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第十二章 人魔大戦
第84話 ウソつけよ
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「今のは……兄様の能力……!?」
「うッ……」
「兄様! 大丈夫ですか!?」
セリアはギルバートの元へ駆け寄った。ギルバートは今の攻撃を回避も防御も出来ずに直撃してしまっていた。
足元も覚束ない様子だった。先ほどクロワールによって神経を狂わされたようだ。セリアはギルバートの肩を担いで後退した。
クロワールは特に追い討ちをかける様子はなく、氷の能力も今の一度きりのようだった。
「ギルバートさん。能力の方に異常はございませんか?」
「……ああ……。問題ない。ただ……さっきの一瞬は能力を発動できなかったから、確実に奪われてはいたね……」
「厳密に言えば能力そのものを奪ったのではない。支配権を奪ったのさ。ほんの一瞬だけだがな。たとえ貴様らの能力であろうと神の所有物に手を出すのは容易ではない」
長時間、あるいは永久に奪われるのではないということか。だが、そうだとしてもこれは大変なことだ。能力を支配されては魔力操作も乱れてしまう。
クロワールとの接触は可能な限り避けなくてはいけない。その上で討伐もしなくてはならない。なんとも難しいものだ。
「もう一つ、面白いものを見せてやろう」
「……?」
「貴様ら、大英雄の能力を知っているか?『永遠なる記憶』、封印術だ。それ」
「なッ……!」
クロワールが指を下から上に動かすと、3人の足元から何本もの鎖が飛び出してきた。鎖は全身を覆うように現れ、強く拘束した。
「ぐッ……か……あッ……!」
鎖は拘束力を強めていき、ミシミシと骨を砕いていった。魔力の流れも掻き乱され、上手く力も込められない。既に負傷していたギルバートはもはや抗うことも出来ずにいた。
このままではマズイ、セリアはそう思って全身に魔力を開放した。一時的にクロワールの魔力出力に匹敵し、鎖の拘束を抜け出した。
リンシャもそれに続いて鎖を解こうとしたが、セリアがそれを止めた。可能な限り温存するためだ。
「『炎の解放』!」
セリアは剣を地面に突き刺し、ギルバートとリンシャの鎖を焼き尽くした。
「助かりました。セルセリアさん……」
「大英雄は死ぬ直前に自分自身を封印したせいでまだ充分に身体を支配出来ちゃいねぇんだが……思ったよりやるな」
「悪趣味ですね。英雄を何だと思っているのか……!!」
「……!」
リンシャはクロワールの背後に転移し、剣を振るった。クロワールは身体を捻ってそれを回避し、その捻りを戻す勢いでリンシャを蹴り飛ばした。
「くぅッ……!」
「『裂灰』!」
「ぐッ………この小娘がァッ!」
「うあッ!」
吹き飛んだリンシャをクロワールが追い、腹部を強く殴りつけた。その横からセリアが炎で斬りつける。立ち上る炎はクロワールを深く斬った。だが足りない。
クロワールはすぐさまセリアの頭を掴み、大地に放り投げた。セリアがやられてはリンシャが攻撃し、リンシャがやられてはセリアが攻撃した。2人はボロボロになりながらも、何度も何度もクロワールに剣を振るった。
「『裂界』!」
「なッ!?」
リンシャは空間を歪め、剣を伸ばした。勢いよく伸びた剣は、クロワールの胸を貫いた。剣には大きな魔力を纏わせており、その一撃にセリアも炎を貸していた。リンシャの剣が魔族の胸を焼く。
「ぐッ……はァッ!」
「ッ……!」
ただその一撃にも怯まず、クロワールは右手を横に振った。高密度の魔力が飛び、それがリンシャとセリアの身体を斬り裂いた。致命傷にはならなかったが、重傷だ。すぐには立ち上がれない。
「…………確かに届き得る力だが……この程度か。楽しめはするが、まだ足りんな」
