイル、だめっ!耳の中に手を入れたら、テラがびっくりするよ」
「だって、神しゃまの声がしたんだもん」
「えっ?」


『ここは⋯?ルディアの声⋯と、スカイルって、もしかして、ルディアの子?』


僕はそっと目を開けた。

そこはどうやらテラの耳の中のようで、僕は外の光に向かって、思い切り飛び出した。 

『ああ、なんて可愛い子』

飛び出た先には、僕が愛したあの人にそっくりな小さな男の子がいて、引き抜いたテラの耳毛をぎゅっと握り締めていた。

『初めまして、スカイル』

「ん?神しゃま?」

「どうしたの?スカイル」
「やっぱり、神しゃまの声がする」

スカイルが、きょろきょろと僕を探していると、ルディアがスカイルの手を見て慌て出した。

「ああっ!スカイル、それ、もしかしてテラの毛?そんなに抜いたら可哀想でしょ!」

スカイルが、もみじのような可愛い手をぱっと広げると、突然自由になったテラの毛が、ふわりと宙に舞った。

「えっ?銀⋯色⋯?」
「父しゃま!テラのおけけ、銀色だった!」

ルディアとスカイルが、風に舞う銀色の毛を目で追いながら、瞳をきらきらと輝かせて、同時に空を見上げた。

その光景を見た瞬間、僕の頬には、自然と涙が伝っていた。


『僕の愛し子たち、また会えて嬉しいよ』
 

もう僕の声は、スカイルには届かなかった。
でもこれからは、ずっと2人を近くで見守っていられる。


『テラ、よろしくね』


僕がテラの耳の中で囁くと、テラが、ブルルと返事をした。






完結


少しシリアスな話に挑戦してみましたが、いかがでしたでしょうか。

最後まで呼んで頂きありがとうございました。

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