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3 マッチングクエスト③
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グォォォオオオオ!
ボスゴブリンが咆哮する。
地響きが鳴り、空間が波動し、俺、ミルク、モツナベは身体が震えて動けなくなった。
しかし、ヴェリタスだけは関係ないとばかりに攻撃をしている。
『このモンスター硬いです……あと2分しか時間がないので倒せないかも……』
斬撃を繰り出すヴェリタスだが、その心は諦めかけている。
ミルクが冷たい目で俺を見つめていた。やべぇ……。
「ツッチーさんがもっと早く来ていれば、ボスゴブリンの出現も早かったかもしれないっすね」
「す、すいませんでしたぁぁぁ」
俺は土下座をした。
『笑』
あ、ヴェリタスが笑っているようだ。さらにテキストチャットはつづく。
『ボスゴブリンの弱点はどこですか? 知っている方いませんか?』
ハッと何かに気づいたモツナベは、ぷるんと大きなおっぱいを揺らした。
「きっとゴブリンといっしょで後頭部だと思います!」
低い声と身体があってねぇ……。
しかし、ヴェリタスには希望の光が見えたようだ。
『では、とりあえず足を攻撃してダウンさせましょう!』
了解! とモツナベは言って、ボスゴブリンの足を攻撃した。ダメージは与えられているようだ。
ウォォォォ!
ボスゴブリンが悲鳴をあげながら反撃をする。
大きな拳がモツナベにあたる。HPが大幅に減少した。
「痛って~」
するとミルクがポーションを取り出し、モツナベを回復させる。なかなかいいコンビだ。ミルクは弓で攻撃をする。3本の矢が放たれた。
しかし、やはりノーダメージだった。
「くっそー!」
悔しがるミルク。
ただの空気の俺だけど、ちょっと疑問がわいた。
「ミルクさん、武器を変えたらどう?」
「あ? マッチングクエストには、ひとつしか武器を装備できないの! そんなことも知らないんすか」
「す、すいません」
「ったく、ちゃんと取説を読んでからゲームしろよ」
「は、はい」
「だいたい裸でVRMMOをうろつくなんてキモすぎっすよ、しかもその仮面なんすか? カオナシじゃん」
「……な、なんか土魔法の力が爆上げするアイテムらしくて」
「あんたね、そうゆうイカれたアイテムを試すなら、ソロでやれ……って、ん? あああああ、時間がなーい!」
1:05
残り時間が、あと1分を切ろうとしていた。
ヴェリタスの顔色が変わる。攻撃は有効そうだが、やはり硬いようで手応えを感じられずにいる。
双剣を振るモツナベは、ボスゴブリンの攻撃をかわすほうで精一杯のようだ。ふたりは冷静に戦況を語っていた。
「こいつを倒すには攻撃を受け持つタンク役がいるな。盾持ちの戦士なんかがいい」
『そうですね……』
「ヴェリタスさん、フレンド申請してもいいですか? 今度、俺がタンク役やりますから」
ふーん、こうやって仲間を増やしていくわけね。
ミルクの顔は、意気揚々としていた。
「僕は武器を強くしてくるっす」
沈黙するヴェリタスは、後方に飛ぶと、カチンと刀を鞘に納める。その位置は、俺とミルクのすぐ近くだ。
『すいません、私、野良しかやったことないので……今はまだちょっと……』
いえいえ、いいっすよ、と言ってミルクが苦笑い。
モツナベは、悔しさをぶつけるようにボスゴブリンに攻撃していた。
残り時間、あと40秒。ヴェリタスは目を閉じて精神を統一する。
『大技をやってみます。三日月宗近の耐久が落ちるので、あまりやりたくないのですが……』
刀が青く光り輝いている。
すさまじいパワーが溜まっているようだ。どこかで見たような抜刀術。しかし、弱点の後頭部に当てなくてもいいのか?
「ありがとう! ダウンさせるように頑張ってみる!」
モツナベは健気に攻撃を加速させる。
『お願いします。この技、時間がかかるんです』
ヴェリタスの身体から、ブワッーと魔力がみなぎる。
ミルクは何もできず、ゴクリと唾を飲んだ。緊迫した状況のなか、ハラハラ、ドキドキしているようだ。こんなこと日常では味わえない。これがあるからVRMMOは、ハマる。正直、戦闘を見ているだけでも面白い。
「おおおお!」
叫ぶモツナベは、サッとボスゴブリンの拳をかわした。そして、ぐるっと回転しながら斬る。
ボスゴブリンの足は血だらけで、今にも倒れそうだが、どうだろう、ダウンできるだろうか?
