女4人の素敵な関係

上野蜜子

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このお話の登場人物

松葉牡丹

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松葉牡丹は危機感を覚えていた。

椿と同じ建物内のサプリメントショップで働く牡丹は、3回連続で食事の誘いを断られたことに対するショックを隠し切れなかった。

ゲームの約束があると言って断られることなんて、これまで何度もあった。そしていつも、椿さんから「また日を改めよう」と調整してくれた。今回もそうだった。  

……でも、今回ばかりは理由が違った。  

「ごめん、その日友達とご飯行くんだよね。次の休み空いてる?」

「ごめん、その日友達とカラオケ行くんだわ。次の休み被った日でもいい?」

「ごめん、その日友達と漫喫行くことになったんだよね。直近で空いてる日いつ?」

その友達とは一体どんな間柄の人間でどこ繋がりの人間なのか。どんどん距離が近くなっている。漫画喫茶に二人で行くような関係って一体何なのだろう。

牡丹は何度も聞こうと思ったが、椿に難色を示されるのが怖くてずっと聞けていないままでいた。

今までゲームの予定以外で調整を申し出されたことはなかった牡丹にとって、唐突に出てきた自分以外の椿の友達という人間について警戒心以外の感情が湧いてこない。

春から椿の様子がおかしいことにはなんとなく気付いていたが、まさか恋人でもできたんじゃないかと牡丹は不安を消すためにコンビニスイーツを貪りながら缶チューハイを飲み漁る。

椿は牡丹の大学時代の1つ上の先輩で、学部や学科が同じわけではない。ただ3年間活動する文化祭の実行委員で2年間一緒に活動しただけの関係だったが、牡丹は大変椿に懐いており、椿もまた悪い気はせず牡丹のことを可愛がっていた。

卒業後も交流は続いていたが、内定をもらった会社でたまたま配属された先に椿がいたことで、牡丹はこれは運命だと強く確信した。

椿と2人でシフト管理アプリを入れお互いの休みを把握し合い、休みが被った日を狙ってデートに誘い、仕事終わりは夕飯とお酒を嗜んで…

そんな恋人のような日々を満喫していた。これはもう付き合っているのではないかという錯覚すらあった。出勤すれば同じ建物内に椿がいる。休憩時間が被れば一緒にランチタイムを過ごし、休みの日はまったりデート。完璧だった。完璧な毎日だと思っていたのに、ぽっと出のその人間にこの日々を邪魔されるわけにはいかない。

「椿さん、私にもそのお友達に会わせてくださいよ!私も仲良くしたいです!」

勇気を出して絞り出した言葉だった。

それに対する椿の返事は、それはまあ軽いものだった。

「おう、いーよ。友達もいいって言うと思う。漫喫でもいい?」

初対面の人間と漫画喫茶はキツいんじゃないだろうかと一瞬戸惑ったが、牡丹は行かないわけにいかなかった。

椿さんのことは、誰にも渡さない。  

この人は、私のものだ。  

この人をグズグズに組み敷くのは、私だけだ。





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