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7.ティファニーの朝食を
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【公爵 side】
妻が、殺し屋に襲われたらしい。
昨夜、宮廷医が僕にそう伝えて来た。彼女の名誉の為にも、診断書を公開するつもりだとも言っていたかな?
「奥様は、先に帰られましたよ。可哀想に、かなり混乱されていました。何かあれば私にご相談下さい。それと彼女は・・いえ、お大事にとお伝え下さい。」
「は、はぁ。・・?」
僕は初め冗談だと思ったんだ。妻が?ありえないだろ。周りがちょっと大袈裟に騒いでいるだけだってね。
それにその日は、お気に入りの愛人をパーティに連れて来ていたんだ。可愛くおねだりされちゃってね、帰宅するのが遅くなってしまった。
パーティの会場で、警備の騎士達がやたらと僕に冷たい視線を送って来ていたっけ。
一体、なんだっていうんだ。
*****************
昨夜何があったのか聞き出そうと、
ひさびさに妻を朝食に誘う。
そしてやって来た妻は・・・
何故か喪服を着ていた。
そして、にっこりと微笑んでいる?
「お、おはよう、さあ食べようか。」
「ええ、そうねぇ。」
妻の紅い唇が、美しく弧を描く。それなのに、僕を見つめる瞳が凍える程冷たかった。まるで道端の石ころでも見る様な・・
「ね、ねぇ、サンドラ??どうして喪服なんか着ているんだい?」
彼女は首を傾げて、心底不思議そうな顔をした。
「クローゼットの中身がね、芋クサい服しかなかったのよぉ?喪服が1番マシだったのぉ。」
「ヘッドドレスまで付けてかい?」
「ええ、可愛いでしょぉ。黒いベールって、なんだか未亡人みたいよねぇ?禁断の秘め事を隠しているみたい。クスクス。」
「は?」
だ、誰だ、この女は・・これは妻じゃない。
妻の顔をしているけど、仕草や身のこなし、話し方が全くの別人だ。僕はそう思ったんだ。
「き、君は・・・。」
だ、誰なんだ、コイツは。
それに言ってる事も、よくわからない。
彼女を久しぶりに、注意深くよく見てみる。
首に何か付いている?
チョーカーの下、黒いレースが透けていて、隠しきれていない。赤いなにか・・・
大きな手のアトがある。妻の首元に、酷く絞められた様な跡が。まさか、愛人の雇った殺し屋に?
「お、おい、その首。どうしたんだ?まさか、誰かに襲われたのか・・・。」
カシュクールの黒い喪服はぴったりと身体に沿い、妻のボディラインの美しさをひきたてていて、
大胆に開いた彼女の胸の谷間に、噛みつかれたような歯形が・・・。それに生々しいキスの跡も?
「んふふっ。その質問、いまさらだわぁ?」
彼女は僕を鼻で笑ってから、静かに食事を続ける。
な、なんなんだ、この態度は。それに妻は、殺し屋に何をされたんだ。ま、まさかな・・心臓がギリギリと、嫌な音を立てる。
「奥様。失礼しまーす。」
メイドのティファニーが彼女にメインの肉料理を運んで来た。そして、こっそり僕にウィンクを送る。
あのメイドは、僕の手付きの娘だ。
また、妻に小さな嫌がらせを仕掛けている。でもこれは、いつもと変わらない日常の光景だった。
肉に掛かっているのは、ナッツか?妻はナッツアレルギーなんだ、下手をすると死ぬ。
でもまぁ、妻はとても用心深いから、すぐに気がついて絶対に口にはしないんだ。
だから、大丈夫。僕は心配していない・・。
ティファニーが、悪戯っ子みたいにニヤニヤと微笑んでいる。褒めて欲しいって顔を僕に向けてくる。でも、今はそれどころじゃないんだ。
「ふざけてないで、僕の質問に答えろよ!浮気じゃないだろうな。誰だ、誰にされた!」
昨夜は愛人と過ごしたから、怒っているのか?
僕は自分の事を棚に上げて、妻を問いただす。
「んふっ。あなたが愛人とヨロしくヤッてる間にね?襲って来た殺し屋さんに、アタシ逝かされちゃったぁ。クスクス。」
妻は何でもないことの様に、皮肉を混ぜてサラリと答える。しかも、心底おかしそうに笑った。
「イイ男だったわよぉ?」
妻は僕をチラリと視界の端に入れながら、昨夜を思い出すように、真っ赤な上唇をペロリと舐めた。
そして切り分けた肉片とともに、ナッツを・・
ナッツのカケラを戸惑う事なくパクリと口にした。
美味しそうに、咀嚼を繰り返す。
嘘だろ??ナッツ、食べても大丈夫なのか?
「お、奥様?どうして・・何で、なんで食べちゃったんですかー。も、喪服だし。じ、自殺?」
ティファニーが、蒼白になって震え出した。
「どうしちゃったのぉ?2人とも、変な顔しちゃってぇ。・・・あ、ゴホッ?」
「お、おい、医者を呼べ!!すぐに。」
僕は執事に指示を出した。
「あーん。や、やだぁ、うっかりぃ。オェッ。」
『バタン!』
妻は本当に、『ついうっかり』みたいな表情をして意識を失った。一体これは、どうなっているんだ。
------------------------------
ー解説ー
『ティファニーで朝食を』
って感じの題名にしたいが為に、無理矢理メイドをティファニーと命名しました。
妻が、殺し屋に襲われたらしい。
昨夜、宮廷医が僕にそう伝えて来た。彼女の名誉の為にも、診断書を公開するつもりだとも言っていたかな?
