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第六章 航海
第39話 格上殺しの技
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「さて、僕が気になる子はいるかな?」
子供は何かを喋ると街を見渡した。宙に浮かぶ人影に街の人々は驚いている。あちこちでザワザワと声が上がっていて、一部の冒険者は魔族ではないかと気づいているようだ。
「……分からないな。ネフィル=エスト! この街にいるだろう!!」
おれ……? おれを探しているのか? そう思っていると子供は軽く手をかざし、街の東部、全体の5分の1程度の範囲を吹き飛ばした。まずい。おれが出ないと恐らくこの街全てを破壊するだろう。
だがおれが行って勝てるか……? そしてヤツの攻撃を見て一つ分かったことがある。少ないから魔力を感じにくかったのではない。この一帯がヤツの魔力に覆われているのだ。だから分かりづらかったのだ。
それとエルフの長老の話を思い出した。“近いうちに三界と出会うだろう”という話を。この規格外な魔族はつまり……
「エスト。行っちゃダメよ。多分アイツは三界だから」
「分かってるけど……このままじゃこの街が……!」
「でもダメ! 逃げることを考えないと、出てったところで魔族は人間をみんな殺すでしょうし」
セリアの言っていることは理解できる。もっともなことだ。だが、人が死んでるのをこのまま見過ごせって……?
「落ち着くんだ。私達が行っても無駄死にするだけだからな。なんとか耐えるしかない」
「くそッ……!」
「早く出てきなよ。このまま街を全部破壊しちゃうよ」
そう言って魔族はさらに街の一部を吹き飛ばす。何も出来ないのか……? くそッ…どうすればいい。
街中から悲鳴が聞こえる。その中には子供の声もある。おれが隠れていてはヤツは破壊行為を止めないだろう。おれが行ったところで止めるとは限らないが、少しの時間稼ぎにはなるはずだ。
「おい、エスト!」
イマイチ考えがまとまらないないまま、おれは精霊の力で体を浮かせて魔族に接近した。だがどうする…? 一応“身体強化”は使っているが、これでどれだけ時間を稼げるだろうか。稼いだところでどうするんだ?
「あのバカ、人の気も知らずに!」
そういってグラは竜の姿をとった。彼もまた大きな翼を動かしながら空を飛ぶ。
「おれがエストだ……。お前の言うとおり出てきてやったぞ」
「……お前が……エストか……?」
「そうだっつってんだろ」
「おい、エスト! 貴様勝手に出やがって!」
叫ぶグラに対して“悪い”とだけ伝え、おれは相手を睨みつける。緊張感からか、あるいは恐怖からか、鼓動が激しくなり、それでいて恐ろしく寒く感じられた。生きた心地がしない。コイツの魔力に押しつぶされそうだ。
「君は竜帝グラダルオだね。今君には用がないんだよ。下がっててくれるかな?」
「ぐわッ!?」
「グラ!??」
魔族はハエを払うように空に手を振ると、それと同時にグラの巨体が地面へと墜落した。しかも身体に大きな切り傷を伴って。下にいたフリナがすぐに向かったが、大怪我ではあれど致命傷ではなかったため下級ポーションだけ使っていた。
「……てめェ、何者だ!? なんでおれを探していた!?」
「うん? ああ、自己紹介がまだだったかな? 僕は“我界”カルタリア=デスバルト。三界の本山って言えば分かるかな?」
「本山……だと!?」
三界は序列1位が本山、2位が双角、3位が三番と呼ばれる。つまりコイツは世界最強の魔族という訳だ。……本当にツいてねぇな……。
「君を探してた理由はね、気になったからだよ。ついこの間までは無名だったんでしょ? 有望な奴は見ておきたいからね」
有望……? 何の話だ?
