77 / 100
第十一章 作戦会議
第74話 穿
しおりを挟む
「行きますよ。『空間を司る者』」
「うおッ! いきなりか」
リンシャさんは空間収納から細剣を取り出して構えると、最初から昇華した能力を発動した。
この前見たセリアとは違い、姿は変わっていない。だが雰囲気というかなんというか……魔力の色? が変わっている。ついさっきまでの水のような澄んだ魔力が、轟々と唸る竜巻のような魔力に変化していた。
これを見ると確かに……八法帝最強を名乗るのも納得だ。……っつーかこれを……法帝の枠を超えるバンリューはどれだけ異常な強さをしてるんだ。
とは言え、ビビるほどではない。
「これは……おれも最高の力で相手しないとな。大聖堂が保つかどうか……。まぁいいか」
「『圧縮身体強化』」
「……! 凄いですね……。魔力が無いからどのように戦うのかと思っていたのですが……確かに法帝に匹敵……いや、もしかしたらそれ以上かも……」
圧縮した魔素を身体中に纏い、流す強化術。魔素自体が強化されているようなものだから身体能力、肉体強度、技の破壊力などがグンと跳ね上がる。
それはまるで鋼鉄の血液が流れているような状態であるため、3年前、つまり地獄に堕ちる前は身体中が痛みまともに使えるものではなかった。地獄で何十年、鍛えに鍛え抜いた今では硬質な液体が流れている感覚で、デメリットを完全に克服している。当然多少の負荷はあるし疲れもするけれど。
「ふんッ!」
「!?」
おれは拳を振って衝撃波を飛ばした。牽制というか、開始の合図というか……まぁその程度のものだ。当然、威力が“その程度”という訳で、技はそれなりに高度なものであるが。
リンシャさんは剣で衝撃を弾き防いだ。いや、剣で弾いたのではなさそうだな。たぶん空間を歪ませて軌道を逸らしたのだ。ほんの一瞬、1秒にも満たない時間で空間が歪むとは……流石だな。
「すごいですね。……では私も……!」
「うおッ!!」
リンシャさんは細い剣を目にも止まらぬ速度で振った。異様な速度だ。これも空間を歪ませて無理やり加速したのだろう。それに加えて体も転移して移動を早くしている。
急に目の前に現れるので普通にしていては後手になる。おれは上体を後ろに逸らし回避した。おれは五感も常人に比べて強力だからなんとかなったが……少し遅れていたら喰らっていたな。
「エストの小僧強くなってんな。本当に」
「正面衝突したら儂も負けそうじゃな。……地獄で何年分過ごしたって言ってた?」
「時計も無いし厳密には分からないらしいけど50年は確実だって言ってたわ」
「そうか。小僧は地獄に引き摺り込まれたんだったな。どんなとこなんだ?」
「暑いし臭いし大変だって言ってたけど、何より飲み物が酷いんですって。水が無いから血を吸ってたって」
「は……? それはなんと言うか……気の毒だな。そりゃあ強くなるわ。精神的にも」
向こうでガルヴァンさんとセリア、グラが何かを話しているな。おれはずっとリンシャさんの剣を捌いていた。
そもそも反撃が難しいのと、女子に対しては攻撃が躊躇われるのが……いや、本気の相手には失礼なのだが。………とにかく速い。たぶんセリアよりも。攻撃は重い訳ではないのが救いだな。
おれも速さにはそこそこ自信があったが、どれだけ速く動けても瞬間移動は出来ない。多少の差であっても、それだけで圧倒的な優位を取られていた。軸を……さっきガルヴァンさんを相手にしていたときのように軸を意識するんだ。軸を逸らして隙を突く。
「後手に回っていては……何も出来ませんよ!」
「……! よく言うぜ……! 先手を取らせるつもりもねぇくせに!」
「『百花繚乱』!」
「……ッ!」
半径5メートルほどを無数の爆発で覆った。速いなら範囲攻撃をすればいい。雑だし単純な戦法だが、それなりに有効だ。当然、2度目は回避されるだろうが。だがこの一瞬、ほんの一瞬の隙で充分反撃が出来る。
「『散沙華』!」
「くッ……!」
両手を合わせて広げ、そこから極小に圧縮した魔素を放出し続けた。流石に威力は抑えてあるが、散弾銃のようなものだ。………抑える必要もなかったかもな。
「ふぅ……。なるほど……体術だけかと思っていたら……凄い技ですね……。流石です!」
リンシャさんは全てを剣で弾いたり、空間を歪ませて逸らしたりして防いでいた。やっぱり精密だ。適当な技では効果がないかな。となるとやはり……。
「速度が要るな。やっぱり相手のスタイルに対応した戦術も大事か……。よしッ!」
「『圧縮身体強化・穿』!」
