HAMA

わらびもち

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第十一章 作戦会議

第74話 穿

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「行きますよ。『空間を司る者スペース・マスター』」

「うおッ! いきなりか」

 リンシャさんは空間収納アイテムボックスから細剣を取り出して構えると、最初からいきなり昇華した能力スキルを発動した。

 この前見たセリアとは違い、姿は変わっていない。だが雰囲気というかなんというか……魔力の色? が変わっている。ついさっきまでの水のような澄んだ魔力が、轟々と唸る竜巻のような魔力に変化していた。

 これを見ると確かに……八法帝最強を名乗るのも納得だ。……っつーかこれを……法帝ほうおうの枠を超えるバンリューはどれだけ異常な強さをしてるんだ。

 とは言え、ビビるほどではない。

「これは……おれも最高の力で相手しないとな。大聖堂ここが保つかどうか……。まぁいいか」
「『圧縮身体強化フルブースト』」

「……! 凄いですね……。魔力が無いからどのように戦うのかと思っていたのですが……確かに法帝私達に匹敵……いや、もしかしたらそれ以上かも……」

 圧縮した魔素を身体中に纏い、流す強化術。魔素自体が強化されているようなものだから身体能力、肉体強度、技の破壊力などがグンと跳ね上がる。

 それはまるで鋼鉄の血液が流れているような状態であるため、3年前、つまり地獄に堕ちる前は身体中が痛みまともに使えるものではなかった。地獄で何十年、鍛えに鍛え抜いた今では硬質な液体が流れている感覚で、デメリットを完全に克服している。当然多少の負荷はあるし疲れもするけれど。

「ふんッ!」

「!?」

 おれは拳を振って衝撃波を飛ばした。牽制というか、開始の合図というか……まぁその程度のものだ。当然、威力が“その程度”という訳で、技はそれなりに高度なものであるが。

 リンシャさんは剣で衝撃を弾き防いだ。いや、剣で弾いたのではなさそうだな。たぶん空間を歪ませて軌道を逸らしたのだ。ほんの一瞬、1秒にも満たない時間で空間が歪むとは……流石だな。

「すごいですね。……では私も……!」

「うおッ!!」

 リンシャさんは細い剣を目にも止まらぬ速度で振った。異様な速度だ。これも空間を歪ませて無理やり加速したのだろう。それに加えて体も転移して移動を早くしている。

 急に目の前に現れるので普通にしていては後手になる。おれは上体を後ろに逸らし回避した。おれは五感も常人に比べて強力だからなんとかなったが……少し遅れていたら喰らっていたな。

「エストの小僧強くなってんな。本当に」

「正面衝突したら儂も負けそうじゃな。……地獄で何年分過ごしたって言ってた?」

「時計も無いし厳密には分からないらしいけど50年は確実だって言ってたわ」

「そうか。小僧は地獄に引き摺り込まれたんだったな。どんなとこなんだ?」

暑い熱いし臭いし大変だって言ってたけど、何より飲み物が酷いんですって。水が無いから血を吸ってたって」

「は……? それはなんと言うか……気の毒だな。そりゃあ強くなるわ。精神的にも」

 向こうでガルヴァンさんとセリア、グラが何かを話しているな。おれはずっとリンシャさんの剣を捌いていた。

 そもそも反撃が難しいのと、女子に対しては攻撃が躊躇われるのが……いや、本気の相手には失礼なのだが。………とにかく速い。たぶんセリアよりも。攻撃は重い訳ではないのが救いだな。

 おれも速さにはそこそこ自信があったが、どれだけ速く動けても瞬間移動は出来ない。多少の差であっても、それだけで圧倒的な優位を取られていた。軸を……さっきガルヴァンさんを相手にしていたときのように軸を意識するんだ。軸を逸らして隙を突く。

「後手に回っていては……何も出来ませんよ!」

「……! よく言うぜ……! 先手を取らせるつもりもねぇくせに!」
「『百花繚乱ヒャッカリョウラン』!」

「……ッ!」

 半径5メートルほどを無数の爆発で覆った。速いなら範囲攻撃をすればいい。雑だし単純な戦法だが、それなりに有効だ。当然、2度目は回避されるだろうが。だがこの一瞬、ほんの一瞬の隙で充分反撃が出来る。

「『散沙華ササガ』!」

「くッ……!」

 両手を合わせて広げ、そこから極小に圧縮した魔素を放出し続けた。流石に威力は抑えてあるが、散弾銃のようなものだ。………抑える必要もなかったかもな。
 
「ふぅ……。なるほど……体術だけかと思っていたら……凄い技ですね……。流石です!」

 リンシャさんは全てを剣で弾いたり、空間を歪ませて逸らしたりして防いでいた。やっぱり精密だ。適当な技では効果がないかな。となるとやはり……。

速度スピードが要るな。やっぱり相手のスタイルに対応した戦術も大事か……。よしッ!」
「『圧縮身体強化フルブースト穿セン』!」

 おれは身体の内側の強化に集中した。骨格と関節を強化することで、少しではあるが速度が上がる身体強化だ。その分攻撃力と防御力は下がるものの……まぁ攻撃力少し下がったくらいなら問題ないか。

「わッ!」

 今度はリンシャさんが動く前におれが乱打した。一応リンシャさんが受けやすいように打ってはいるが、割と簡単に受け流しているな。でも……うん。

 なかなかどうしていい感じだ。イメージに先行して身体が動いている。リンシャさんが反撃のために剣を振り始めたが、それも簡単に相殺できるくらいの速度が出せた。

 おれの背後に瞬間移動しても、すぐに反応して後ろに拳を振れる。これが三界相手にどれくらい通用するだろうか……。

「ふふっ……いいですね……! 本気でやらないと貴方には剣が届きそうもありません。失礼ながら、一撃……撃ち合って頂けますか?」

 そう言ってリンシャさんは姿勢を低くし、重心を後ろに置きながら剣先をおれに向けた。魔力が唸り鳴っている。

「やる気満々じゃねぇか。……当然!」
「『圧縮身体強化フルブーストサイ』!」

 おれは冷や汗を垂らしながらもそう答え、構えを取った。今度は魔素の爆発力をより強化する。血中を魔素が爆発しながら流れ、手に触れるだけでもそれなりの衝撃が生まれるはずだ。おれとリンシャさんは同時に、瞬間的に距離を詰め、拳と剣を突き出した。

「『断世穿剣リリ・リルアード』!!」

「『魔天爆アンテンドン』!」

 リンシャさんの剣は文字通り空を切り裂いて進み、さらにその隙間に入り込むかのようにして加速していく。

 おれは魔素の衝突で発生した炎を纏った拳を力強く突き出す。まさに一瞬、ほんの一瞬の間に、2つの技がぶつかろうとした。
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