AI設計投資 ── 50万から始めて毎月5万円利確。生活が静かに楽になる投資の話

ぬこまる

文字の大きさ
1 / 13

プロローグ 会社と家の往復のなかで

しおりを挟む
朝、目覚ましが鳴る。
まだ薄暗い部屋で、俺は布団の中から腕を伸ばし、スマホを止めた。何度も繰り返してきた動作だ。

起きる。顔を洗う。スーツに袖を通す。

キッチンでは妻が朝食の準備をしている。

「いってらっしゃい」
「いってきます」

特別な会話はない。でも、このやり取りがあるだけで、一日はちゃんと始まる。

娘はまだ寝ている。中学二年生だ。最近は、朝に顔を合わせることも少なくなった。昨日は「今度スタバ行っていい?」と聞かれ、「いいよ」と答えた。少しだけ考えたあとで。



会社に向かう電車の中。
スマホを開くと、相変わらず投資系の動画が流れてくる。

「この銘柄は来る」
「初心者でも勝てる」
「今が最後のチャンス」

どれも強い言葉だ。でも、なぜか胸がざわつく。

俺は投資の才能がある人間じゃない。特別な情報網もないし、人脈もせいぜい会社の同僚くらいだ。それなのに、みんなが「簡単に勝てる」と言う。その違和感を、ずっと見ないふりをしていた。



昼休憩。
給湯室で、コンビニのおにぎりを二つ買う。鮭と昆布。合計238円。値引きシール付き。この組み合わせも、もう何年になるだろう。

向かいでは同僚の高橋がスマホを見ている。袖をまくった腕に、やけに目立つ腕時計。

「それ、どうしたんですか?」

後輩の女子社員、あやちゃんが聞いた。耳にかけたボブヘアが可愛らしい。

高橋は少し照れたように笑う。

「株で、一発当てちゃってさ」

場が一瞬ざわつく。

「マジで?」
「すげえな」

高橋はYouTubeの名前を出した。

「のび塾ってあるじゃん。あそこで言ってた銘柄」

俺はおにぎりをかじりながら、何も言わなかった。ただ、腕時計を見ていた。



夜。家に帰る。
風呂に入って、食事をして、テレビをつける。

娘は動画を見ながら笑っている。妻はソファに座ってスマホを眺めている。穏やかな時間だ。

でも、俺の頭の中には別の数字が並んでいた。
住宅ローン。車のローン。保険。教育費。

電卓を叩かなくても、だいたいの感覚は分かる。
このままじゃ、余裕はない。

破滅するわけじゃない。でも、安心もしない。

「じわじわ詰む」

そんな言葉が、ぴったりだった。



その夜、妻が言った。

「今月、美容院行っていい?」

一瞬、頭の中で数字が動いた。でも、口から出たのはいつもの言葉だった。

「いいよ」

娘が言う。

「修学旅行、お土産何がいい?」
「何でもいいよ」

言いながら、胸の奥が少しだけ重くなる。
俺は、ちゃんと守れているのか?



ソファに座って、スマホを開く。
YouTube。投資。成功談。

でも、どれも「当たった話」ばかりだ。外した話は、ほとんど語られない。

「なあ……」

俺は、ふと別のアプリを開いた。ChatGPT。最近、名前だけはよく聞くようになった。

「株って、どれを買えばいい?」
返事はすぐに来た。
「お答えできません。」

一瞬、ムッとする。
聞き方を変える。

「この株、上がる?」
「将来の株価は予測できません。」

「勝てる?」
「勝敗の定義が不明確です。」

そして画面に表示された一文。

「本日の無料利用回数の上限に達しました。」

ここで? 人生について考え始めたところで?

俺はスマホを見つめたまま、少し笑った。でも、なぜか腹は立たなかった。むしろ、胸の奥で何かが引っかかっていた。



その夜、家族が寝静まったあと。
俺はもう一度ChatGPTを開いた。

課金画面が出る。金額は、家族で外食一回分くらいだ。一瞬、迷った。

でも、娘の顔が浮かんだ。妻の「いってらっしゃい」の声が浮かんだ。

これは浪費じゃない。家族を守るための投資だ。
そう思って、指を置いた。



「なあ」
「はい」

同じ返事なのに、少しだけ重みがある気がした。

「俺、家族を守りたい」

少し間があって、返事が来る。
「目的が明確です。それは、とても良いことです。」

「じゃあ聞く」

俺は深呼吸して言った。

「株って、なんでこんなに人を疲れさせるんだ?」

返事は、思っていたものと違った。

「それは、株式市場の前提を誤解している人が多いからです。」

……前提?

「どういう意味だ?」

少し間があって、こう続いた。

「株式市場は、最初から当てる人のために作られていません。」

「……は?」

俺は思わず声を出した。

「じゃあ、何のためなんだ?」

返事は短かった。

「失敗しても、続けられる人のためです。」

胸の奥で、何かがカチッと音を立てた。

「それを理解するには、少し昔の話をする必要があります」
「昔?」
「はい。中世ヨーロッパです。」

俺はソファにもたれた。
株の話が、まさかここから始まるとは思っていなかった。でも、なぜか続きを聞きたいと思っていた。

この本は、ここから始まる。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

現世にダンジョンができたので冒険者になった。

盾乃あに
ファンタジー
忠野健人は帰り道に狼を倒してしまう。『レベルアップ』なにそれ?そして周りはモンスターだらけでなんとか倒して行く。

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...