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番外編 大人買い
結婚して3ヶ月が経った。
侯爵家に来て色々あったけど、今は日々平穏に過ごせている。
「シルティ、その手紙は誰からだ?」
「あっ、アリウス、おかえりなさい。えっと、こっちの手紙がフィーネからで、こっちはダレルからだよ」
「ほお、それで何と書いてあったんだ?」
「2人とも近況報告⋯みたいな感じだよ。フィーネは、番になった20歳年上の旦那様とののろけ話で、ダレルは⋯元気にしてるか⋯的な⋯」
「⋯見せてくれ」
「えっ!?」
「ダレル王子の手紙を見せてくれ」
「あっ、え、えっと、そうだ、フィーネの旦那様は、とっても優しいんだって」
「ああ、あのご令嬢の性格なら、歳上でないと無理だろうな」
「えっ?アリウス、それどういう意味?」
「そのままの意味だが」
アリウスは僕の話を上手く流しながら、右手をすっと差し出して、ダレルの手紙を催促した。
「ええっと、アリウスは見ない方がいい⋯かも。あっ、あのね、ダレルは結婚相手を探すのが大変なんだって。僕も王族だから、ダレルの気持ちが分かるなあって思って、ははは」
「シルティ」
「は、はいっ、これ」
アリウスの圧に負けて、ダレルの手紙を渡してしまった。
アリウスは無言で手紙を開いた。
カサッ
『シルティ、元気にしているか?俺はまあ、元気にしているが、正直、結婚相手探しには辟易している。そっちの学園にいた頃は楽しかったなあ。毎日シルティと一緒にいられて。シルティはもう団長と番になったんだろ?あの団長だ、絶対シルティを離さないだろうな。団長しつこそうだもんな。シルティにこっちに遊びに来て欲しいが、団長が許さないだろうな』
ぴきっ
手紙を読み進めるにつれ、アリウスの青筋がくっきりと浮いてきた。
「あのっ、アリウス、それ以上は読ま⋯」
『シルティに会いたい。あーあ、おっさんさえいなければなあ』
ビリビリビリッ!
「誰がおっさんだあああぁぁぁっ!!!」
「わああぁっ!!アリウスっ!落ち着いてっ!そ、そうだ、ほら、明日は手袋を買いに行くんでしょ?た、楽しみだなあ、はは⋯は」
翌日、まだ少し不機嫌なアリウスと一緒に、雑貨店にやって来た。
「わあ、この手袋かっこいいね。アリウスに似合いそう」
「うーん、こっちの色がいいかな」
「ああぁ、こっちの方が、剣を握りやすいかな」
「あっ、これもいいね。ねえアリウス、どれがいい?って、アリウスっ!?」
僕はたくさんある手袋を、次々と手に取った。
なかなか一つに決める事ができなくて、アリウスの意見を聞こうと思い、後ろを振り向くと、アリウスは僕が手に取った手袋を、全部店主に預けていた。
「店主、シルティが触った物は、全て買わせてもらう」
「ありがとうございます!侯爵様!」
「ええっ!?アリウス、全部だなんて、もったいないよ!」
「シルティ、何を言う。シルティの香りを、他の者に嗅がせるわけにはいかない」
僕が慌ててアリウスを止めていると、店主がほくほく顔で手袋を箱に詰めてしまった。
「侯爵様、ご伴侶様、こちらはいかがですか?」
「えっ?」
僕がアリウスのシャツを掴んで引っ張っていると、店主が声を掛けてきた。
思わず振り向くと、店主の手の平には、小さな小さな靴下が乗せられていた。
「それは⋯赤ちゃんの靴下?」
「ええ、私の勘はよく当たるんですよ」
店主はそう言って、にっこりと笑った。
「店主、ここからここまで、赤子に必要な物を全ていただこう」
「ありがとうございますっっ!!」
「アリウスっ!?」
僕が呆気にとられている間に、店主は目にも止まらぬ速さで、可愛い肌着や服、帽子やおもちゃまで箱に詰めてしまった。
「またのお越しをお待ちしております!」
「ああ、世話になった」
「⋯⋯」
気づくと僕は、両手一杯の荷物を抱えたアリウスと馬車に乗り込んでいた。
その日の夜、アリウスが呼んだお医者さんから、僕は妊娠を告げられた。
アリウスは驚く僕のお腹をそっとさすりながら、またあの雑貨店に行って買い物をすると張り切っていた。
完結
最後まで読んで頂きありがとうございました。
