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幸せのオムライス

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第一章 森の生活と孤児院改革:ギルド登録と初めてのビジネス

第44話 ツンデレな院長とリックに見送られて、いざ街へ!

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「あの、マーサさん!」

 私は、できる限り明るく、そして無邪気な子供を装って、声を張った。
 マーサ院長は、いつものように「なんだい、騒々しいね」と、面倒くさそうな顔でこちらを振り返る。うん、その反応、もはや様式美だね!

「ちょっと、お散歩に行ってきてもいいですか? この街のこと、もっともっと知りたくて!」

 子犬のように首をこてんと傾げ、上目遣い。
 これぞ、前世で培った「年上にかわいがられるための処世術」の一つ、『エンジェルスマイル作戦』だ。
 まあ、中身はアラサーOLなんだけどな!

 マーサ院長は、私の渾身のあざとさにも動じず、じろりと私を睨む。

「散歩? あんた、この前も一人でふらふら出かけて行ったじゃないか。子供が一人でうろつくんじゃないよ、危ないだろうに」

 うっ、正論!
 でも、ここで引き下がるわけにはいかない。

「大丈夫です! この前は街の地理も分からなかったですけど、今はもうバッチリですから! それに、この前の散歩で、街には衛兵さんがたくさんいて、すごく安全な場所だって分かりました!」

 そう、これもリサーチの成果だ。
 ハルモニアの街は、主要な通りには必ず衛兵が巡回しており、治安維持にかなり力を入れているようだった。
 平日の昼間に、子供が一人で歩いていても、すぐに誘拐されるような危険な雰囲気はない。
 夜はこの前みたいに危ないかもしれないけど……。

 私の言葉に、マーサ院長は少しだけ眉間の皺を緩めた。
 そして、私の足元で、行儀よくお座りしているコロに視線を落とす。

「……まあ、好きにしな。ただし、日が暮れる前には必ず帰ってくるんだよ」

「はいっ!」

「それと、そこの犬っころを連れていきな。あんた一人じゃ、ごろつきに絡まれでもしたら厄介だからね。そいつがいれば、番犬くらいにはなるだろうさ」

(キター! ツンデレおばあちゃんの、不器用な優しさ!)

 本当は心配でたまらないくせに、素直に「気をつけて」って言えない、この感じ! たまらん!
 心の中でガッツポーズ。第一関門、クリアだ。

「ありがとうございます、マーサさん!」

 私が満面の笑みでお礼を言うと、マーサ院長は「ふん」と鼻を鳴らして、厨房へと消えていった。
 よし、これで堂々と外出できる!
 私が意気揚々と玄関へ向かおうとした、その時。

「おい」

 背後から、呼び止められる。
 振り返ると、そこには腕を組んだリックが立っていた。

「俺もついて行ってやるよ。お前みたいなチビ、一人じゃ危ねえだろ」

 出た! こちらもツンデレ!
 この孤児院、ツンデレ率高すぎじゃない!?
 リックは、そっぽを向きながら、でもその目は明らかに「心配だ」と語っている。

 昨日までは「馴れ合うつもりはない」オーラ全開だったのに、美味しいご飯とふかふかベッドの力は偉大だ。彼の心の壁も、ずいぶんと低くなったらしい。
 その申し出は、正直、すごく嬉しい。
 でも、今日のミッションは、私のチート能力をフル活用する可能性がある、極秘作戦なのだ。

(リックお兄ちゃん、ごめんよ。君の優しさは嬉しいけど、今日の私は一人じゃないとダメなんだ……!)

「ありがとう、リックお兄ちゃん! でも、大丈夫だよ」

 私がそう言って微笑むと、リックは「だから、誰がお兄ちゃんだ!」と、顔を少しだけ赤くする。うん、可愛い。

「本当に大丈夫だって。それに、これは市場調査…ううん、社会科見学だから、一人で行ってみたいの!」

 つい、前世の癖でビジネス用語が出そうになるのを、慌てて言い換える。
 危ない危ない。10歳の子供の口から「市場調査」なんて言葉が出たら、一発で不審者認定だ。

「しゃかいか、けんがく……?」

 リックが、不思議そうな顔で首を傾げる。
 そっか、この世界に「社会科」なんて授業、ないかもしれない。
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