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第八章 復活
第58話 人生最大級の幸せ
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「いやぁ……旨いなぁ……現世の飯は最高だよ……」
「そう? それは良かったわ」
おれ達はギルドから少し歩いたところにある料理屋に来ていた。おれはサラダとステーキを頼んだ。
奢ってもらうのは悪い気がしたが、セリアはおれ達のリーダーだし、おれは金がもうないので大人しく奢ってもらうことにした。ちゃんと収入があったらお礼させてもらおう。
「そういえばエストさ。その右腕はどうしたの? 地獄にいたら生えてきたとか?」
「まさか。これはね……魔素をこう……ギュッとしてつくったんだよ。魔物だって元々濃度の高い魔素だろ? その要領で」
おれは失った右腕の代わりの義腕について軽く説明した。地獄で色々試しているうちに魔素のコントロール技術が向上したおかげで魔素を物質化できるようになったのだ。
まぁそうするのに時間が掛かるから技などに応用するのは難しいが……。今は黒い腕だが、もっと練度が上がれば本物の皮膚のようなものも作れるだろう。せっかくなら本物っぽい方がいいからな。
「ここにいたんですね。セルセリアちゃん」
「?」
「! ミーランさんじゃない! どうしたの?」
座っている後ろからセリアを呼ぶ女の声がした。ミーランさん? とか言ったか。知らない顔だが、一つ分かることは、この人は強い。多分イリアと同じくらい、恐らく八法帝のうちの1人だろう。
“ここにいた”ってのは探してたってことだよな。……煌焔の本部からは遠いのに? そんな疑問を顔にしていると、セリアは疑問に答えてくれた。
「ああ、彼女ね、ユーリア=ミーランさんよ。八法帝の1人で、能力の他に強力な風魔法を使えるの」
「風の声を聞いて来たんです。さっきはイリアちゃんと一緒にいましたよね? 結構暴れてたみたいですけど」
「私の連れがね。ちょっと揉めてたみたいで。ところで私を探してたんでしょ? 何かあったの?」
セリアは軽く説明をして肝心な質問をした。確かに何かあったのか? 法帝がわざわざ伝えに来るなんてのは割と珍しいことな気がするが。
おれは2人のやり取りを気にしながら飯をパクパクと食べ進めた。
「ヘルダルムに連絡したけどあなたが居なかったからグラダルオ君には伝えたのですけど。一月後、つまり氷の月の12の夜にバンリューと八法帝で会議を行うことになりました」
「会議? ……もしかして……」
「ええ。3年前に我界が宣言した魔族の大侵攻、人間の住む土地で迎え撃つのはリスクが高いから、奴らが動く前に私達が魔界へと奇襲することになったのです。もっとも相手はすぐに気づくでしょうけど」
「………まぁ、確かに。地の利はあっちにあっても人を守りながらだともっと戦いづらいものね。でもそんな少人数で行くわけではないんでしょ?」
「もちろんです。Sランクの冒険者や各国の騎士団も参加させますが、会議は私達と……まぁ一部の力のある方達が参加します。東大陸のラライアで」
「分かったわ。わざわざありがとうね」
セリアとミーランの話を聞いていたが、おれにはとりあえず関係なさそうだ。奇襲、というより戦争になるだろうが、それにはおれも参加させてもらうが。
……今のおれは三界相手にどれくらい戦えるのだろうか。時間がないから今戦える実力はないと話にならないのだが……なんとかバンリューに会って手合わせしてもらうか。
弱気というよりはただ単に今のおれがどれくらい強くなったのかを確認しておきたい。
「ところでセルセリアちゃん。そちらの方は? さっきの話からするとあなたの連れですよね?」
「おれ? おれはエストだ。……うん」
なんて言おうか。おれはおれだと、それ以上の説明は出来ないな。でもこんなんじゃ説明とも言えないし……。
「彼はうちの大団長よ。ご存知でしょ? 煌焔のNo.2」
