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第七章 地獄の主
番外編 謎の男
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これは、エストとセリアが出会ったほんの少しだけ前、いや、ほとんど同じときの出来事である。
とある山に、アリスと名乗る男が住んでいた。その男は昔から、この山に一人で暮らしていた。だがどれほど昔からいるのか、それを知る者は彼自身を除いて誰一人といなかった。
“昔から”と言ったが、彼は見るからに青年であった。容姿で言えば二十歳くらい、白い長髪を後ろで結んだ青年だ。耳には綺麗なイヤリングを付けており、身長は170センチ程度、山の魔物などを狩っているようだがこれといって覇気は感じない、そんな男であった。
その日、男は山の魔物を片付けつつ、散策をしていた。そんな中、山の裏側から異様な気配を感じ、大急ぎでその場へ向かった。
本来であれば駆けつけるまで時間が掛かる距離であったが、彼は音を超える速さで山の中を駆け抜けたため一瞬でその地点に着いた。
「……久しぶりに魔界から出てきたな……。……さて……楽しみだぜ……!」
山裏に現れたのは1体の魔族であった。しかもそれは九月の四番、つまり三界を除けば魔族最強の男が現れたのだ。彼が現れて膨大な魔力に大地は震えた。
ただし、それはアリスがそこに到着するまでのほんの一瞬の間であり、魔族の出現に気づいた者は一部を除いていなかった。
「始めるか……『大地の……』……!な、なんだ……!? 俺の魔力が……!?」
「『解放の束縛』……。お前の術は封じさせてもらうが……何だお前?」
「……貴様こそ何者だ……!? なぜ俺の魔力が無くなったんだ……!!」
「お前の魔力は俺が散らしたんだ。魔族が人の世界に来てんじゃねぇよ。で、何者だ?質問を質問で返すんじゃねぇ」
「………俺は九月……四番だ……」
「? ……ああ、そうか。そういうことだったのか……」
「……? だから貴様は何なん——」
言い終わる直前、魔族の身体は白い光に包まれ、塵一つ残さず消滅した。それはあまりにも一瞬の出来事で、それはつまり2人の間には途方もなく大きな実力差があったということだ。
「いや、まさか魔族がいたなんてな……。……まぁ今考えてみればむしろいない方が不自然か。……ってなると今日はちょっと危険かもな……」
アリスはブツブツとそんなことを言いながら山を下っていった。過去の経験と現在に違和感を覚えたようだが、何かに納得したようだ。
その後、アリスは街へ向かい、宿と料理屋を兼ねている店へ来た。
「おーい! おっさん! 店やってる?」
「……おっ!? お前! アリスか!? 久しぶりだなぁー!」
「なんか飯作ってくれよ。久しぶりにさ。」
「おう! 任せろ!」
おっさんと呼ばれている店主が肉を焼いてアリスに提供した。アリスそれを旨い旨いと言いながら頬張る。2人は知り合いのようだ。頻繁に会うという訳ではないようだが、たまに街に来ては顔を出す、そのような仲らしい。
「あれ!? アリスお兄ちゃんじゃない!?」
「ん? おぉー! お前大きくなったな! 前会ったときは子供だったくせに!」
「前って……5年くらい前じゃない? そりゃ大きくなるわよ」
奥から出てきたのは店主の娘であった。彼女ともアリスは仲が良く、ご飯を食べ終わるまでの間、あーだこーだと絶え間なく会話をしていた。ギルドの方がうるさいな、どうせ冒険者が騒いでんでしょ、とか中身のない話を延々としていた。
「じゃあ俺帰るから、またな」
「たまには泊まってけよ。どうせ山に帰るだけなんだろ?」
「そうよ。また何年も来てくれないんでしょ?」
「うーん……。今日だけはちょっとダメだな。でもまた来るって約束するから」
「何で今日はダメなのよ」
「会いたくない人がいるって言えばいいかな。でもすぐに会えるから」
娘は納得していないような顔をしていたが、引き止めるのも悪いと思い、それ以上は何も言わなかった。
