土魔法で無双するVRMMO 〜おっさんの遅れてきた青春物語〜

ぬこまる

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17 クラフト③

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「さあツッチーさん、アイテムボックスを開くっす」

 にっこにこで手を差し伸べるミルク。
 俺の目の前には石の妖精トロルがいた。ジャガイモみたいな顔をしている。

「小僧、何を売ってくれる?」
「えっと……じゃあ、ボスネロピーの蔓を……」

 するとミルクが蔓を奪おうとする。

「え? 何するんですか?」
「それは僕にください」
「金策するのでは?」
「それは僕に、く、だ、さ、い!」
「わかりましたよ……」

 蔓を渡すとミルクは、ぴょんぴょんと飛び跳ねた。

「わーいわーい! これで弓を強化できるっすぅぅ!」
「強化?」
「はい、特定の素材で武器や防具は強くできるっす! あとデザインや色も変えられるっす! ほら、僕のトリプルアローを見て」

 3本の矢が放たれるボーガンタイプ。
 真紅の鳥がデザインされてあり、強化の星が3つあった。

「このプロテルの世界で僕だけのものっす!」
「すごーい!」

 まぁね、えっへん、とミルクは偉そうにふんぞりかえる。
 石の妖精トロルが、はぁ、とため息を吐いた。

「あんたら、遊ぶんならほかでやれや」

 慌てるミルクは俺のアイテムボックスを指さす。

「他にないっすか?」
「それなら……斧かな」

 戦士マクドが置いていった斧だ。
 それを出した瞬間、トロルが吠えた。
 
「おおおおおお! それは獅子王トマホークじゃあないか! しかも星5まで強化されてある! ぜひ売ってくれ! 1,000,000ポイントでどうだ?」

 店のカウンターから身を乗り出すトロル。
 ミルクと俺は、びっくりして抱き合ってしまった。これを売ったら黒装束ナイトメアを買ってもお釣りがくるぞ。
  
「高いっすね! ツッチーさんいつの間にこんな高級品を!」
「あはは、拾ったんです」

 するとそのとき、ドタバタと誰かが走ってきた。

「トマホークちゃぁぁぁああんん!」

 盾を持った戦士だ。
 きょとんとするミルクは質問した。

「誰っすか?」
「この人はマクド。ちょっと前に対戦したんです」
「ふーん、ハンバーガーみたいっすね」
「関西のね……あ、店主、売るのはキャンセルします」

 え? そんな~と汗をかく店主トロル。
 俺は斧を振った。切先を戦士の顔面で止めておく。

「マクドさん、忘れ物です」

 わなわな、と震えるマクドは斧を受け取った。
 よほど探していたのだろう。斧を抱いて男泣きしている。ミルクは、やれやれと肩をすくめていた。

「これは売れないっすね」
「売ろうとしたことは内緒でお願いします」

 俺とミルクは小声で話した。
 やっと落ち着いた戦士マクドは立ち上がると、ぺこっと頭を下げる。

「拾うてくれてありがとぉ」
「いえいえ、あのまま放置していたらいつか魔法が解けて、誰かに拾われてしまいますから」
「……し、し、師匠と呼んでええですか?」

 え? 俺とミルクは目を丸くした。
 戦士マクドは潤んだ瞳で上目使いをする。圧が、圧がすごい……。

「ヴェリタスさんだけやなく、こんな可愛ええエルフとも友達なんて……わいの完全に負けや」
「は、はぁ……」
「それと師匠! 武器に毒をつけるやり方、わいに教えてくれへん?」
「いいですよ。じゃあ、ボビーの工房に行きましょう」

 可愛ええエルフと呼ばれて、ミルクは嬉しそうだ。
 俺と戦士マクドは歩き出した。

「あ! 僕も行くっすよ~! っていうかツッチーさん、金策はいいんすか?」

 振り向きざまに俺は答えた。

「ま、なるようになるさ……」

 ぽっとミルクは顔を赤く染め、何やらつぶやいていた。

「くそっ……だんだん、かっこよく見えてきたっす……」
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