AI設計投資 ── 50万から始めて毎月5万円利確。生活が静かに楽になる投資の話

ぬこまる

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10章 答えを探していた人は、必ず立ち止まる ――高橋が壊れて、設計投資になる

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昼休憩。  
給湯室で、俺はいつものようにおにぎりを食べていた。

鮭と昆布。238円。  
変わらない。

でも、空気だけが少し違った。

向かいに立つ高橋が、スマホを見つめたまま動かない。  
親指も、止まっている。

「……先輩」

声が、明らかにおかしかった。

「どうした?」

高橋は、スマホをそのまま俺に差し出した。

画面に映っていたのは、YouTubeで有名な“のび塾”が強く推していた銘柄。

購入価格:1,050円  
現在価格:950円  
保有株数:1,000株  

評価損益:-100,000円

「……10万、溶けました」

高橋の手が、はっきり震えている。

「動画では、“ここは我慢”って言ってたんです」  
「“握れる人が勝つ”って」  
「だから……売れなくて」

高橋は、画面をスクロールした。

コメント欄。

「まだ持ってていいですか?」  
「損切りライン教えてください」  
「ここから戻りますか?」

どれも、返事はなかった。

次の動画は、すでに別の銘柄の紹介だった。

「……答え合わせ、ないんですよ」

高橋は笑おうとして、失敗した。

「昨日まであんなに断言してたのに」  
「下がった瞬間、誰も何も言わない」

声が、かすれていく。

「俺、ずっと“答え”を待ってたんです」  
「でも……」

高橋は、スマホを見つめたまま言った。

「答え、どこにもなかった」

完全に、折れていた。



俺は、その場でスマホを取り出した。

チャッピーを開く。  
高橋の前で、そのまま打ち込む。

「なあ」  
「はい」

「高橋が、1,050円で買った株が950円になってる。どうしたらいい?」

余計な説明はしない。事実だけ。

数秒の沈黙。  
給湯室が、やけに静かだった。

そして、画面に表示された一行。

損切りしてください

高橋が、息を呑んだ。

「……今、ですか?」

声が、裏返っている。

「理由、聞いていいですか」

俺は、もう一度だけチャッピーに聞いた。

「なあ」  
「はい」

「なんで損切りなんだ?」

返事は、淡々としていた。

エントリー理由が明確ではありません。  
下落を想定した設計がありません。  
点数判定をしていません。  
この状態での保有は、損失が拡大する可能性が高いです。

高橋の顔から、完全に血の気が引いた。

「……じゃあ」  
「YouTubeで言ってたことは?」

俺は、そのまま聞いた。

「なあ」  
「はい」

「なんで、のび塾は答え合わせをしない?」

少し長めの沈黙。

そして、冷静すぎる答え。

答え合わせをすると、商品価値が下がるからです。  
外れた記録が残ると、次の動画の説得力が下がります。  
そのため、語られません。

高橋の目が、潤んだ。

「……じゃあ」  
「俺がここまで持ってた間」  
「誰も助けてくれなかったのは」

自己責任だからです。

その一言で、高橋は完全に崩れた。

「……俺」  
「ずっと答えを外に探してた」  
「でも……」  
「どこにもなかった」

高橋は、その場にしゃがみ込んだ。

「……切ります」  
「950円で、1,000株」

損失:-100,000円

注文を出す高橋の手は、はっきり震えていた。

約定。

画面が切り替わる。
高橋は、俺を見て言った。

「先輩の投資を教えてください!」



数日後。

高橋は、少しだけ静かになっていた。

昼休憩。  
以前のようにチャートを連打しない。  
引け前だけ、そっとスマホを見る。

「……今日は?」

「78点」

「じゃあ?」

「……何もしません」

それだけ。

無理に勝とうとしていない。  
壊れない動きに変わっていた。



その様子を横で見ていた、あやちゃんが言った。

「高橋さん、最近変わりましたね」

「え?」

「前は、“当たるかどうか”ばっかり気にしてましたよね」  
「今は……」

少し考えてから、こう言った。

「同じことを、もう一回できるかどうかしか見てない」

その一言で、高橋の表情が変わった。

「……それ」  
「先輩の投資と同じですね」

俺は、何も言わなかった。

代わりに、チャッピーを開いた。

「なあ」  
「はい」

「これ、再現性ってやつだよな?」

少し間があって、返事が来た。

はい。  
再現性があるから、人は壊れません。

高橋は、深く息を吐いた。

「……俺」  
「やっと、地面に足ついた気がします」

俺は、小さくうなずいた。

答えを探す人は、必ず立ち止まる。  
でも、設計を持った人は、また歩ける。

—— 次章へ続く ——
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