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第二章 ヤマネコ商会、爆誕!:激安の幽霊屋敷と二人の看板娘
第118話 即決購入! 幽霊なんて非科学的です、リフォームすれば豪邸です!
「お邪魔しまーす……っと」
中は外見以上に「終わってる」状態だった。
澱んだ空気はカビと腐敗臭のハイブリッド。床には「これ何年前の皿?」って感じの破片や、正体不明の小動物のフンが散乱し、天井からはホラー演出に欠かせない分厚い蜘蛛の巣カーテンが垂れ下がっている。
確かに、これはひどい。普通の人が見たら、悲鳴を上げて逃げ出すレベルだ。
でも、私にはチートがある。
私は建物の中央に立ち、そっと壁に手を触れた。
「《診断》!」
目の前に半透明のウィンドウが出現し、建物の構造データが表示される。
『構造:煉瓦造(レンガゾウ)二階建て。築年数:不明。状態:内装木部の腐食・汚損多数。外壁および主要構造の劣化なし。基礎:堅牢』
(……ビンゴ! 柱はしっかりしてる。梁も腐ってない。見た目がボロボロなだけで、骨格は生きてるわ!)
私は、埃まみれの厨房へと進む。
かまどは煤けているが、レンガ自体は丈夫そうだ。広さも十分。これなら、大量のジャムやクッキーを焼くのにも困らない。
さらに、裏口を開けると、そこには草ぼうぼうだが、そこそこの広さがある裏庭が広がっていた。
『わーい! お庭だ!』
コロが嬉しそうに草むらに飛び込んでいく。
日当たりも悪くない。ここならコロも退屈しないし、ハーブを育てることもできそうだ。
市場のメイン通りから一本入った静かな場所だが、アクセスは悪くない。むしろ、隠れ家的な雰囲気があって良いかもしれない。
十分な広さの厨房と店舗スペース。
コロが遊べる裏庭付き。
そして、二階には住居スペースもある。
条件は、完璧だ。
それに、普通なら、修繕費と清掃費でさらに金貨何枚も飛んでいくところだろう。
でも、私には関係ない。
(リフォーム代? 清掃費? そんなもの、私の魔法で無料だわ!)
私の脳内で、そろばんが激しく音を立てて弾かれる。
結論。
これ以上の「掘り出し物」はない。
あとは……幽霊? そんな非科学的な存在いるわけないし!
「決めたわ!」
私はくるりと振り返り、コロを呼び戻す。
「よし、コロ! ギルドへ戻ろう! 誰かに買われる前に、契約しちゃわないと!」
『はーい!』
私は、このボロ屋敷がピカピカに生まれ変わる未来図を思い浮かべながら、軽い足取りで商業ギルドへと向かって歩き出した。
◇
私は商業ギルドの『不動産管理窓口』へ、前のめりな姿勢で舞い戻った。
息を切らせてカウンターに着くと、さっきの神経質そうな職員さんが、目を丸くして私を迎えた。
「おや、もう戻られたんですか? ……ひょっとして、何か『見て』しまって逃げ帰ってきたとか……」
職員さんは「やっぱりね」といった顔で、同情するように眉を寄せる。
多分、私が恐怖に震えて泣きついてきたのだと勘違いしているのだろう。
残念ながら、私が震えているのは恐怖ではない。
掘り出し物を見つけた、武者震いだ!