クロワールはそう言って2人の方に手を向けた。リンシャとセリアの身体は鎖によって締め付けられ、身動きは取れなくなった。
このままだと身体を潰されてしまう、そのときだった。クロワールの背後から巨大な氷の剣が彼を突き刺した。その傷口からだんだんと身体が凍っていった。
「ッ……!?」
「『大氷河』……僕のことを……忘れてたか……?」
「……ッ黙っていれば死なずに済んだものを……馬鹿な人間だ……!」
「つッ……!」
クロワールはギルバートの首を掴み、拳で腹部を貫いた。氷の剣は崩れ、それと同時にクロワールのの凍った傷も溶け出した。
クロワールは更にトドメを刺そうとしてた。だが彼も相当のダメージを負っていたので、セリア達を拘束していた鎖も消えた。
「……兄様に………これ以上手を出すな……!」
鎖を抜け出したセリアとリンシャが剣でクロワールの手を止めた。クロワールはギルバートから手を放し、交差した2つの剣を掴み、もう一方の手を振り上げた。
「死に損ないが……!」
「……ッ!」
クロワールは上げた手を勢いよく振り下ろそうとした。そのとき、遠くから空気を裂くほどの速さで1人の男が走ってきた。
「『堕天』……!!」
エストが宙に浮いているクロワールを思い切りに蹴り落とした。魔素を爆発させながら放った蹴りでクロワールは数十メートルほど吹き飛んだ。エストはセリアとリンシャを抱えて地面に下りた。
「助かったわ……エスト……。遅かったじゃない……!」
「はぁ……はぁ……。セリア達は侵界と戦ってたんだよな……!? 侵界は……大英雄の身体なんだよな……!?」
「え、ええ。……そうよ……?」
エストは異様に息が上がっていた。急いできたから、とかそんなものではない。疲れではなく、動揺からくる息遣いであった。それを見てセリアもリンシャも不思議に思った。
「……ウソ……つけよ……」
エストはボソッと、呟くようにそう言った。小声だったため、セリア達にはよく聞き取れなかった。だが一つだけ、声が震えているのだけは2人に伝わっていた。
「うッ……」
「兄様! 大丈夫ですか!?」
セリアはギルバートの元へ駆け寄った。ギルバートは今の攻撃を回避も防御も出来ずに直撃してしまっていた。
足元も覚束ない様子だった。先ほどクロワールによって神経を狂わされたようだ。セリアはギルバートの肩を担いで後退した。
クロワールは特に追い討ちをかける様子はなく、氷の能力も今の一度きりのようだった。
「ギルバートさん。能力の方に異常はございませんか?」
「……ああ……。問題ない。ただ……さっきの一瞬は能力を発動できなかったから、確実に奪われてはいたね……」
「厳密に言えば能力そのものを奪ったのではない。支配権を奪ったのさ。ほんの一瞬だけだがな。たとえ貴様らの能力であろうと神の所有物に手を出すのは容易ではない」
長時間、あるいは永久に奪われるのではないということか。だが、そうだとしてもこれは大変なことだ。能力を支配されては魔力操作も乱れてしまう。
クロワールとの接触は可能な限り避けなくてはいけない。その上で討伐もしなくてはならない。なんとも難しいものだ。
「もう一つ、面白いものを見せてやろう」
「……?」
「貴様ら、大英雄の能力を知っているか?『永遠なる記憶』、封印術だ。それ」
「なッ……!」
クロワールが指を下から上に動かすと、3人の足元から何本もの鎖が飛び出してきた。鎖は全身を覆うように現れ、強く拘束した。
「ぐッ……か……あッ……!」
鎖は拘束力を強めていき、ミシミシと骨を砕いていった。魔力の流れも掻き乱され、上手く力も込められない。既に負傷していたギルバートはもはや抗うことも出来ずにいた。
このままではマズイ、セリアはそう思って全身に魔力を開放した。一時的にクロワールの魔力出力に匹敵し、鎖の拘束を抜け出した。
