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第七章 地獄の主
第52話 何を取っても最悪
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気づいたときには燃え盛る大地に立っていた。無限に続く岩の大陸、轟轟と燃える赤い森、グツグツと煮えたぎる溶岩の海。
空気は澱み、呼吸をするだけで肺が焼け、吐き気を催す。重くドス黒い空気が世界を支配している。とても現実とは思えない、悪夢のような世界がそこには広がっていた。だが痛みも熱も感じる。これは夢ではない。
さっきまでおれは……おれはデュールと戦っていたはずだ。……そうだ。アイツが自死の条約でおれを地獄に引き摺り込んだんだ。……つまりここは地獄か……? ………まぁ見るからに地獄だな。
「痛ぇ……。当たり前だけど腕は生えてこねぇか……。……?」
腕が生えてない……? そういえば心臓は動いているし、血は流れている。意識は朦朧としているが、確かに命が存在していた。
おれは死んでいない。死者の世界に来ただけで、おれは生きている。それならばいくらか希望が見えてきた。なんとかこの世界を脱出しなくては……!
「んー? おいおい、不思議な気配がしたと思って来てみたら……お前、エストじゃないか!?」
「お、お前は……バンシュート……か……?」
「覚えていてくれたのか! 友よ!」
いや、友ではないんだがな。だがアイツは確かに殺したはず。だがここにいる、ということはやはりここは地獄だ。おれはそう確信した。
「いやー……お前、死んでしまったか! まだ若いくせに残念だったな! それに地獄にくるなんて、見かけによらずワルなのだな!! ハッハッ!」
「熱ッ……!?」
「……あぁ……おれ死んでないのよ。だからお前らみたいに……死んでるヤツにとっては熱いのかも」
「死んでない……? そんなくだらない冗談も言えるのか」
「いや、冗談じゃないんだよ……。ところでお前………おれに何か用があるのか? ……まさか、やられた仕返しにでも来たか……?」
おれは息を切らしながらそう尋ねた。腕の痛みに加え、ここの異常な環境により、おれはいよいよ倒れそうだった。
正直今ここで、コイツと戦ったら確実に負ける。……弱気なことを考えるが、逃げてはくれないだろうか。今はとにかく、回復しなければならない。
「まさか! 私は負けは潔く認める賢いな男なんだ。むしろお前は私が認めた男。私はお前に協力するさ」
「!?」
思ってもない回答だった。信頼できるという保証はない。だが信頼して問題ないだろう。本能がそう告げていた。
それからおれは、バンシュートからここについての話を聞いた。どうやら地獄と現世は流れている時間が異なるらしい。
現世より早いのか遅いのか、具体的には分からないが、とにかく現世とは違うようだ。まぁ地獄にいる死人は老けることがないので、そもそも時間が流れているかどうかすら分からないようだが、魔族の間では地獄はそういうものだと言われているそうだ。
そして、地獄にふさわしい劣悪な環境に加え、ここにいるのは全員が根っからの悪人であるため、殺し合いが絶えないらしい。だが死人は死ぬことがない。力のない者は無限に殺され続ける、まさに地獄だ。
「で、お前は地獄から出たいと。そんなものは前代未聞だぞ」
「……そもそも生きてるヤツがいること自体……前代未聞だろ」
「まぁそれはそうだがな……。最近は変なことが起こってばかりだ。九月の方達も急に来始めたしな。そんな中で出来るかも分からないことを目指すなんてスマートじゃねぇよ」
「………まぁ……。とりあえずおれは一旦休みたいんだ。……見ての通り重症だからな……。何かあったら起こしてくれるか……?」
「ああ、任せろ」
おれはバンシュートにそう伝えて眠りについた。熱く臭い空気のせいで全く身体を休められている気がしない。
正直セリア達に心配をかけたくないから地獄を出たいというよりも、こんなところに居たくないという気持ちが大きかったかもしれない。それぐらいにここの環境は、何を取っても最悪であった。
おれはこの後どうするべきか。とりあえず魔族を片っ端から潰しながら、情報を集めつつ力をつけるのがいいだろうか……。
空気は澱み、呼吸をするだけで肺が焼け、吐き気を催す。重くドス黒い空気が世界を支配している。とても現実とは思えない、悪夢のような世界がそこには広がっていた。だが痛みも熱も感じる。これは夢ではない。
さっきまでおれは……おれはデュールと戦っていたはずだ。……そうだ。アイツが自死の条約でおれを地獄に引き摺り込んだんだ。……つまりここは地獄か……? ………まぁ見るからに地獄だな。
「痛ぇ……。当たり前だけど腕は生えてこねぇか……。……?」
腕が生えてない……? そういえば心臓は動いているし、血は流れている。意識は朦朧としているが、確かに命が存在していた。
おれは死んでいない。死者の世界に来ただけで、おれは生きている。それならばいくらか希望が見えてきた。なんとかこの世界を脱出しなくては……!