おれは身体の内側の強化に集中した。骨格と関節を強化することで、少しではあるが速度が上がる身体強化だ。その分攻撃力と防御力は下がるものの……まぁ攻撃力少し下がったくらいなら問題ないか。
「わッ!」
今度はリンシャさんが動く前におれが乱打した。一応リンシャさんが受けやすいように打ってはいるが、割と簡単に受け流しているな。でも……うん。
なかなかどうしていい感じだ。イメージに先行して身体が動いている。リンシャさんが反撃のために剣を振り始めたが、それも簡単に相殺できるくらいの速度が出せた。
おれの背後に瞬間移動しても、すぐに反応して後ろに拳を振れる。これが三界相手にどれくらい通用するだろうか……。
「ふふっ……いいですね……! 本気でやらないと貴方には剣が届きそうもありません。失礼ながら、一撃……撃ち合って頂けますか?」
そう言ってリンシャさんは姿勢を低くし、重心を後ろに置きながら剣先をおれに向けた。魔力が唸り鳴っている。
「やる気満々じゃねぇか。……当然!」
「『圧縮身体強化・砕』!」
おれは冷や汗を垂らしながらもそう答え、構えを取った。今度は魔素の爆発力をより強化する。血中を魔素が爆発しながら流れ、手に触れるだけでもそれなりの衝撃が生まれるはずだ。おれとリンシャさんは同時に、瞬間的に距離を詰め、拳と剣を突き出した。
「『断世穿剣』!!」
「『魔天爆』!」
リンシャさんの剣は文字通り空を切り裂いて進み、さらにその隙間に入り込むかのようにして加速していく。
おれは魔素の衝突で発生した炎を纏った拳を力強く突き出す。まさに一瞬、ほんの一瞬の間に、2つの技がぶつかろうとした。
「うおッ! いきなりか」
リンシャさんは空間収納から細剣を取り出して構えると、最初から昇華した能力を発動した。
この前見たセリアとは違い、姿は変わっていない。だが雰囲気というかなんというか……魔力の色? が変わっている。ついさっきまでの水のような澄んだ魔力が、轟々と唸る竜巻のような魔力に変化していた。
これを見ると確かに……八法帝最強を名乗るのも納得だ。……っつーかこれを……法帝の枠を超えるバンリューはどれだけ異常な強さをしてるんだ。
とは言え、ビビるほどではない。
「これは……おれも最高の力で相手しないとな。大聖堂が保つかどうか……。まぁいいか」
「『圧縮身体強化』」
「……! 凄いですね……。魔力が無いからどのように戦うのかと思っていたのですが……確かに法帝に匹敵……いや、もしかしたらそれ以上かも……」
圧縮した魔素を身体中に纏い、流す強化術。魔素自体が強化されているようなものだから身体能力、肉体強度、技の破壊力などがグンと跳ね上がる。
それはまるで鋼鉄の血液が流れているような状態であるため、3年前、つまり地獄に堕ちる前は身体中が痛みまともに使えるものではなかった。地獄で何十年、鍛えに鍛え抜いた今では硬質な液体が流れている感覚で、デメリットを完全に克服している。当然多少の負荷はあるし疲れもするけれど。
「ふんッ!」
「!?」
おれは拳を振って衝撃波を飛ばした。牽制というか、開始の合図というか……まぁその程度のものだ。当然、威力が“その程度”という訳で、技はそれなりに高度なものであるが。
リンシャさんは剣で衝撃を弾き防いだ。いや、剣で弾いたのではなさそうだな。たぶん空間を歪ませて軌道を逸らしたのだ。ほんの一瞬、1秒にも満たない時間で空間が歪むとは……流石だな。
「すごいですね。……では私も……!」
「うおッ!!」
リンシャさんは細い剣を目にも止まらぬ速度で振った。異様な速度だ。これも空間を歪ませて無理やり加速したのだろう。それに加えて体も転移して移動を早くしている。
急に目の前に現れるので普通にしていては後手になる。おれは上体を後ろに逸らし回避した。おれは五感も常人に比べて強力だからなんとかなったが……少し遅れていたら喰らっていたな。
「エストの小僧強くなってんな。本当に」
「正面衝突したら儂も負けそうじゃな。……地獄で何年分過ごしたって言ってた?」
「時計も無いし厳密には分からないらしいけど50年は確実だって言ってたわ」
「そうか。小僧は地獄に引き摺り込まれたんだったな。どんなとこなんだ?」
「暑いし臭いし大変だって言ってたけど、何より飲み物が酷いんですって。水が無いから血を吸ってたって」
「は……? それはなんと言うか……気の毒だな。そりゃあ強くなるわ。精神的にも」
向こうでガルヴァンさんとセリア、グラが何かを話しているな。おれはずっとリンシャさんの剣を捌いていた。