たくさんのお気に入り登録、いいね♡、エールもありがとうございました。
侯爵家に来て色々あったけど、今は日々平穏に過ごせている。
「シルティ、その手紙は誰からだ?」
「あっ、アリウス、おかえりなさい。えっと、こっちの手紙がフィーネからで、こっちはダレルからだよ」
「ほお、それで何と書いてあったんだ?」
「2人とも近況報告⋯みたいな感じだよ。フィーネは、番になった20歳年上の旦那様とののろけ話で、ダレルは⋯元気にしてるか⋯的な⋯」
「⋯見せてくれ」
「えっ!?」
「ダレル王子の手紙を見せてくれ」
「あっ、え、えっと、そうだ、フィーネの旦那様は、とっても優しいんだって」
「ああ、あのご令嬢の性格なら、歳上でないと無理だろうな」
「えっ?アリウス、それどういう意味?」
「そのままの意味だが」
アリウスは僕の話を上手く流しながら、右手をすっと差し出して、ダレルの手紙を催促した。
「ええっと、アリウスは見ない方がいい⋯かも。あっ、あのね、ダレルは結婚相手を探すのが大変なんだって。僕も王族だから、ダレルの気持ちが分かるなあって思って、ははは」
「シルティ」
「は、はいっ、これ」
アリウスの圧に負けて、ダレルの手紙を渡してしまった。
アリウスは無言で手紙を開いた。
カサッ
『シルティ、元気にしているか?俺はまあ、元気にしているが、正直、結婚相手探しには辟易している。そっちの学園にいた頃は楽しかったなあ。毎日シルティと一緒にいられて。シルティはもう団長と番になったんだろ?あの団長だ、絶対シルティを離さないだろうな。団長しつこそうだもんな。シルティにこっちに遊びに来て欲しいが、団長が許さないだろうな』
ぴきっ
手紙を読み進めるにつれ、アリウスの青筋がくっきりと浮いてきた。
「あのっ、アリウス、それ以上は読ま⋯」
『シルティに会いたい。あーあ、おっさんさえいなければなあ』
ビリビリビリッ!
「誰がおっさんだあああぁぁぁっ!!!」
「わああぁっ!!アリウスっ!落ち着いてっ!そ、そうだ、ほら、明日は手袋を買いに行くんでしょ?た、楽しみだなあ、はは⋯は」
翌日、まだ少し不機嫌なアリウスと一緒に、雑貨店にやって来た。
「わあ、この手袋かっこいいね。アリウスに似合いそう」
「うーん、こっちの色がいいかな」
「ああぁ、こっちの方が、剣を握りやすいかな」
「あっ、これもいいね。ねえアリウス、どれがいい?って、アリウスっ!?」
僕はたくさんある手袋を、次々と手に取った。
なかなか一つに決める事ができなくて、アリウスの意見を聞こうと思い、後ろを振り向くと、アリウスは僕が手に取った手袋を、全部店主に預けていた。
「店主、シルティが触った物は、全て買わせてもらう」
「ありがとうございます!侯爵様!」
「ええっ!?アリウス、全部だなんて、もったいないよ!」
「シルティ、何を言う。シルティの香りを、他の者に嗅がせるわけにはいかない」
僕が慌ててアリウスを止めていると、店主がほくほく顔で手袋を箱に詰めてしまった。
「侯爵様、ご伴侶様、こちらはいかがですか?」
「えっ?」
僕がアリウスのシャツを掴んで引っ張っていると、店主が声を掛けてきた。
思わず振り向くと、店主の手の平には、小さな小さな靴下が乗せられていた。
「それは⋯赤ちゃんの靴下?」
「ええ、私の勘はよく当たるんですよ」
店主はそう言って、にっこりと笑った。
「店主、ここからここまで、赤子に必要な物を全ていただこう」
「ありがとうございますっっ!!」
「アリウスっ!?」
僕が呆気にとられている間に、店主は目にも止まらぬ速さで、可愛い肌着や服、帽子やおもちゃまで箱に詰めてしまった。
「またのお越しをお待ちしております!」
「ああ、世話になった」
「⋯⋯」
気づくと僕は、両手一杯の荷物を抱えたアリウスと馬車に乗り込んでいた。
その日の夜、アリウスが呼んだお医者さんから、僕は妊娠を告げられた。
アリウスは驚く僕のお腹をそっとさすりながら、またあの雑貨店に行って買い物をすると張り切っていた。
完結
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