「奥様は、先に帰られましたよ。可哀想に、かなり混乱されていました。何かあれば私にご相談下さい。それと彼女は・・いえ、お大事にとお伝え下さい。」
「は、はぁ。・・?」
僕は初め冗談だと思ったんだ。妻が?ありえないだろ。周りがちょっと大袈裟に騒いでいるだけだってね。
それにその日は、お気に入りの愛人をパーティに連れて来ていたんだ。可愛くおねだりされちゃってね、帰宅するのが遅くなってしまった。
パーティの会場で、警備の騎士達がやたらと僕に冷たい視線を送って来ていたっけ。
一体、なんだっていうんだ。
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昨夜何があったのか聞き出そうと、
ひさびさに妻を朝食に誘う。
そしてやって来た妻は・・・
何故か喪服を着ていた。
そして、にっこりと微笑んでいる?
「お、おはよう、さあ食べようか。」
「ええ、そうねぇ。」
妻の紅い唇が、美しく弧を描く。それなのに、僕を見つめる瞳が凍える程冷たかった。まるで道端の石ころでも見る様な・・
「ね、ねぇ、サンドラ??どうして喪服なんか着ているんだい?」
彼女は首を傾げて、心底不思議そうな顔をした。
「クローゼットの中身がね、芋クサい服しかなかったのよぉ?喪服が1番マシだったのぉ。」
「ヘッドドレスまで付けてかい?」
「ええ、可愛いでしょぉ。黒いベールって、なんだか未亡人みたいよねぇ?禁断の秘め事を隠しているみたい。クスクス。」
「は?」
だ、誰だ、この女は・・これは妻じゃない。
妻の顔をしているけど、仕草や身のこなし、話し方が全くの別人だ。僕はそう思ったんだ。
「き、君は・・・。」
だ、誰なんだ、コイツは。
それに言ってる事も、よくわからない。
彼女を久しぶりに、注意深くよく見てみる。
首に何か付いている?
チョーカーの下、黒いレースが透けていて、隠しきれていない。赤いなにか・・・
大きな手のアトがある。妻の首元に、酷く絞められた様な跡が。まさか、愛人の雇った殺し屋に?
「お、おい、その首。どうしたんだ?まさか、誰かに襲われたのか・・・。」
カシュクールの黒い喪服はぴったりと身体に沿い、妻のボディラインの美しさをひきたてていて、
大胆に開いた彼女の胸の谷間に、噛みつかれたような歯形が・・・。それに生々しいキスの跡も?
「んふふっ。その質問、いまさらだわぁ?」
彼女は僕を鼻で笑ってから、静かに食事を続ける。
な、なんなんだ、この態度は。それに妻は、殺し屋に何をされたんだ。ま、まさかな・・心臓がギリギリと、嫌な音を立てる。
「奥様。失礼しまーす。」
メイドのティファニーが彼女にメインの肉料理を運んで来た。そして、こっそり僕にウィンクを送る。
あのメイドは、僕の手付きの娘だ。
また、妻に小さな嫌がらせを仕掛けている。でもこれは、いつもと変わらない日常の光景だった。
肉に掛かっているのは、ナッツか?妻はナッツアレルギーなんだ、下手をすると死ぬ。
でもまぁ、妻はとても用心深いから、すぐに気がついて絶対に口にはしないんだ。
だから、大丈夫。僕は心配していない・・。
ティファニーが、悪戯っ子みたいにニヤニヤと微笑んでいる。褒めて欲しいって顔を僕に向けてくる。でも、今はそれどころじゃないんだ。
「ふざけてないで、僕の質問に答えろよ!浮気じゃないだろうな。誰だ、誰にされた!」
昨夜は愛人と過ごしたから、怒っているのか?
僕は自分の事を棚に上げて、妻を問いただす。
「んふっ。あなたが愛人とヨロしくヤッてる間にね?襲って来た殺し屋さんに、アタシ逝かされちゃったぁ。クスクス。」
妻は何でもないことの様に、皮肉を混ぜてサラリと答える。しかも、心底おかしそうに笑った。
「イイ男だったわよぉ?」
妻は僕をチラリと視界の端に入れながら、昨夜を思い出すように、真っ赤な上唇をペロリと舐めた。
そして切り分けた肉片とともに、ナッツを・・
ナッツのカケラを戸惑う事なくパクリと口にした。
美味しそうに、咀嚼を繰り返す。
嘘だろ??ナッツ、食べても大丈夫なのか?
「お、奥様?どうして・・何で、なんで食べちゃったんですかー。も、喪服だし。じ、自殺?」
ティファニーが、蒼白になって震え出した。
「どうしちゃったのぉ?2人とも、変な顔しちゃってぇ。・・・あ、ゴホッ?」
「お、おい、医者を呼べ!!すぐに。」
僕は執事に指示を出した。
「あーん。や、やだぁ、うっかりぃ。オェッ。」
『バタン!』
妻は本当に、『ついうっかり』みたいな表情をして意識を失った。一体これは、どうなっているんだ。
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ー解説ー
『ティファニーで朝食を』
って感じの題名にしたいが為に、無理矢理メイドをティファニーと命名しました。
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