「不思議そうな顔をしてるね。まぁいずれ分かるさ。……ところでその指、いつ撃つんだい?」
「……」
おれが右手で白天を撃とうとしているのがバレた。目一杯に圧縮しるつもりだったので、バレるのは当然なのだが……。
「気づいてて止めねぇのか? 随分と余裕じゃねぇか」
「ははっ。だってその程度じゃ僕には効果がないだろ? そんなちっぽけな魔力、いや、魔素じゃさ」
「そう思うか? なら喰らってみやがれ!」
「『白天』!!」
おれは油断している相手に渾身の一撃をお見舞いした。ここまで溜めなくても九月を貫いた技だ。おれの攻撃の中では最も貫通力が高い。効くはずだ。少しくらいは効いてもいいはずだ……。
不安と願望を込めた一撃が魔族の心臓部を貫くことはなかった。それどころか一切痛がる素振りを見せない。コイツは防御などしていなかった。能力を発動した訳でもなかった。ただ単純に、おれの攻撃力が足りなかっただけだった。
「いい技だね。格上殺しにはもってこいだ。でも僕にはやっぱり効かなかったね。……確かこんなだったか?」
「『白天』」
「がッ……!?」
ヤツの構えた指先から魔力の光線が放たれた。確かに“白天”だった。真似されたおれの光線は、おれの胸を貫いた。
「くッ……!」
「エスト!!」
胸から溢れる血を抑えようとしたが、口からも血が出てきた。出血が酷い。心臓を貫かれたか……?
全身の血の気が引いていくのが感じられた。だんだんと身体が冷えていく。大地からおれを呼ぶセリアの声も次第に小さくなっていく。
「君はこのくらいじゃ死なないだろ? またね。」
そう言って魔族はおれの首に蹴りを入れた。おれはグラとは反対側に蹴り飛ばされた。今ので首と肩の骨も折れた気がする。
地面に着く寸前、セリアがおれを受け止めてくれたおかげでそれ以上傷が悪化することはなかった。とは言っても傷が塞がるわけではない。口と胸から溢れる血液が体の表面を伝うのを感じ、その感覚が薄れていくのも感じた。
かろうじて残る意識の中、空を覆っていた黒い雲が大量の雷を降らせるのを見た。次の瞬間、空には2つの人影があった。獄現門へ足を踏み入れようとするデスバルトと、もう一つの人影が。
「おっと、これはこれは大物が来たね」
魔族はそう言ってもう一つの人影に向き合った。
子供は何かを喋ると街を見渡した。宙に浮かぶ人影に街の人々は驚いている。あちこちでザワザワと声が上がっていて、一部の冒険者は魔族ではないかと気づいているようだ。
「……分からないな。ネフィル=エスト! この街にいるだろう!!」
おれ……? おれを探しているのか? そう思っていると子供は軽く手をかざし、街の東部、全体の5分の1程度の範囲を吹き飛ばした。まずい。おれが出ないと恐らくこの街全てを破壊するだろう。
だがおれが行って勝てるか……? そしてヤツの攻撃を見て一つ分かったことがある。少ないから魔力を感じにくかったのではない。この一帯がヤツの魔力に覆われているのだ。だから分かりづらかったのだ。
それとエルフの長老の話を思い出した。“近いうちに三界と出会うだろう”という話を。この規格外な魔族はつまり……
「エスト。行っちゃダメよ。多分アイツは三界だから」
「分かってるけど……このままじゃこの街が……!」
「でもダメ! 逃げることを考えないと、出てったところで魔族は人間をみんな殺すでしょうし」
セリアの言っていることは理解できる。もっともなことだ。だが、人が死んでるのをこのまま見過ごせって……?
「落ち着くんだ。私達が行っても無駄死にするだけだからな。なんとか耐えるしかない」
「くそッ……!」
「早く出てきなよ。このまま街を全部破壊しちゃうよ」
そう言って魔族はさらに街の一部を吹き飛ばす。何も出来ないのか……? くそッ…どうすればいい。
街中から悲鳴が聞こえる。その中には子供の声もある。おれが隠れていてはヤツは破壊行為を止めないだろう。おれが行ったところで止めるとは限らないが、少しの時間稼ぎにはなるはずだ。
「おい、エスト!」
イマイチ考えがまとまらないないまま、おれは精霊の力で体を浮かせて魔族に接近した。だがどうする…? 一応“身体強化”は使っているが、これでどれだけ時間を稼げるだろうか。稼いだところでどうするんだ?