「んー? おいおい、不思議な気配がしたと思って来てみたら……お前、エストじゃないか!?」
「お、お前は……バンシュート……か……?」
「覚えていてくれたのか! 友よ!」
いや、友ではないんだがな。だがアイツは確かに殺したはず。だがここにいる、ということはやはりここは地獄だ。おれはそう確信した。
「いやー……お前、死んでしまったか! まだ若いくせに残念だったな! それに地獄にくるなんて、見かけによらずワルなのだな!! ハッハッ!」
「熱ッ……!?」
「……あぁ……おれ死んでないのよ。だからお前らみたいに……死んでるヤツにとっては熱いのかも」
「死んでない……? そんなくだらない冗談も言えるのか」
「いや、冗談じゃないんだよ……。ところでお前………おれに何か用があるのか? ……まさか、やられた仕返しにでも来たか……?」
おれは息を切らしながらそう尋ねた。腕の痛みに加え、ここの異常な環境により、おれはいよいよ倒れそうだった。
正直今ここで、コイツと戦ったら確実に負ける。……弱気なことを考えるが、逃げてはくれないだろうか。今はとにかく、回復しなければならない。
「まさか! 私は負けは潔く認める賢いな男なんだ。むしろお前は私が認めた男。私はお前に協力するさ」
「!?」
思ってもない回答だった。信頼できるという保証はない。だが信頼して問題ないだろう。本能がそう告げていた。
それからおれは、バンシュートからここについての話を聞いた。どうやら地獄と現世は流れている時間が異なるらしい。
現世より早いのか遅いのか、具体的には分からないが、とにかく現世とは違うようだ。まぁ地獄にいる死人は老けることがないので、そもそも時間が流れているかどうかすら分からないようだが、魔族の間では地獄はそういうものだと言われているそうだ。
そして、地獄にふさわしい劣悪な環境に加え、ここにいるのは全員が根っからの悪人であるため、殺し合いが絶えないらしい。だが死人は死ぬことがない。力のない者は無限に殺され続ける、まさに地獄だ。
「で、お前は地獄から出たいと。そんなものは前代未聞だぞ」
「……そもそも生きてるヤツがいること自体……前代未聞だろ」
「まぁそれはそうだがな……。最近は変なことが起こってばかりだ。九月の方達も急に来始めたしな。そんな中で出来るかも分からないことを目指すなんてスマートじゃねぇよ」
「………まぁ……。とりあえずおれは一旦休みたいんだ。……見ての通り重症だからな……。何かあったら起こしてくれるか……?」
「ああ、任せろ」
おれはバンシュートにそう伝えて眠りについた。熱く臭い空気のせいで全く身体を休められている気がしない。
正直セリア達に心配をかけたくないから地獄を出たいというよりも、こんなところに居たくないという気持ちが大きかったかもしれない。それぐらいにここの環境は、何を取っても最悪であった。
おれはこの後どうするべきか。とりあえず魔族を片っ端から潰しながら、情報を集めつつ力をつけるのがいいだろうか……。
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