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幸せのオムライス

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第二章 ヤマネコ商会、爆誕!:電力革命! 魅惑の家電と至福のバスタイム

第149話 幽霊なんて認めません! コトリの「科学的」推理と、キレる地縛霊

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(……はいはい、今度はそっちのパターンね)

 私はガバッと布団を頭までかぶり直した。

(きっと風切り音ね。古い建物だから隙間風が入り込んで、複雑に反響して『人の声』みたいに聞こえる現象。物理学で説明がつくわ。あと、重い音は地下水脈の共鳴音。うん、そうに違いない!)

 幽霊? 認めない。絶対に認めない!
 死んだ人間が出てくるなんてエネルギー保存の法則に反している!
 神様も幽霊なんていないって言ってたし!

「よし、もう寝よう。明日はホームセンターで『最強の耳栓』を買おう」

 いや、この世界にホームセンターはないから通販か……。

 私は枕と掛布団で出来るだけ耳を塞ぐような姿勢になり、強引に意識をシャットダウンした。

 明日も忙しいんだから、変な空力音響現象に付き合ってる暇はないのだ!

  ……でも、布団にくるまっていても、なんとなく背中が寒いのは、きっと気温のせいよね?
  そうに決まってる!

 ◇

 その頃、枕元では女将の霊が、必死の形相でコトリの耳元に囁きかけていた。

「……うらめしや……出ていけ……ここは私の店だ……私の財産だ……」

 しかし、コトリは気持ちよさそうに、すーすーと寝息を立てている。

(な、なんで起きないのよ! 普通は寒気で目が覚めるでしょ!?)

 彼女は渾身の力で冷気を放ち、床をドンドンと叩いてみた。
 だが、返ってきた反応は、寝返りと共に漏れた「……むにゃ……空力音響現象……」という寝言だけだった。

(くうりき……? 何よそれ! 呪文!?)

 女将の霊は、自身の幽霊としてのアイデンティティが揺らぐのを感じた。
 この子、鈍感すぎる。いや、鈍感を通り越して、何か強力な精神耐性でもあるんじゃないの?

(……はぁ。疲れた)

 徒労感に襲われた彼女の目に、ベッド脇のテーブルの上に置かれたフライドチキンが映った。
 そこには、まだ温かそうな衣と肉が残っており、スパイシーで香ばしい匂いが漂っている。

(……なによこれ。こんな贅沢なご馳走……)

 彼女の脳裏に、コトリたちが笑顔でジューシーな肉を頬張っていた光景が蘇る。
 肉汁が溢れ、カリッという音が響く、幸せな食事。

(ふん、私が生きていた頃だって、こんな良い思いはできなかったというのに……。どうして、こんな小娘が……。あのお金も、こんな美味しそうな料理も、本当なら全部私のものだったはずなのに……!)

 女将の霊は、コトリの寝顔とチキンを交互に見つめ、憎々しげに怨嗟をたぎらせた。

 ◇

 ヤマネコ商会の定休日。
 週休二日制を掲げる我が社では、今日はリアちゃんとミアちゃんにはしっかりと休んでもらっている。

 昨日の帰り際、二人は「明日は孤児院のみんなが来るんですよね? 私たちも手伝いましょうか?」「準備とか、大変でしょうし……」と申し出てくれたけれど、私はそれを丁重に、かつ断固としてお断りした。
 疲労は美容の敵だし、何よりホワイト企業(自称)として、休日は絶対遵守なのだ。オンとオフの切り替えこそが、良い仕事を生むのよ!

 というわけで、今日のスタッフは私一人。
 ……ではなく、強力な助っ人(ホスト役)として、リックには来てもらっている。まあ、彼の場合は、招かれる側のゲストとしての参加でもあるけど。

「わあ……! すっげー! 本当にお城みたいだ!」
「ここがコトリの店かよ!」

 ドアを開けた瞬間、元気な声が弾けた。
 目を輝かせているのは、レオとルーク、アンナ、そしてエミリーたち孤児院の子供たちだ。
 引率のマーサ院長が、「こら、騒ぐんじゃないよ。よそ様のお店なんだからね」とたしなめているけれど、その口元も少し緩んでいるように見える。

 今日は、孤児院を出る時にエミリーと交わした、「美味しいお菓子をたくさん食べさせてあげる」という約束を果たすための、貸切お茶会だ。
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