そもそも反撃が難しいのと、女子に対しては攻撃が躊躇われるのが……いや、本気の相手には失礼なのだが。………とにかく速い。たぶんセリアよりも。攻撃は重い訳ではないのが救いだな。
おれも速さにはそこそこ自信があったが、どれだけ速く動けても瞬間移動は出来ない。多少の差であっても、それだけで圧倒的な優位を取られていた。軸を……さっきガルヴァンさんを相手にしていたときのように軸を意識するんだ。軸を逸らして隙を突く。
「後手に回っていては……何も出来ませんよ!」
「……! よく言うぜ……! 先手を取らせるつもりもねぇくせに!」
「『百花繚乱』!」
「……ッ!」
半径5メートルほどを無数の爆発で覆った。速いなら範囲攻撃をすればいい。雑だし単純な戦法だが、それなりに有効だ。当然、2度目は回避されるだろうが。だがこの一瞬、ほんの一瞬の隙で充分反撃が出来る。
「『散沙華』!」
「くッ……!」
両手を合わせて広げ、そこから極小に圧縮した魔素を放出し続けた。流石に威力は抑えてあるが、散弾銃のようなものだ。………抑える必要もなかったかもな。
「ふぅ……。なるほど……体術だけかと思っていたら……凄い技ですね……。流石です!」
リンシャさんは全てを剣で弾いたり、空間を歪ませて逸らしたりして防いでいた。やっぱり精密だ。適当な技では効果がないかな。となるとやはり……。
「速度が要るな。やっぱり相手のスタイルに対応した戦術も大事か……。よしッ!」
「『圧縮身体強化・穿』!」
おれは身体の内側の強化に集中した。骨格と関節を強化することで、少しではあるが速度が上がる身体強化だ。その分攻撃力と防御力は下がるものの……まぁ攻撃力少し下がったくらいなら問題ないか。
「わッ!」
今度はリンシャさんが動く前におれが乱打した。一応リンシャさんが受けやすいように打ってはいるが、割と簡単に受け流しているな。でも……うん。
なかなかどうしていい感じだ。イメージに先行して身体が動いている。リンシャさんが反撃のために剣を振り始めたが、それも簡単に相殺できるくらいの速度が出せた。
おれの背後に瞬間移動しても、すぐに反応して後ろに拳を振れる。これが三界相手にどれくらい通用するだろうか……。
「ふふっ……いいですね……! 本気でやらないと貴方には剣が届きそうもありません。失礼ながら、一撃……撃ち合って頂けますか?」
そう言ってリンシャさんは姿勢を低くし、重心を後ろに置きながら剣先をおれに向けた。魔力が唸り鳴っている。
「やる気満々じゃねぇか。……当然!」
「『圧縮身体強化・砕』!」
おれは冷や汗を垂らしながらもそう答え、構えを取った。今度は魔素の爆発力をより強化する。血中を魔素が爆発しながら流れ、手に触れるだけでもそれなりの衝撃が生まれるはずだ。おれとリンシャさんは同時に、瞬間的に距離を詰め、拳と剣を突き出した。
「『断世穿剣』!!」
「『魔天爆』!」
リンシャさんの剣は文字通り空を切り裂いて進み、さらにその隙間に入り込むかのようにして加速していく。
おれは魔素の衝突で発生した炎を纏った拳を力強く突き出す。まさに一瞬、ほんの一瞬の間に、2つの技がぶつかろうとした。
10
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
聖女じゃない私たち
あんど もあ
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生二人。王太子によって、片方は「聖女」として王宮に迎えられ、片方は「ただの異世界人」と地方の男爵に押し付けられた。だが、その判断に納得する二人ではなく……。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界異話 天使降臨
yahimoti
ファンタジー
空から天使が降って来た。
落ちたんだよ。転生かと思ったらいきなりゲームの世界「ロストヒストリーワールド」の設定をもとにしたような剣と魔法の世界にね。
それも面白がってちょっとだけ設定してみたキャラメイクのせいで天使族って。こんなのどうすんの?なんの目的もなければ何をしていいかわからないまま、巻き込まれるままにストーリーは進んでいく。
【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。
クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる