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第二章 ヤマネコ商会、爆誕!:行列のできる露店
第113話 三日間の営業終了! リックお兄ちゃん、お疲れ様です
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「申し訳ございません! 本日分は、これにて完売いたしましたー!」
私の声が枯れ気味に響き渡ると、広場に残っていた人々から「ええーっ!」という残念そうな、でもどこか満足げなため息が漏れた。
「また明日も販売に来ますから! ぜひお越しくださいね!」
私が愛想よく手を振ると、お客さんたちは「じゃあ次は早めに来るか」「美味しかったらまた買うよ」と言い残し、三々五々に散っていった。
初日の大成功に味を占めた私たちは、翌日も、その翌日も広場の一等地に店を構えた。
もちろん、商品は飛ぶように売れた。
私は夜な夜な宿の厨房で商品を量産し、昼間はリックと共に戦場のような露店を切り盛りした。
そして今、三日目の営業が無事に終了したところだ。
「……ふぃ~……。死ぬかと思った……」
客がいなくなったのを確認するなり、リックが椅子に座り、陳列台に突っ伏した。
「お前……商売繁盛しすぎだろ……。俺、この三日だけで一生分『すいません、最後尾はあちらです』って言った気がするぞ……」
「お疲れ様です、リックお兄ちゃん。リックお兄ちゃんの体力と根性がなければ、三日も持ちませんでしたよ」
私は、へたり込んでいるリックに、自分用に残しておいたハーブティーの残りを差し出す。
「はい、どうぞ。喉、カラカラですよね?」
「……おう、サンキュ」
リックは紙コップを受け取ると、一気に飲み干して、ほう、と息をついた。
「……でも、勝ちました!」
私は空になった在庫の箱を見渡して、拳を握りしめる。
足元では、コロも「やりきったぞ!」と言わんばかりに、満足げに寝そべっている。
「ああ、大勝利だな。……だがよ、コトリ」
リックが、真剣な顔で私を見た。
「このままじゃ、体が持たねえぞ。今日もなんとかなったが、毎日こんなことやってたら、俺も、お前も倒れる」
「はい、それは痛感しました」
私は頷く。
嬉しい悲鳴とはいえ、これは完全にブラック労働だ。
経営者(わたし)が現場作業で消耗しきってしまうようでは、ビジネスとして持続性がない。
(資金はできた。三日間の売上で、店舗開店のための初期費用と当面の運転資金、そしてポイント換金用の資金は十分に確保できたはず)
ならば、次に打つべき手は決まっている。
「リックお兄ちゃん。次は『投資』のフェーズですね」
「投資?」
「そうです。雨の日でも商品を売れる、ちゃんとした『店舗』。そして、私の手足となって働いてくれる、優秀な『従業員』の確保です!」
私の宣言に、リックは「まだやるのかよ……」と呆れたように天を仰いだ。
「へっ、たくましいこった。ま、俺はまた雇われたら働くだけだ。……次はもう少し楽な仕事にしてくれよ?」
「ふふ、善処します!」
私たちは手早く撤収作業を終え、荷物を四次元バッグに収納した。
私はバッグから銀貨を三枚取り出すと、リックに向き直った。
「はい、これ。三日分のお給料です」
手渡された銀貨を見たリックは、ぎょっとしたように目を見開いた。
「ぎ、銀貨三枚!? いや、多すぎるだろ! 俺はただ荷物を運んで、立ってただけだぞ!?」
「何言ってるんですか。リックお兄ちゃんがいなかったら、開店準備もできなかったし、あの大混雑で私は押しつぶされてました。これは正当な労働の報酬です。遠慮しないで受け取ってください!」
私が強引に言うと、リックは「……くそっ、お前には敵わねえな」と、照れくさそうに鼻の下をこすり、銀貨を大事そうにポケットにしまった。
「それと、明日の予定なんですけど」
「ん? 明日も広場で売るのか?」
