58 / 100
第八章 復活
第55話 追っ手再び
しおりを挟む
おれはドーランに手錠をかけられ、街の外れにある小さな要塞に連れてこられた。どうやらドーランの運営するクラン“鉄壁”のこの街の支部だそうだ。
おれは取り調べ室のようなところに入れられ、ドーランとイリアの2人と向き合って座った。イリアは追い返されそうだったが、あーだこーだと理由をつけて付いてきていた。
「さぁ、まずお前が何者なのか聞かせろ」
「おれ? ……おれはエストだ。ネフィル=エスト。聞いたことあるか?」
「…………なんだって? もう一回言え」
不思議そうな顔をしてそう聞き返された。聞き取れなかったのか? この距離で?
「ネフィル=エストだって」
「おいおい、テメェそんな名前名乗ってたら“炎の姫様”に焼かれちまうぞ」
「炎の姫様? なんだそれ」
「それも知らねーのか? “煌焔”のクランマスターのことだ。アイツは3年前に死んだ男をまだ探してるからな」
……あ、セリアのことか! 法帝にもしっかり認知されるくらいに強くなったんだな。久しぶりにセリアの話を聞けて、話というほど大したことではないのだが、おれはなんだか嬉しかった。
「…………お前、まさかとは思ったんだが……もしかして邪教の本拠地を殲滅したのはお前か?」
おれは少しの間考えた。……が、別に彼らには隠す必要もないか。
「ああ、そうだ」
「つまり……いや、まさか……そんなことがあるのか……?」
「どーした?」
ドーランは何やらブツブツと喋っていた。何かを考えているようだ。
「イリア、貴様少しこっちに来い」
「?」
イリアはドーランに呼ばれ部屋の外へ出ていった。おれは一人部屋に取り残されたのだが……正直待っているのもなんだし……脱走するか。
おれが今かけられている手錠は魔力や魔素を分解するもののようだが……魔素を封じられてもこれを壊すくらいはどうということはなかった。
おれは手錠を壊して外し、部屋の扉とは反対側に手をかざして魔素を集めた。そして無理やりに空間を歪ませてこの地点と別の地点を繋げた。と言っても、一般的な空間魔法とは違って極めて近距離しか繋げられない。
まぁここを出るには充分だが。おれは空間を跨いで要塞を出た。
「何だ!? ……!? 部屋が揺れたと思ったら……。グランデュースに伝言をしようかと思ったってのに。……あ、おい! イリア! お前の連れが迎えにきたぞ!」
「イリアさん! 何勝手に暴れてるんですか!」
「……いや……あの……」
「言い訳は結構ですから。まったく……勝手にどっか行っちゃうんだから。……ドーランさん、ご迷惑おかけしました。行きますよ! …………あれ? イリアさん、腰につけてた金袋どこやったんです?」
「あ? ……はッ? なんでだ? さっきまであっただろ!? …………くそッ! アイツだ! 絶対アイツだ!」
「あっ! ちょっと!!」
金袋が無くなっていたのに気づいたイリアは要塞の外へ駆け出した。
***
おれは街を出るために馬車に乗った。セリア達は中央大陸のヘルダルムに拠点を構えているはずだ。
昔、と言っても現世では3年前であるが、セリアがヘルダルムにクランの拠点を創ると言っていた。……確か。
「それにしてもお客さん、白金貨なんて貰っていいのかい? あんたの目的地のヘルダルムまでは行けねえのに」
「ああ、良いんだ。臨時収入だからな。ちょっとしたお礼だよ」
おれはイリアから拝借しておいたお金を渡していた。拝借と言っても、もちろん無断でだが。
「そうかい。まぁそれならありがたく貰っておくよ」
御者さんから聞いたところによると、ここは北大陸らしい。とは言っても、その南端なのですぐに中央大陸には入るようだが。
そしてやはりヘルダルムには“煌焔”の本拠地があるらしい。セリアとグラは新たに法帝となり、法帝が6人から8人へと変わったようだ。
「————!!」
「?」
遠くから声が聞こえた気がした。人を呼ぶような叫び声が。
「———て! テメェ! 待ちやがれ!!」
「またお前か!!」
後ろから聞こえていた声はいつの間にか隣へ、そして頭上へと動いていった。声の主はイリアであった。走って追いかけてきたのか。
……おれは魔力がないから追えないと思ったけど……運がいいやつだな。イリアは上から馬車に乗ってこようとしたので、彼女が着地する前に足を掴んで外へ放り投げた。
「御者のおっさん! ありがとう! もういいから帰っててくれ!」
おれはおっさんにそう言って外に出てイリアを追った。おっさんは、いいのかい? と聞いてきたが、巻き込むと悪いのでさっさと帰ってもらった。まったく……コイツはおれの邪魔ばかりするな。
「なんなんだお前は!! そんなにおれが怪しいか!?」
「んなこたァどうでもいいけどな! テメェ俺の金取っただろ!!」
「金? いいだろそれぐらいよ。大体お前が料理屋の壁壊したのはおれが弁償したんだし。……それにお前……おれの久しぶりの飯もメチャクチャにしやがったしよぉ……!」
数十年ぶりに食った野菜だったのに……! あの感動を返してほしいものだ。
「え……いや……それは悪かったよ……そんな落ち込むなって」
「くそぉ……お前がそんなに戦りてぇなら相手してやるよ。ちょっとくらい怪我しても文句言うなよ」
おれは取り調べ室のようなところに入れられ、ドーランとイリアの2人と向き合って座った。イリアは追い返されそうだったが、あーだこーだと理由をつけて付いてきていた。
「さぁ、まずお前が何者なのか聞かせろ」
「おれ? ……おれはエストだ。ネフィル=エスト。聞いたことあるか?」
「…………なんだって? もう一回言え」
不思議そうな顔をしてそう聞き返された。聞き取れなかったのか? この距離で?
