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幸せのオムライス

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第一章 森の生活と孤児院改革:ギルド登録と初めてのビジネス

第45話 市場調査は基本です! 異世界の物価をリサーチ

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「えっと、その、街で働いている人たちが、どんなお仕事をしてるのか、見て回りたいなって!」

 我ながら、完璧な言い訳だ。
 これなら、好奇心旺盛な子供の行動として、不自然さはないはず。
 私の言葉に、リックは少しだけ納得したような、でもまだ心配そうな顔をしていた。

「……分かったよ。でも、絶対に危ないことすんなよ。変な路地裏とか入るなよな」

「うん、約束する!」

 優しいお兄ちゃんの忠告に、私は力強く頷く。
 こうして、私はマーサ院長とリックという、二人のツンデレの心配を背中に受けながら、頼れる相棒コロだけを連れて、孤児院を後にしたのだった。

 ◇

「うわー、活気あるなぁ」

 孤児院のある旧市街を抜け、メインストリートに出ると、そこは昨日までの静けさが嘘のような、活気に満ち溢れた世界が広がっていた。
 石畳で舗装された広い道の両脇には、様々な店が軒を連ねている。

 野菜や果物を山と積んだ八百屋、香ばしい匂いを漂わせるパン屋、屈強な男たちがハンマーを振るう鍛冶屋。
 道行く人々の服装も、旧市街の茶色一色とは違い、赤や青、緑といった、色とりどりの服を着ている人が多い。

(なるほど、ここがハルモニアの商業地区か。うん、ファンタジーの街って感じ!)

 私は、田舎から初めて東京に出てきた高校生みたいに、キョロキョロと周りを見渡しながら歩く。

『コトリ、いい匂い! あの丸くて茶色いやつ!』

 コロが、私のローブの裾をくいっと引っ張り、パン屋の方を指し示す(鼻で)。
 その視線の先には、焼きたてのパンがずらりと並んでいる。
 うん、確かにめちゃくちゃ美味しそうだ。

「あれはパンだよ、コロ。後で買ってあげようね」

『やったー! パン!』

 純粋に喜ぶコロの頭を撫でながら、私は冷静に店の看板を観察する。
 パンの値段は、手のひらサイズのシンプルな丸パンが、銅貨1枚。
 なるほど。

 次に、八百屋。
 真っ赤でツヤツヤしたリンゴが、山のように積まれている。

「お兄さん、このリンゴ、いくら?」

「お、嬢ちゃんかい? 威勢がいいねぇ! このリンゴは、3つで銅貨1枚だよ! 甘くて美味いぜ!」

 八百屋の陽気なおじさんが、笑顔で教えてくれる。
 リンゴ3つで銅貨1枚か……ふむふむ。

(銅貨1枚が、だいたい日本の100円くらいの価値だから、パン1個が100円、リンゴ1個が約33円。うん、パンはちょっと高めで、果物は安い感じか。なるほどなるほど)

 前世で鍛えた金銭感覚で、この世界の物価を脳内レートに換算していく。
 こういう地道な情報収集が、ビジネスの基本なのだ。

 そんなことを考えながら歩いていると、ひときわ大きく、そして立派な建物が目に入ってきた。
 他の店が木造なのに対して、その建物は重厚な石造り。
 入り口の上には、剣と盾が交差した、いかにもな紋章が掲げられている。

「冒険者ギルド……!」

 間違いない。ここが、私の今日の目的地だ。
 建物の前には、いかにも「冒険者です」という感じの、ゴツい装備を身につけた人たちが出入りしている。
 中からは、男たちの野太い笑い声や、何かがぶつかるような物騒な音も聞こえてくる。

(うわー、完全に体育会系のノリだ。私みたいな文化系(自称)インドア派には、ちょっとハードル高い雰囲気……)

 一瞬、ひるむ。
 でも、ここで帰るわけにはいかない。
 全ては、私の快適なスローライフのため!

「よし、行くぞ、コロ!」

『うん!』

 私は、小さな体に似合わない決意を胸に、冒険者ギルドの大きな木の扉を、ぎゅっと押し開けたのだった。
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