「ううん。明日は露店はお休みです。これだけの資金ができたから、本格的に『店舗』を探しに行こうと思うんです。だから、リックお兄ちゃんは明日、いつもの仕事に戻ってていいですよ。お店が決まって、また人手が必要になったらすぐに声をかけますから」
私の声が枯れ気味に響き渡ると、広場に残っていた人々から「ええーっ!」という残念そうな、でもどこか満足げなため息が漏れた。
「また明日も販売に来ますから! ぜひお越しくださいね!」
私が愛想よく手を振ると、お客さんたちは「じゃあ次は早めに来るか」「美味しかったらまた買うよ」と言い残し、三々五々に散っていった。
初日の大成功に味を占めた私たちは、翌日も、その翌日も広場の一等地に店を構えた。
もちろん、商品は飛ぶように売れた。
私は夜な夜な宿の厨房で商品を量産し、昼間はリックと共に戦場のような露店を切り盛りした。
そして今、三日目の営業が無事に終了したところだ。
「……ふぃ~……。死ぬかと思った……」
客がいなくなったのを確認するなり、リックが椅子に座り、陳列台に突っ伏した。
「お前……商売繁盛しすぎだろ……。俺、この三日だけで一生分『すいません、最後尾はあちらです』って言った気がするぞ……」
「お疲れ様です、リックお兄ちゃん。リックお兄ちゃんの体力と根性がなければ、三日も持ちませんでしたよ」
私は、へたり込んでいるリックに、自分用に残しておいたハーブティーの残りを差し出す。
「はい、どうぞ。喉、カラカラですよね?」
「……おう、サンキュ」
リックは紙コップを受け取ると、一気に飲み干して、ほう、と息をついた。
「……でも、勝ちました!」
私は空になった在庫の箱を見渡して、拳を握りしめる。
足元では、コロも「やりきったぞ!」と言わんばかりに、満足げに寝そべっている。
「ああ、大勝利だな。……だがよ、コトリ」
リックが、真剣な顔で私を見た。
「このままじゃ、体が持たねえぞ。今日もなんとかなったが、毎日こんなことやってたら、俺も、お前も倒れる」
「はい、それは痛感しました」
私は頷く。
嬉しい悲鳴とはいえ、これは完全にブラック労働だ。
経営者(わたし)が現場作業で消耗しきってしまうようでは、ビジネスとして持続性がない。
(資金はできた。三日間の売上で、店舗開店のための初期費用と当面の運転資金、そしてポイント換金用の資金は十分に確保できたはず)
ならば、次に打つべき手は決まっている。
「リックお兄ちゃん。次は『投資』のフェーズですね」
「投資?」
「そうです。雨の日でも商品を売れる、ちゃんとした『店舗』。そして、私の手足となって働いてくれる、優秀な『従業員』の確保です!」
私の宣言に、リックは「まだやるのかよ……」と呆れたように天を仰いだ。
「へっ、たくましいこった。ま、俺はまた雇われたら働くだけだ。……次はもう少し楽な仕事にしてくれよ?」
「ふふ、善処します!」
私たちは手早く撤収作業を終え、荷物を四次元バッグに収納した。
私はバッグから銀貨を三枚取り出すと、リックに向き直った。
「はい、これ。三日分のお給料です」
手渡された銀貨を見たリックは、ぎょっとしたように目を見開いた。
「ぎ、銀貨三枚!? いや、多すぎるだろ! 俺はただ荷物を運んで、立ってただけだぞ!?」
「何言ってるんですか。リックお兄ちゃんがいなかったら、開店準備もできなかったし、あの大混雑で私は押しつぶされてました。これは正当な労働の報酬です。遠慮しないで受け取ってください!」
私が強引に言うと、リックは「……くそっ、お前には敵わねえな」と、照れくさそうに鼻の下をこすり、銀貨を大事そうにポケットにしまった。
「それと、明日の予定なんですけど」
「ん? 明日も広場で売るのか?」
「ううん。明日は露店はお休みです。これだけの資金ができたから、本格的に『店舗』を探しに行こうと思うんです。だから、リックお兄ちゃんは明日、いつもの仕事に戻ってていいですよ。お店が決まって、また人手が必要になったらすぐに声をかけますから」
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