00:20
00:19
まるで時限爆弾のように数字が減っていく。
モツナベとヴェリタスは、残り時間をかなり気にしていた。
『ダウンできそうですか?』
「わからない、もしかしたら両足を攻撃しないと無理かも」
『了解です。残り10秒で大技を放ちます!』
00:15
00:14
モツナベの攻撃が、ボスゴブリンの反対の足に移った。
「硬い! ごめんヴェリタスさん、ダウンは無理そうだ」
冷たい風が吹いている。美しい侍のポニーテールがゆれていた。
グォォォォォ!
ボスゴブリンの咆哮によって、モツナベは戦意を失う。
そして、荒れ狂うモンスターはヴェリタスに狙いを定めて突進を開始した。ドシン、ドシン、と地響きがあがる。しかし次の瞬間、信じられないことが起きた。
ブゥオオオオオーン!
ボスゴブリンが転んだ。
巻きあがる砂埃の地面をよく見ると、なんとボスゴブリンの足が大きな穴に落ちているではないか!
「やった! ラッキーたぜ!」
「なにこれー! こんなことあるんすねー! エグっ!」
ダウンしたボスゴブリンは、踏ん張って何とか立ちあがろうとするが、足が穴にハマって抜けない。
00:10
『いきます!」
ヴェリタスは疾走し、回転を加えながら、渾身の力を込めて抜刀した。
青い光りがスパークする。すさまじい魔力が放出し、周辺の雰囲気が、ガラッと変わった。突然、なぜか夜の帳が下りている。
【三日月宗近 満月斬】
黄金色に円を描いた斬撃が、ボスゴブリンの後頭部に直撃する。
圧倒的な攻撃力だった。99999のダメージを数回ほど連発すると、凶暴な魔物はデジタル粒子となって霧散していく。
マッチングクエスト ゴブリンの討伐 クリア
青い空に、そのような大きい文字が浮かぶ。
すると各プレイヤーに経験値が入り、俺はレベル3にアップした。
「よっしゃー!」
「あざっす、ヴェリたそ~」
ヴェリタスはこの日、初めて笑顔を見せた。
『笑』
ボスゴブリンが咆哮する。
地響きが鳴り、空間が波動し、俺、ミルク、モツナベは身体が震えて動けなくなった。
しかし、ヴェリタスだけは関係ないとばかりに攻撃をしている。
『このモンスター硬いです……あと2分しか時間がないので倒せないかも……』
斬撃を繰り出すヴェリタスだが、その心は諦めかけている。
ミルクが冷たい目で俺を見つめていた。やべぇ……。
「ツッチーさんがもっと早く来ていれば、ボスゴブリンの出現も早かったかもしれないっすね」
「す、すいませんでしたぁぁぁ」
俺は土下座をした。
『笑』
あ、ヴェリタスが笑っているようだ。さらにテキストチャットはつづく。
『ボスゴブリンの弱点はどこですか? 知っている方いませんか?』
ハッと何かに気づいたモツナベは、ぷるんと大きなおっぱいを揺らした。
「きっとゴブリンといっしょで後頭部だと思います!」
低い声と身体があってねぇ……。
しかし、ヴェリタスには希望の光が見えたようだ。
『では、とりあえず足を攻撃してダウンさせましょう!』
了解! とモツナベは言って、ボスゴブリンの足を攻撃した。ダメージは与えられているようだ。
ウォォォォ!