リンシャもそれに続いて鎖を解こうとしたが、セリアがそれを止めた。可能な限り温存するためだ。
「『炎の解放』!」
セリアは剣を地面に突き刺し、ギルバートとリンシャの鎖を焼き尽くした。
「助かりました。セルセリアさん……」
「大英雄は死ぬ直前に自分自身を封印したせいでまだ充分に身体を支配出来ちゃいねぇんだが……思ったよりやるな」
「悪趣味ですね。英雄を何だと思っているのか……!!」
「……!」
リンシャはクロワールの背後に転移し、剣を振るった。クロワールは身体を捻ってそれを回避し、その捻りを戻す勢いでリンシャを蹴り飛ばした。
「くぅッ……!」
「『裂灰』!」
「ぐッ………この小娘がァッ!」
「うあッ!」
吹き飛んだリンシャをクロワールが追い、腹部を強く殴りつけた。その横からセリアが炎で斬りつける。立ち上る炎はクロワールを深く斬った。だが足りない。
クロワールはすぐさまセリアの頭を掴み、大地に放り投げた。セリアがやられてはリンシャが攻撃し、リンシャがやられてはセリアが攻撃した。2人はボロボロになりながらも、何度も何度もクロワールに剣を振るった。
「『裂界』!」
「なッ!?」
リンシャは空間を歪め、剣を伸ばした。勢いよく伸びた剣は、クロワールの胸を貫いた。剣には大きな魔力を纏わせており、その一撃にセリアも炎を貸していた。リンシャの剣が魔族の胸を焼く。
「ぐッ……はァッ!」
「ッ……!」
ただその一撃にも怯まず、クロワールは右手を横に振った。高密度の魔力が飛び、それがリンシャとセリアの身体を斬り裂いた。致命傷にはならなかったが、重傷だ。すぐには立ち上がれない。
「…………確かに届き得る力だが……この程度か。楽しめはするが、まだ足りんな」
クロワールはそう言って2人の方に手を向けた。リンシャとセリアの身体は鎖によって締め付けられ、身動きは取れなくなった。
このままだと身体を潰されてしまう、そのときだった。クロワールの背後から巨大な氷の剣が彼を突き刺した。その傷口からだんだんと身体が凍っていった。
「ッ……!?」
「『大氷河』……僕のことを……忘れてたか……?」
「……ッ黙っていれば死なずに済んだものを……馬鹿な人間だ……!」
「つッ……!」
クロワールはギルバートの首を掴み、拳で腹部を貫いた。氷の剣は崩れ、それと同時にクロワールのの凍った傷も溶け出した。
クロワールは更にトドメを刺そうとしてた。だが彼も相当のダメージを負っていたので、セリア達を拘束していた鎖も消えた。
「……兄様に………これ以上手を出すな……!」
鎖を抜け出したセリアとリンシャが剣でクロワールの手を止めた。クロワールはギルバートから手を放し、交差した2つの剣を掴み、もう一方の手を振り上げた。
「死に損ないが……!」
「……ッ!」
クロワールは上げた手を勢いよく振り下ろそうとした。そのとき、遠くから空気を裂くほどの速さで1人の男が走ってきた。
「『堕天』……!!」
エストが宙に浮いているクロワールを思い切りに蹴り落とした。魔素を爆発させながら放った蹴りでクロワールは数十メートルほど吹き飛んだ。エストはセリアとリンシャを抱えて地面に下りた。
「助かったわ……エスト……。遅かったじゃない……!」
「はぁ……はぁ……。セリア達は侵界と戦ってたんだよな……!? 侵界は……大英雄の身体なんだよな……!?」
「え、ええ。……そうよ……?」
エストは異様に息が上がっていた。急いできたから、とかそんなものではない。疲れではなく、動揺からくる息遣いであった。それを見てセリアもリンシャも不思議に思った。
「……ウソ……つけよ……」
エストはボソッと、呟くようにそう言った。小声だったため、セリア達にはよく聞き取れなかった。だが一つだけ、声が震えているのだけは2人に伝わっていた。
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