土魔法で無双するVRMMO 〜おっさんの遅れてきた青春物語〜

ぬこまる

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16 クラフト②

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「トマホークちゃぁぁぁああんんん!!」

 ここはコーデリア草原地帯の北。
 盾を持った戦士マクドが、うろうろと幽霊のようにさまよっている。ぶらりと垂れ下がった右手が、ピクピクと何かを求めるように疼く。愛用していた斧が消えたのだ。その心境は哀しみと無念でいっぱいであった。

「どこいったんやぁぁぁぁ!!」

 どれくらい探し歩いていたのだろう。
 コマンド画面を開けば空腹のマークが点滅している。そろそろ何か食べないと飢え死にしてしまう。しかしアイテムボックスにあった食料はすべて食い尽くしてしまった。

「フルゴルに戻らな……」



 一方、そのころツッチーは……。



「あーん……おいしぃぃぃ!!」

 パクッと大きなウィンナーを頬張る少女エルフことミルク。
 そんなに口を開けたら、ぷるぷるな唇が色っぽく見えてしまうぞ。

「ツッチーさん、この商店街で食材を買うといいっすよ~もぐもぐ……屋台の飯は最高ぉぉぉ!」
「わかりました。でも俺、200ポイントしかないですよ」
「もぐもぐ……貧乏すぎっすね……もぐもぐ」
「ええまぁ、ところで料理ってどこでするんですか?」
「キャンプとかハウスっすね」
「すごーい! 勉強になります!」
「わははは、なんでも聞きたまえ~」

 褒めると調子に乗るタイプだな、ミルクって。
 よし、このまま俺の装備を買ってもらおう。

「あの、ところで俺に似合う装備ってどこにあるんですか?」
「こっちっすよ~」

 くいくい、と手招きするミルク。
 向かった先には、きらりと光るガラス張りの高級そうな店があった。ショーケースには、ずらりと宝石が散りばめられた貴金属が並べられている。

「ミルクさんはすごいなー! こんな素敵な店を知ってるなんて!」
「まぁね! 僕くらいレベルがあがると高級な店で買い物できるんすよ」
「かっこいいな~、おっさんはずっと裸ですよ~とほほ」

 ミルクは、ずかずかと店の中に入っていく。
 まるで紳士服の仕立て屋だ。髭の生えた強そうな店主が深々と頭を下げていた。

「ツッチーさん、これっす!」

 じゃーん、とミルクが指をさす。
 その先には、グララララ……と禍々しいオーラを放つ黒装束があった。呪術的な刺繍がされたパンツとジャケットのセットアップ。漆黒に光るマントが魔族っぽい。うわぁ、こんなの仮面をつけた俺が装備したら、タキシード仮面様もびっくりだよ!

「黒装束ナイトメアです」

 店主が手を添えて説明してきた。
 えっへん、とミルクは偉そうに腰に手を当てている。
 
「魔力アップ! 瞬発力アップ! 詠唱時間の短縮! おまけにすべての魔法属性に耐性がある魔法使い最強の装備っす!」
「すげー! ありがとうございます! ミルクさーん!」
「うんうん! これを装備してメインクエストやろうっす! モツも喜ぶっす!」
「そうですね、モツナベさんも認めてくれるかも! 本当にありがとうございますミルクさん!」

 きゃっ、きゃっと俺たちがはしゃいでいると、ぬっと店主が間に入ってきた。

「800,000ポイントです。お支払いはどちらですか?」
 
 スッと俺はミルクを指さした。
 店主は会計処理を始める。
 
「ちょちょちょっ! なんで僕が買うことになるんすかぁぁ!」
「え? プレゼントしてくれると思ってました」
「そんなわけないっすよ! ダメダメダメダメぇぇぇぇ!」

 ブブー

 残念な音が店内に鳴り響く。
 やれやれ、と店主は困った顔をした。

「申し訳ありませんが、793,000ポイント足りません」

 ほっと安心するミルク。
 チッ、資金が不足していたか。

「あっぶねー! パパ活のパパになった気分っすよ……」
「ミルクさん、7000ポイントしかないんですね」
「200ポイントの人に言われたくないっすよぉっ!」
「それよりパパ活はダメです」
「やってないっすよー! ああんもう、ああ言えばこう言うぅぅ」

 ぽこすか、と少女エルフに殴られる、俺。
 ぜんぜん痛くないけど謝っておこう。

「ごめんごめん」
「ばーか! ばーか! ばぁぁぁかっ!」

 あはは、こんなふうに友達とじゃれあうなんて、学生のころ以来だわ。
 すると店主につまみ出された。まるで猫みたいに。尻もちをついたミルクのスカートがめくれ、チラッとパンツが見えている。うーん、良い眺めだ。

「いててて……」
「ミルクさん、俺、決めました」
「どうしたんすか? 急に」
「黒装束ナイトメア、必ず手に入れます!」
「うん、応援してるっすよ」
「それとミルクさん、パンツが見えてますよ」
「うわぁぁぁ! 見るなぁぁぁああ!!」

 すくっとスカートを抑えて立ち上がるミルク。
 大きなボタンが特徴的なジャケット。純白のフリルがついたスカート。こうしてみると、ミルクはおしゃれな装備をしているよな。

「何っすか? ジロジロみて……」
「ミルクさんの装備、可愛いですね」

 はっと目を丸くするミルク。
 どした? 俺、変なこと言ったか?

「かっこよすぎるんすよぉぉ、声が……」
「え? そうなんですか?」
「モツも低くてイケボっすけど、ツッチーさんの声は甘い優しさがあって……魅力的っす」
「あ、ありがとう……ミルクさんも子どもっぽくて素敵だよ」
「あざっす……」

 なんか照れくさいな。
 幼女エルフが、顔を真っ赤にしている。

「金策するっすか……」
「え?」
「ポイントを集めるっす!」

 ミルクは走り出す。
 向かった先は、華やかな商店街のメインストリートから横にそれた道。異形な亜種族たちも歩いている。エルフ、ドワーフ、ブラウニー。小さな妖精ピクシーが目の前を飛んでいく。

「ミルクさん……ここは?」
「人間と妖精の文化が融合した街、ウトピアっす」
「す、すごい!」
「ここの盗品商なら色々なものを買ってくれるっす。もちろん、いわくつきの物まで……」

 少女エルフは、ニヤッと微笑んでいた。



 一方、そのころ戦士マクドは……。


「もぐもぐもぐ! ガツガツガツ! はぁー、食った食ったぁぁぁ」

 屋台のベンチに座り、大量に飯を食っていた武器を愛する戦士マクド。
 彼の瞳は一瞬、信じられないものを目撃した。

「あ、あれは仮面男! うぇぇぇ!? なんでや!? ヴェリタスさんやなく、可愛いエルフと遊んどる! モテモテやないか~い!」

 追いかけたい気持ちを、ごくりとお茶を飲んで濁し、急いで皿を片付ける。屋台の店主は感心していた。

「ありがとよ~」
「ごちそうさん!」
「どうした? そんなに慌てて」
「いた! 仮面男がいた! 待たんかーい!」

 大きな声をあげ、ドタバタと走り出す戦士マクドであった。




☆。.:*・゜☆。.:*・゜

 どうも、作者のぬこまるです。
 ここまで読んでくれてありがとうございます。この作品は、大人になっても友達ができたらいいな、と思いながら執筆してます。よかったらお気に入り登録&感想よろしくお願いします!
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