セリアは得意げにそう言った。……おれってそんな立場の人間なの? つい今までおれがいなかったんだからグラやフリナに任せておけば良かったろうに。でもおれが帰ってくるのを信じてくれていたという訳だから、なんだか嬉しくもある。
「セルセリアちゃんがいつも言ってたエスト君ってことですか!? 生きてたんですね! 本当に良かったですね!!」
「ふふっ。そんなにいつも言ってたかしら?」
「その話しか聞きませんでしたよ。一途だったじゃないですか」
「ちょッ! ちょっと! 恥ずかしいからあんまり言わないでよ!」
そうか。セリアはいつでもおれの心配をしてくれていたんだな。うん。やっぱり嬉しいな。
「まだ他の人には言わないでよ。グラ達にサプライズするんだから。その後うちから新聞出すし」
「分かりました。じゃあ私からはそれだけなので……後は楽しんでくださいね。若者同士」
そう言ってミーランは店を出て行った。若者って言ったけどあの人も若いんじゃないのか? ……いや、あまり深く考えるべきではないな。下手なことを言ったら消されるかもしれないし。
「食い終わったし……出発するか? セリア。歩いてったら時間かかるだろ?」
「いや、今日はこの街で過ごしましょう。エストも疲れた顔してるし。地獄じゃ休めなかったでしょ?久しぶりだから明日は朝遅くても怒らないわよ」
「いいのか?」
「もちろんよ。エストがちゃんと休んで楽になってもらった方が私も嬉しいから」
「……そうか。ありがとう」
おれ達はそう話をして料理屋を出た。そして近くの宿に向かう。まだ日は沈んでいないが、確かにおれは疲れがどっと溜まっていた。
現世に戻った安心感と今日起こったことが原因か……いや、単純に地獄ではまともに休めることが無かったからそのせいか。あそこは寝ても悪夢しか見ないような環境だからな。
おれは久しぶりにフカフカのベッドに飛びかかった。ああ……幸せだ。現世に戻れた、セリアに会えた、まともな飯も食えたしまともな睡眠も取れる。本来なら普通かもしれないが、多分、今以上に幸せを実感することもないだろう。
なんか……部屋に1人になってから込み上げてくるものがあった。本当に幸せだ。おれは隠す相手もいない涙を隠しながら深い眠りについた。
「そう? それは良かったわ」
おれ達はギルドから少し歩いたところにある料理屋に来ていた。おれはサラダとステーキを頼んだ。
奢ってもらうのは悪い気がしたが、セリアはおれ達のリーダーだし、おれは金がもうないので大人しく奢ってもらうことにした。ちゃんと収入があったらお礼させてもらおう。
「そういえばエストさ。その右腕はどうしたの? 地獄にいたら生えてきたとか?」
「まさか。これはね……魔素をこう……ギュッとしてつくったんだよ。魔物だって元々濃度の高い魔素だろ? その要領で」
おれは失った右腕の代わりの義腕について軽く説明した。地獄で色々試しているうちに魔素のコントロール技術が向上したおかげで魔素を物質化できるようになったのだ。
まぁそうするのに時間が掛かるから技などに応用するのは難しいが……。今は黒い腕だが、もっと練度が上がれば本物の皮膚のようなものも作れるだろう。せっかくなら本物っぽい方がいいからな。
「ここにいたんですね。セルセリアちゃん」
「?」
「! ミーランさんじゃない! どうしたの?」
座っている後ろからセリアを呼ぶ女の声がした。ミーランさん? とか言ったか。知らない顔だが、一つ分かることは、この人は強い。多分イリアと同じくらい、恐らく八法帝のうちの1人だろう。
“ここにいた”ってのは探してたってことだよな。……煌焔の本部からは遠いのに? そんな疑問を顔にしていると、セリアは疑問に答えてくれた。
「ああ、彼女ね、ユーリア=ミーランさんよ。八法帝の1人で、能力の他に強力な風魔法を使えるの」
「風の声を聞いて来たんです。さっきはイリアちゃんと一緒にいましたよね? 結構暴れてたみたいですけど」
「私の連れがね。ちょっと揉めてたみたいで。ところで私を探してたんでしょ? 何かあったの?」
セリアは軽く説明をして肝心な質問をした。確かに何かあったのか? 法帝がわざわざ伝えに来るなんてのは割と珍しいことな気がするが。
