置物の婚約者になにができると言うのでしょうか

置物の親から私の母親、そして私に

「ねぇ、あんた聞いてるの？」
    
    思わず受話器から耳を離したくなるぐらいの大きな声で私の母親が話している。

「あなたね、なんで渚なぎさくんを家から追い出したのよ。さっき渚くんのお母さんから電話がかかって来たわよ!!私渚くんのお母さんにどんな顔して会えばいいのよ!!」

「追い出したって……」

    私は呆れて声を出すことも出来ない。彼は勝手に出ていったのだ。私は止めこそしてないが、追い出した覚えは無い。
    まぁこんな事を母親に言ったって聞く耳を持たないだろう。

「とにかく、あんたどうするのよ。このままって訳にも行かないし……」

「それよりもお母さんは知ってるの？」

「何を？」

「あの人が働きもせず、家のことも手伝わないことだよ」

「まぁそれは、一応知ってるけど……」

「それに対してお母さんは何も思わないの？」

「えっと………ほら、渚くんはマイペースな子じゃない？だからきっと仕事をしてないのではなくて、探してるのよ。まだ自分に合った仕事を探してるんだわ。そうよきっとそう!!」

「じゃあ仮にそうだとしても、別にあの人とどうするか、私の勝手じゃない？」

「いや、だから渚くんのお母さんが……」

「お母さんは何で前からずっとそんなにあの人のお母さんとの関係を気にするの？」

「………………」

    母親は前からそうだ。私があの人と無理矢理結婚させられた時も、『渚くんとは、仲良くするのよ。絶対だからね…じゃないとわたしが……』と、こんな様なことを言っていた。
    まぁ私は母親が隠し事をていることを知っているのだが……