ボスゴブリンが悲鳴をあげながら反撃をする。
大きな拳がモツナベにあたる。HPが大幅に減少した。
「痛って~」
するとミルクがポーションを取り出し、モツナベを回復させる。なかなかいいコンビだ。ミルクは弓で攻撃をする。3本の矢が放たれた。
しかし、やはりノーダメージだった。
「くっそー!」
悔しがるミルク。
ただの空気の俺だけど、ちょっと疑問がわいた。
「ミルクさん、武器を変えたらどう?」
「あ? マッチングクエストには、ひとつしか武器を装備できないの! そんなことも知らないんすか」
「す、すいません」
「ったく、ちゃんと取説を読んでからゲームしろよ」
「は、はい」
「だいたい裸でVRMMOをうろつくなんてキモすぎっすよ、しかもその仮面なんすか? カオナシじゃん」
「……な、なんか土魔法の力が爆上げするアイテムらしくて」
「あんたね、そうゆうイカれたアイテムを試すなら、ソロでやれ……って、ん? あああああ、時間がなーい!」
1:05
残り時間が、あと1分を切ろうとしていた。
ヴェリタスの顔色が変わる。攻撃は有効そうだが、やはり硬いようで手応えを感じられずにいる。
双剣を振るモツナベは、ボスゴブリンの攻撃をかわすほうで精一杯のようだ。ふたりは冷静に戦況を語っていた。
「こいつを倒すには攻撃を受け持つタンク役がいるな。盾持ちの戦士なんかがいい」
『そうですね……』
「ヴェリタスさん、フレンド申請してもいいですか? 今度、俺がタンク役やりますから」
ふーん、こうやって仲間を増やしていくわけね。
ミルクの顔は、意気揚々としていた。
「僕は武器を強くしてくるっす」
沈黙するヴェリタスは、後方に飛ぶと、カチンと刀を鞘に納める。その位置は、俺とミルクのすぐ近くだ。
『すいません、私、野良しかやったことないので……今はまだちょっと……』
いえいえ、いいっすよ、と言ってミルクが苦笑い。
モツナベは、悔しさをぶつけるようにボスゴブリンに攻撃していた。
残り時間、あと40秒。ヴェリタスは目を閉じて精神を統一する。
『大技をやってみます。三日月宗近の耐久が落ちるので、あまりやりたくないのですが……』
刀が青く光り輝いている。
すさまじいパワーが溜まっているようだ。どこかで見たような抜刀術。しかし、弱点の後頭部に当てなくてもいいのか?
「ありがとう! ダウンさせるように頑張ってみる!」
モツナベは健気に攻撃を加速させる。
『お願いします。この技、時間がかかるんです』
ヴェリタスの身体から、ブワッーと魔力がみなぎる。
ミルクは何もできず、ゴクリと唾を飲んだ。緊迫した状況のなか、ハラハラ、ドキドキしているようだ。こんなこと日常では味わえない。これがあるからVRMMOは、ハマる。正直、戦闘を見ているだけでも面白い。
「おおおお!」
叫ぶモツナベは、サッとボスゴブリンの拳をかわした。そして、ぐるっと回転しながら斬る。
ボスゴブリンの足は血だらけで、今にも倒れそうだが、どうだろう、ダウンできるだろうか?
00:20
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まるで時限爆弾のように数字が減っていく。
モツナベとヴェリタスは、残り時間をかなり気にしていた。
『ダウンできそうですか?』
「わからない、もしかしたら両足を攻撃しないと無理かも」
『了解です。残り10秒で大技を放ちます!』
00:15
00:14
モツナベの攻撃が、ボスゴブリンの反対の足に移った。
「硬い! ごめんヴェリタスさん、ダウンは無理そうだ」
冷たい風が吹いている。美しい侍のポニーテールがゆれていた。
グォォォォォ!
ボスゴブリンの咆哮によって、モツナベは戦意を失う。
そして、荒れ狂うモンスターはヴェリタスに狙いを定めて突進を開始した。ドシン、ドシン、と地響きがあがる。しかし次の瞬間、信じられないことが起きた。
ブゥオオオオオーン!
ボスゴブリンが転んだ。
巻きあがる砂埃の地面をよく見ると、なんとボスゴブリンの足が大きな穴に落ちているではないか!
「やった! ラッキーたぜ!」
「なにこれー! こんなことあるんすねー! エグっ!」
ダウンしたボスゴブリンは、踏ん張って何とか立ちあがろうとするが、足が穴にハマって抜けない。
00:10
『いきます!」
ヴェリタスは疾走し、回転を加えながら、渾身の力を込めて抜刀した。
青い光りがスパークする。すさまじい魔力が放出し、周辺の雰囲気が、ガラッと変わった。突然、なぜか夜の帳が下りている。
【三日月宗近 満月斬】
黄金色に円を描いた斬撃が、ボスゴブリンの後頭部に直撃する。
圧倒的な攻撃力だった。99999のダメージを数回ほど連発すると、凶暴な魔物はデジタル粒子となって霧散していく。
マッチングクエスト ゴブリンの討伐 クリア
青い空に、そのような大きい文字が浮かぶ。
すると各プレイヤーに経験値が入り、俺はレベル3にアップした。
「よっしゃー!」
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『笑』
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