おれは2人のやり取りを気にしながら飯をパクパクと食べ進めた。
「ヘルダルムに連絡したけどあなたが居なかったからグラダルオ君には伝えたのですけど。一月後、つまり氷の月の12の夜にバンリューと八法帝で会議を行うことになりました」
「会議? ……もしかして……」
「ええ。3年前に我界が宣言した魔族の大侵攻、人間の住む土地で迎え撃つのはリスクが高いから、奴らが動く前に私達が魔界へと奇襲することになったのです。もっとも相手はすぐに気づくでしょうけど」
「………まぁ、確かに。地の利はあっちにあっても人を守りながらだともっと戦いづらいものね。でもそんな少人数で行くわけではないんでしょ?」
「もちろんです。Sランクの冒険者や各国の騎士団も参加させますが、会議は私達と……まぁ一部の力のある方達が参加します。東大陸のラライアで」
「分かったわ。わざわざありがとうね」
セリアとミーランの話を聞いていたが、おれにはとりあえず関係なさそうだ。奇襲、というより戦争になるだろうが、それにはおれも参加させてもらうが。
……今のおれは三界相手にどれくらい戦えるのだろうか。時間がないから今戦える実力はないと話にならないのだが……なんとかバンリューに会って手合わせしてもらうか。
弱気というよりはただ単に今のおれがどれくらい強くなったのかを確認しておきたい。
「ところでセルセリアちゃん。そちらの方は? さっきの話からするとあなたの連れですよね?」
「おれ? おれはエストだ。……うん」
なんて言おうか。おれはおれだと、それ以上の説明は出来ないな。でもこんなんじゃ説明とも言えないし……。
「彼はうちの大団長よ。ご存知でしょ? 煌焔のNo.2」
セリアは得意げにそう言った。……おれってそんな立場の人間なの? つい今までおれがいなかったんだからグラやフリナに任せておけば良かったろうに。でもおれが帰ってくるのを信じてくれていたという訳だから、なんだか嬉しくもある。
「セルセリアちゃんがいつも言ってたエスト君ってことですか!? 生きてたんですね! 本当に良かったですね!!」
「ふふっ。そんなにいつも言ってたかしら?」
「その話しか聞きませんでしたよ。一途だったじゃないですか」
「ちょッ! ちょっと! 恥ずかしいからあんまり言わないでよ!」
そうか。セリアはいつでもおれの心配をしてくれていたんだな。うん。やっぱり嬉しいな。
「まだ他の人には言わないでよ。グラ達にサプライズするんだから。その後うちから新聞出すし」
「分かりました。じゃあ私からはそれだけなので……後は楽しんでくださいね。若者同士」
そう言ってミーランは店を出て行った。若者って言ったけどあの人も若いんじゃないのか? ……いや、あまり深く考えるべきではないな。下手なことを言ったら消されるかもしれないし。
「食い終わったし……出発するか? セリア。歩いてったら時間かかるだろ?」
「いや、今日はこの街で過ごしましょう。エストも疲れた顔してるし。地獄じゃ休めなかったでしょ?久しぶりだから明日は朝遅くても怒らないわよ」
「いいのか?」
「もちろんよ。エストがちゃんと休んで楽になってもらった方が私も嬉しいから」
「……そうか。ありがとう」
おれ達はそう話をして料理屋を出た。そして近くの宿に向かう。まだ日は沈んでいないが、確かにおれは疲れがどっと溜まっていた。
現世に戻った安心感と今日起こったことが原因か……いや、単純に地獄ではまともに休めることが無かったからそのせいか。あそこは寝ても悪夢しか見ないような環境だからな。
おれは久しぶりにフカフカのベッドに飛びかかった。ああ……幸せだ。現世に戻れた、セリアに会えた、まともな飯も食えたしまともな睡眠も取れる。本来なら普通かもしれないが、多分、今以上に幸せを実感することもないだろう。
なんか……部屋に1人になってから込み上げてくるものがあった。本当に幸せだ。おれは隠す相手もいない涙を隠しながら深い眠りについた。
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