「ネフィル=エストだって」
「おいおい、テメェそんな名前名乗ってたら“炎の姫様”に焼かれちまうぞ」
「炎の姫様? なんだそれ」
「それも知らねーのか? “煌焔”のクランマスターのことだ。アイツは3年前に死んだ男をまだ探してるからな」
……あ、セリアのことか! 法帝にもしっかり認知されるくらいに強くなったんだな。久しぶりにセリアの話を聞けて、話というほど大したことではないのだが、おれはなんだか嬉しかった。
「…………お前、まさかとは思ったんだが……もしかして邪教の本拠地を殲滅したのはお前か?」
おれは少しの間考えた。……が、別に彼らには隠す必要もないか。
「ああ、そうだ」
「つまり……いや、まさか……そんなことがあるのか……?」
「どーした?」
ドーランは何やらブツブツと喋っていた。何かを考えているようだ。
「イリア、貴様少しこっちに来い」
「?」
イリアはドーランに呼ばれ部屋の外へ出ていった。おれは一人部屋に取り残されたのだが……正直待っているのもなんだし……脱走するか。
おれが今かけられている手錠は魔力や魔素を分解するもののようだが……魔素を封じられてもこれを壊すくらいはどうということはなかった。
おれは手錠を壊して外し、部屋の扉とは反対側に手をかざして魔素を集めた。そして無理やりに空間を歪ませてこの地点と別の地点を繋げた。と言っても、一般的な空間魔法とは違って極めて近距離しか繋げられない。
まぁここを出るには充分だが。おれは空間を跨いで要塞を出た。
「何だ!? ……!? 部屋が揺れたと思ったら……。グランデュースに伝言をしようかと思ったってのに。……あ、おい! イリア! お前の連れが迎えにきたぞ!」
「イリアさん! 何勝手に暴れてるんですか!」
「……いや……あの……」
「言い訳は結構ですから。まったく……勝手にどっか行っちゃうんだから。……ドーランさん、ご迷惑おかけしました。行きますよ! …………あれ? イリアさん、腰につけてた金袋どこやったんです?」
「あ? ……はッ? なんでだ? さっきまであっただろ!? …………くそッ! アイツだ! 絶対アイツだ!」
「あっ! ちょっと!!」
金袋が無くなっていたのに気づいたイリアは要塞の外へ駆け出した。
***
おれは街を出るために馬車に乗った。セリア達は中央大陸のヘルダルムに拠点を構えているはずだ。
昔、と言っても現世では3年前であるが、セリアがヘルダルムにクランの拠点を創ると言っていた。……確か。
「それにしてもお客さん、白金貨なんて貰っていいのかい? あんたの目的地のヘルダルムまでは行けねえのに」
「ああ、良いんだ。臨時収入だからな。ちょっとしたお礼だよ」
おれはイリアから拝借しておいたお金を渡していた。拝借と言っても、もちろん無断でだが。
「そうかい。まぁそれならありがたく貰っておくよ」
御者さんから聞いたところによると、ここは北大陸らしい。とは言っても、その南端なのですぐに中央大陸には入るようだが。
そしてやはりヘルダルムには“煌焔”の本拠地があるらしい。セリアとグラは新たに法帝となり、法帝が6人から8人へと変わったようだ。
「————!!」
「?」
遠くから声が聞こえた気がした。人を呼ぶような叫び声が。
「———て! テメェ! 待ちやがれ!!」
「またお前か!!」
後ろから聞こえていた声はいつの間にか隣へ、そして頭上へと動いていった。声の主はイリアであった。走って追いかけてきたのか。
……おれは魔力がないから追えないと思ったけど……運がいいやつだな。イリアは上から馬車に乗ってこようとしたので、彼女が着地する前に足を掴んで外へ放り投げた。
「御者のおっさん! ありがとう! もういいから帰っててくれ!」
おれはおっさんにそう言って外に出てイリアを追った。おっさんは、いいのかい? と聞いてきたが、巻き込むと悪いのでさっさと帰ってもらった。まったく……コイツはおれの邪魔ばかりするな。
「なんなんだお前は!! そんなにおれが怪しいか!?」
「んなこたァどうでもいいけどな! テメェ俺の金取っただろ!!」
「金? いいだろそれぐらいよ。大体お前が料理屋の壁壊したのはおれが弁償したんだし。……それにお前……おれの久しぶりの飯もメチャクチャにしやがったしよぉ……!」
数十年ぶりに食った野菜だったのに……! あの感動を返してほしいものだ。
「え……いや……それは悪かったよ……そんな落ち込むなって」
「くそぉ……お前がそんなに戦りてぇなら相手してやるよ。ちょっとくらい怪我しても文句言うなよ」
10
あなたにおすすめの小説
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
竜皇女と呼ばれた娘
Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた
ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる
その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ
国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる