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幸せのオムライス

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第一章 森の生活と孤児院改革:ギルド登録と初めてのビジネス

第61話 大量納品で価格交渉! 鑑定士のおじさんを言いくるめろ!

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 私が、できるだけ申し訳なさそうに、上目遣いで鑑定士のおじさんにお願いする。
 おじさんは、「ふん、どうせ数本だろう」と、面倒くさそうに顎をしゃくった。

「まあ、品質が良ければ買い取ってやらんでもないな。出してみな」

 よし、食いついた!
 私は、再び四次元バッグに意識を集中させる。
 さっきは、依頼分の20本だけだった。
 でも、今度は違う。

『ナイト・グロウ、残り全部、取り出し!』

 次の瞬間。
 ザザザッ……!
 カウンターの上に、先ほどとは比べ物にならない量の、ナイト・グロウの束が出現した。
「山」というほどではないが、子供一人が半日で集めてきたとは到底思えない、明らかに異常な量が、カウンターの上を埋め尽くす。

「なっ……!?」

 鑑定士のおじさんが、素っ頓狂な声を上げた。
 エマさんも目を丸くして驚いている。
 ギルド内にいた冒険者たちも、何事かとこちらに注目する。

「おい、またやったぞ、あいつ…」

「さっきの20本は、ほんのお試しだったってのか…」

 鑑定士のおじさんは、カウンターの上の薬草の量を、信じられないという顔で指差す。

「お、おい、嬢ちゃん! これ、全部お前さんが一人で採ってきたのか!? しかも、今日の昼過ぎに依頼を受けて、まだ日も暮れてないんだぞ!?」

「はい、コロと一緒ですけど」

「本当か!? ベテランの採取屋だって、こんな量を半日で集めるのは至難の業だぞ! しかも……」

 おじさんは、ハッとした顔で薬草を数本手に取り、再び虫眼鏡で鑑定を始める。その顔は、先ほどよりもさらに険しく、真剣になっている。

「……おかしい。おかしいぞ、これは……。一本たりとも、根が傷んでいない。それどころか、根に土が全くついていない……。 まるで、空間から直接切り取ってきたかのようだ……。こんな採取方法、聞いたこともない……」

 おじさんは、ぶるぶると震える手で薬草を置き、私をまるで怪物でも見るかのような目で見た。

「……嬢ちゃん。お前さん、一体何者だ……?」

(ふふふ、鑑定士さん。残念ながら、それは企業秘密です!)

 周囲の冒険者たちも、ざわめき始める。

「おい、聞こえたか? 半日で、あの量を、あの品質でだぞ……」

「普通の採取じゃないな……。あの子の生活魔法には、植物の場所を探したり、傷つけずに収穫する能力もあるのかもしれん……」

「とんでもない新人が現れたもんだ……」

(うんうん、いい感じに誤解してくれてる! 私がやったのは、ネットで調べて、一本だけ自力で探して後はコロに探させて、四次元バッグに収納しただけなんだけどね!)

 しばらく、一人でぶつぶつと何かを呟いていたおじさんだったが、やがて、覚悟を決めたように、ごくりと唾を飲み込んだ。

「……分かった。全部、買い取ろう」

「本当ですか!?」

「ああ。これだけの技術で採取された最高品質の薬草だ。ギルドとしても、見逃すわけにはいかん。一本あたり、銅貨1枚でどうだ」

 一本、銅貨1枚……。
 依頼の報酬は、20本で銅貨30枚。つまり、一本あたり銅貨1.5枚。
 それに比べると、ちょっと安い。足元を見られたか……!
 いや、待て。落ち着け、私。前世のビジネス交渉を思い出すんだ。
 相手が提示した最初の金額に、安易に飛びついてはいけない。

「うーん、そうですか。でも、これだけの量を集めるの、結構大変だったんですけど……」

 私が、少しだけ不満そうな顔をしてみせると、おじさんは「ぐっ」と顔をしかめる。

「し、仕方ないだろう! 依頼外の、しかもこれだけの大量買い取りだ! これでも、かなり勉強した値段なんだぞ!」

「でも、この薬草があれば、薬がたくさん作れて、冒険者の皆さんの命も救えますよね? そう考えると、もう少し、価値を評価していただいてもいいんじゃないかなって……」

 私が、悲しそうな瞳で(もちろん演技)そう言うと、隣で聞いていたエマさんが、援護射撃をしてくれた。

「そうですよ、モーガンさん! コトリちゃんは、まだこんなに小さいのに、一人で頑張ってこれだけ集めてきたんです! もう少し色をつけてあげても、罰は当たらないんじゃないですか?」

「う、うむ……しかしだな、エマ……」

 鑑定士のモーガンさんは、明らかに狼狽している。
 よし、あと一押し!

「それに、私、また明日も、これくらいたくさん採ってこれるかもしれませんよ?」

 私が、にっこりと、悪魔の微笑みを浮かべてそう言うと、モーガンさんの顔が、さっと青ざめた。
 ふふふ、そうでしょう、そうでしょう。私という『安定した供給ルート』を、ここで手放すのは惜しいでしょう?
 彼は、しばらくうんうん唸っていたが、やがて、観念したように、大きくため息をついた。
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