私は借りていた錆びついた鍵を、カツン、とカウンターの上に置いた。
「買います! 今すぐ契約書をください!」
バンッ! とカウンターを叩いて宣言すると、職員さんは椅子から転げ落ちそうになった。
「は、はあああ!? か、買う!? あの廃墟をですか!?」
「ええ。柱も基礎もしっかりしていました。掃除と修繕さえすれば、立派な店舗になります」
「い、いや、建物の状態の問題じゃなくてですね! 幽霊ですよ、幽霊! あそこは呪われてるんです! ……それに、賃貸をお探しだったのでは!?」
「予定変更です! 幽霊、ですか?」
私はにっこりと、子供らしい無邪気な笑顔を浮かべて言い切った。
「そんな非科学的なもの、いるわけないじゃないですか! どうせネズミが走り回る音か、隙間風の音でしょう? 前の持ち主が亡くなったわけでもないなら、気にする必要はありませんよ。賢明な商人なら、不確かな噂話よりも、目の前の『実利』を取るべきだと思います!」
中は外見以上に「終わってる」状態だった。
澱んだ空気はカビと腐敗臭のハイブリッド。床には「これ何年前の皿?」って感じの破片や、正体不明の小動物のフンが散乱し、天井からはホラー演出に欠かせない分厚い蜘蛛の巣カーテンが垂れ下がっている。
確かに、これはひどい。普通の人が見たら、悲鳴を上げて逃げ出すレベルだ。
でも、私にはチートがある。
私は建物の中央に立ち、そっと壁に手を触れた。
「《診断》!」
目の前に半透明のウィンドウが出現し、建物の構造データが表示される。
『構造:煉瓦造(レンガゾウ)二階建て。築年数:不明。状態:内装木部の腐食・汚損多数。外壁および主要構造の劣化なし。基礎:堅牢』
(……ビンゴ! 柱はしっかりしてる。梁も腐ってない。見た目がボロボロなだけで、骨格は生きてるわ!)
私は、埃まみれの厨房へと進む。
かまどは煤けているが、レンガ自体は丈夫そうだ。広さも十分。これなら、大量のジャムやクッキーを焼くのにも困らない。
さらに、裏口を開けると、そこには草ぼうぼうだが、そこそこの広さがある裏庭が広がっていた。
『わーい! お庭だ!』
コロが嬉しそうに草むらに飛び込んでいく。
日当たりも悪くない。ここならコロも退屈しないし、ハーブを育てることもできそうだ。
市場のメイン通りから一本入った静かな場所だが、アクセスは悪くない。むしろ、隠れ家的な雰囲気があって良いかもしれない。
十分な広さの厨房と店舗スペース。
コロが遊べる裏庭付き。
そして、二階には住居スペースもある。
条件は、完璧だ。
それに、普通なら、修繕費と清掃費でさらに金貨何枚も飛んでいくところだろう。
でも、私には関係ない。
(リフォーム代? 清掃費? そんなもの、私の魔法で無料だわ!)
私の脳内で、そろばんが激しく音を立てて弾かれる。
結論。
これ以上の「掘り出し物」はない。
あとは……幽霊? そんな非科学的な存在いるわけないし!
「決めたわ!」
私はくるりと振り返り、コロを呼び戻す。
「よし、コロ! ギルドへ戻ろう! 誰かに買われる前に、契約しちゃわないと!」
『はーい!』
私は、このボロ屋敷がピカピカに生まれ変わる未来図を思い浮かべながら、軽い足取りで商業ギルドへと向かって歩き出した。
◇
私は商業ギルドの『不動産管理窓口』へ、前のめりな姿勢で舞い戻った。
息を切らせてカウンターに着くと、さっきの神経質そうな職員さんが、目を丸くして私を迎えた。
「おや、もう戻られたんですか? ……ひょっとして、何か『見て』しまって逃げ帰ってきたとか……」
職員さんは「やっぱりね」といった顔で、同情するように眉を寄せる。
多分、私が恐怖に震えて泣きついてきたのだと勘違いしているのだろう。
残念ながら、私が震えているのは恐怖ではない。
掘り出し物を見つけた、武者震いだ!
私は借りていた錆びついた鍵を、カツン、とカウンターの上に置いた。
「買います! 今すぐ契約書をください!」
バンッ! とカウンターを叩いて宣言すると、職員さんは椅子から転げ落ちそうになった。
「は、はあああ!? か、買う!? あの廃墟をですか!?」
「ええ。柱も基礎もしっかりしていました。掃除と修繕さえすれば、立派な店舗になります」
「い、いや、建物の状態の問題じゃなくてですね! 幽霊ですよ、幽霊! あそこは呪われてるんです! ……それに、賃貸をお探しだったのでは!?」
「予定変更です! 幽霊、ですか?」
私はにっこりと、子供らしい無邪気な笑顔を浮かべて言い切った。
「そんな非科学的なもの、いるわけないじゃないですか! どうせネズミが走り回る音か、隙間風の音でしょう? 前の持ち主が亡くなったわけでもないなら、気にする必要はありませんよ。賢明な商人なら、不確かな噂話よりも、目の前の『実利』を取るべきだと思います!」
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