アリスは彼女の頭をポンポンと撫でてあやすようにし、店を後にした。そして、山奥にある家に帰っていった。
とある山に、アリスと名乗る男が住んでいた。その男は昔から、この山に一人で暮らしていた。だがどれほど昔からいるのか、それを知る者は彼自身を除いて誰一人といなかった。
“昔から”と言ったが、彼は見るからに青年であった。容姿で言えば二十歳くらい、白い長髪を後ろで結んだ青年だ。耳には綺麗なイヤリングを付けており、身長は170センチ程度、山の魔物などを狩っているようだがこれといって覇気は感じない、そんな男であった。
その日、男は山の魔物を片付けつつ、散策をしていた。そんな中、山の裏側から異様な気配を感じ、大急ぎでその場へ向かった。
本来であれば駆けつけるまで時間が掛かる距離であったが、彼は音を超える速さで山の中を駆け抜けたため一瞬でその地点に着いた。
「……久しぶりに魔界から出てきたな……。……さて……楽しみだぜ……!」
山裏に現れたのは1体の魔族であった。しかもそれは九月の四番、つまり三界を除けば魔族最強の男が現れたのだ。彼が現れて膨大な魔力に大地は震えた。
ただし、それはアリスがそこに到着するまでのほんの一瞬の間であり、魔族の出現に気づいた者は一部を除いていなかった。
「始めるか……『大地の……』……!な、なんだ……!? 俺の魔力が……!?」
「『解放の束縛』……。お前の術は封じさせてもらうが……何だお前?」
「……貴様こそ何者だ……!? なぜ俺の魔力が無くなったんだ……!!」
「お前の魔力は俺が散らしたんだ。魔族が人の世界に来てんじゃねぇよ。で、何者だ?質問を質問で返すんじゃねぇ」
「………俺は九月……四番だ……」
「? ……ああ、そうか。そういうことだったのか……」
「……? だから貴様は何なん——」
言い終わる直前、魔族の身体は白い光に包まれ、塵一つ残さず消滅した。それはあまりにも一瞬の出来事で、それはつまり2人の間には途方もなく大きな実力差があったということだ。
「いや、まさか魔族がいたなんてな……。……まぁ今考えてみればむしろいない方が不自然か。……ってなると今日はちょっと危険かもな……」
アリスはブツブツとそんなことを言いながら山を下っていった。過去の経験と現在に違和感を覚えたようだが、何かに納得したようだ。
その後、アリスは街へ向かい、宿と料理屋を兼ねている店へ来た。
「おーい! おっさん! 店やってる?」
「……おっ!? お前! アリスか!? 久しぶりだなぁー!」
「なんか飯作ってくれよ。久しぶりにさ。」
「おう! 任せろ!」
おっさんと呼ばれている店主が肉を焼いてアリスに提供した。アリスそれを旨い旨いと言いながら頬張る。2人は知り合いのようだ。頻繁に会うという訳ではないようだが、たまに街に来ては顔を出す、そのような仲らしい。
「あれ!? アリスお兄ちゃんじゃない!?」
「ん? おぉー! お前大きくなったな! 前会ったときは子供だったくせに!」
「前って……5年くらい前じゃない? そりゃ大きくなるわよ」
奥から出てきたのは店主の娘であった。彼女ともアリスは仲が良く、ご飯を食べ終わるまでの間、あーだこーだと絶え間なく会話をしていた。ギルドの方がうるさいな、どうせ冒険者が騒いでんでしょ、とか中身のない話を延々としていた。
「じゃあ俺帰るから、またな」
「たまには泊まってけよ。どうせ山に帰るだけなんだろ?」
「そうよ。また何年も来てくれないんでしょ?」
「うーん……。今日だけはちょっとダメだな。でもまた来るって約束するから」
「何で今日はダメなのよ」
「会いたくない人がいるって言えばいいかな。でもすぐに会えるから」
娘は納得していないような顔をしていたが、引き止めるのも悪いと思い、それ以上は何も言わなかった。
アリスは彼女の頭をポンポンと撫でてあやすようにし、店を後にした。そして、山奥にある家に帰っていった。
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