「あのバカ、人の気も知らずに!」
そういってグラは竜の姿をとった。彼もまた大きな翼を動かしながら空を飛ぶ。
「おれがエストだ……。お前の言うとおり出てきてやったぞ」
「……お前が……エストか……?」
「そうだっつってんだろ」
「おい、エスト! 貴様勝手に出やがって!」
叫ぶグラに対して“悪い”とだけ伝え、おれは相手を睨みつける。緊張感からか、あるいは恐怖からか、鼓動が激しくなり、それでいて恐ろしく寒く感じられた。生きた心地がしない。コイツの魔力に押しつぶされそうだ。
「君は竜帝グラダルオだね。今君には用がないんだよ。下がっててくれるかな?」
「ぐわッ!?」
「グラ!??」
魔族はハエを払うように空に手を振ると、それと同時にグラの巨体が地面へと墜落した。しかも身体に大きな切り傷を伴って。下にいたフリナがすぐに向かったが、大怪我ではあれど致命傷ではなかったため下級ポーションだけ使っていた。
「……てめェ、何者だ!? なんでおれを探していた!?」
「うん? ああ、自己紹介がまだだったかな? 僕は“我界”カルタリア=デスバルト。三界の本山って言えば分かるかな?」
「本山……だと!?」
三界は序列1位が本山、2位が双角、3位が三番と呼ばれる。つまりコイツは世界最強の魔族という訳だ。……本当にツいてねぇな……。
「君を探してた理由はね、気になったからだよ。ついこの間までは無名だったんでしょ? 有望な奴は見ておきたいからね」
有望……? 何の話だ?
「不思議そうな顔をしてるね。まぁいずれ分かるさ。……ところでその指、いつ撃つんだい?」
「……」
おれが右手で白天を撃とうとしているのがバレた。目一杯に圧縮しるつもりだったので、バレるのは当然なのだが……。
「気づいてて止めねぇのか? 随分と余裕じゃねぇか」
「ははっ。だってその程度じゃ僕には効果がないだろ? そんなちっぽけな魔力、いや、魔素じゃさ」
「そう思うか? なら喰らってみやがれ!」
「『白天』!!」
おれは油断している相手に渾身の一撃をお見舞いした。ここまで溜めなくても九月を貫いた技だ。おれの攻撃の中では最も貫通力が高い。効くはずだ。少しくらいは効いてもいいはずだ……。
不安と願望を込めた一撃が魔族の心臓部を貫くことはなかった。それどころか一切痛がる素振りを見せない。コイツは防御などしていなかった。能力を発動した訳でもなかった。ただ単純に、おれの攻撃力が足りなかっただけだった。
「いい技だね。格上殺しにはもってこいだ。でも僕にはやっぱり効かなかったね。……確かこんなだったか?」
「『白天』」
「がッ……!?」
ヤツの構えた指先から魔力の光線が放たれた。確かに“白天”だった。真似されたおれの光線は、おれの胸を貫いた。
「くッ……!」
「エスト!!」
胸から溢れる血を抑えようとしたが、口からも血が出てきた。出血が酷い。心臓を貫かれたか……?
全身の血の気が引いていくのが感じられた。だんだんと身体が冷えていく。大地からおれを呼ぶセリアの声も次第に小さくなっていく。
「君はこのくらいじゃ死なないだろ? またね。」
そう言って魔族はおれの首に蹴りを入れた。おれはグラとは反対側に蹴り飛ばされた。今ので首と肩の骨も折れた気がする。
地面に着く寸前、セリアがおれを受け止めてくれたおかげでそれ以上傷が悪化することはなかった。とは言っても傷が塞がるわけではない。口と胸から溢れる血液が体の表面を伝うのを感じ、その感覚が薄れていくのも感じた。
かろうじて残る意識の中、空を覆っていた黒い雲が大量の雷を降らせるのを見た。次の瞬間、空には2つの人影があった。獄現門へ足を踏み入れようとするデスバルトと、もう一つの人影が。
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魔族はそう言ってもう一つの人影に向き合った。
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