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2章-「厄災」との出逢い

2-ルシファーさんの負の力を浄化してみる

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「ふう」
『でももしかしたらまた魔物が出てくるかもしれないから武器は持っててね』
アズラーイールさんのありがたい助言を受け、武器を持参してきた。
「………本当に来たんだ」
「まあ、ああ言いましたし。
誰が言ったかは知りませんが、私はあくまで有言実行派なので!」
「…………ふふ、結構変わった子なんだね」
「なんですかそれ、褒めてるんですか?」
「もちろん、キミみたいに変わってる子は初めてだから接し方に悩んでるの」
「普通に接してください。
こんなんでも元令嬢なので割と順応できるんですよ」
「そう?じゃあ普通でいっか」
「ええ、気楽にいきましょう。
………そういえば、私解呪したことあるんですよ。なのでそれと同じように負の力もちまちま回復できますかね」
「オレに聞かれても…。
まあ、やるだけなら別にいいよ。オレにメリットは有ってもキミにメリットはないけど」


「うーん…できませんねぇ…。
多分、負の力を取り除いたらまた新しいのが入ってきて、それでもまだ入ってくるから段々負の力を貯めれる器が強制的にどんどん広くなってるんだと思います。」
「そうなんだ。
じゃあ周期が短く、けど強くなってるのはそのせいかな」
「ええ、多分」
「オレ、死ぬと思う?」
「私も色々調べたんですけど、ラファエル希少な天使がいる代はルシファーが死んだと記述されてませんでした。
なので私は未熟ですけど、絶対にルシファーさんを死なせたりしません」
「………心強いよ、ありがとう」
「いえいえ。……では、また来ますね。」
「ね、次はいつ来てくれる?」
「そうですね…二日後には来ます」
「うん、じゃあね」
きっと独りが慣れているつもりでも、心では人の温もりを欲していたのだろう。
ならば、私が温もりをあげなければ。
人は、人の温かさを感じないと心が壊れてしまう。
「明日も任務が無ければ来よう」


「え、任務…ですか?どちらへ?」
「ルシファーがいる森だ。
丁度アイツに用があったし、俺もついていく。」
「アリエルさんがついてきてくれるなら安心ですね。よろしくお願いします!」

「やっぱり、さっくり倒せますね」
「ああ。
お前が来た影響だろう。
つい最近来たときは比べ物にならないほどの強さだった。」
「…私が?」
もしかして、あの無駄と思えた負の力の浄化に意味があったのだろうか。
「なら、人の役に立てるし良いことずくめですね」
「?」
「昨日ルシファーさんに会いに行ったとき、私がアズラーイールさんの呪いを解いたように負の力も浄化できるんじゃないかって思って…やってみたんですけど、効果あったんですね」
「ふむ…負の力も浄化を恐れて弱くなったんだろう。なら喜ばしいな。」
「ええ、そうですね」
なんて会話を交わしながら森の奥まで進む。
「!」
「あっ、ルシファーさん!こんにちは」
「今日も来てくれたんだ。ありがとう」
「いえいえ。ルシファーさんが人の温もりを今まで感じられなかった分、これからはできるだけ私が来ますから」
「………うん」
「因みに今日は俺もいる」
「…げっ、アリエル…」
「二人きりじゃなくてすまんな」
とか言ってニヤニヤするアリエルさん。
一方そんなありもしないことを言われて顔が真っ赤になるルシファーさん。
「……そういえば、オレ花冠練習してきたんだ」
「花冠ですか!素敵ですね」
「一緒に作らない?」
「私でよかったら、是非」
にこ、と微笑みを浮かべる。
最近まで警戒心丸出しの猫みたいだったのに。今ではすっかり餌付けされる楽しさを知ってしまった猫だ。めっちゃ可愛がりたくなる。
まあでも私は猫相手というよりも子供を甘やかすような感じでルシファーさんに接しているんだが。


「…ん、できた」
形は歪だが、心が籠った綺麗なものだ。
「じっとしてて、被せたい」
「わかりました」
頭の上に花冠が乗る感覚がする。
「ルシファーさんからもらった初めてのプレゼントですね。大切にします」
「うん、枯れるまで大切にしてあげてね」
「…ラファエル。こっちもできた」
アリエルさんの方を向いて驚く。
「!これは腕輪ですか?」
花でできた腕輪、初めて見た。
「ああ。腕を借りるぞ」
「ええ、どうぞ」
すっ、と腕を差し出す。
「…よし」
「素敵ですね。ありがとうございます!」
私はアリエルさんに微笑む。
だが私は知らなかった。
「………」
「………ふ」
自らが歩くヤンデレ大量生産機だと言うことに…。
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