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1話

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「こんにちはー!!  えっと、あれ?何するんだっけ?あっ、自己紹介か!   はい、私の名前は二瓜茜ふたうりあかねです。
好きな食べ物は、主食のものです。好きな数字は7です。なんか7ってラッキーって言うからね!えっと、一年間よろしくねー!」


 自信がない。あの人よりインパクトの強い自己紹介をやる自信がない。

 なんだよ、好きな食べ物が主食って。まとまりが大きすぎるだろ!普通料理名とか言わない?あと、自己紹介で好きな数字言ってる人も初めて見たし。しかも、理由が『ラッキーって言うから』って……………なんか理由雑!

 そして何が嫌だって、あの人の次に自己紹介をやること。俺は普通の自己紹介しか準備してないぞ!まぁ、やるしか無いんだけどね………。


「えっと、僕の名前は双間 正義です。好きな食べ物は、唐揚げです。クラス全員と仲良くしたいなと思ってます。一年間よろしくおねがいします」


 特にハプニングもなく自己紹介を乗り切れた。今思うと小ボケで、好きな数字言っとっけばよかった。まぁ、もう終わったことだし、後は他の人の自己紹介を楽しむだけか。そうこう考えていると、次の人が自己紹介を始めだした。


「名前は二瓜 葵ふたうりあおいです。よろしくお願いします」

 

 えっ。えっ?あっえっ?俺は驚きが隠せない。自己紹介が短いことじゃない。(まぁ実際それにも驚いたんだけど)俺の一つ前に自己紹介した元気いっぱいな人と、今自己紹介した人が似すぎていることだ。

 もしかして時間がループして、俺が自己紹介する前に飛ばされてる?時間をループした原因はなんだ!それを突き止めなければ!

 はい、嘘です。すいません、調子に乗りました。中二病とかではないです、ほんとに。

 心のなかで、下手な小芝居をしていると、俺の前に自己紹介をした女の子が、椅子から立ち上がり話し始めた。今気づいたが、席が左隣だった。


「もう!葵、なんであの事言わないのよ!!昨日葵が『私達、双子です』って言うって家で決めたじゃん。ほら葵ちゃんと言って」

「今、茜が『双子』って言っちゃってたよ」

「えっ、うそ!」 


    どうやら家で決めてきた段取りと違ったらしく、左隣でテンパっている。そしてしばらくテンパり続けた後、席にまた座った。そして自己紹介を終え、教卓から帰ってくる女の子。

    自己紹介が終わったら自席に戻るはずなのだが、1番後ろのこの席からクラスを見渡しても空いている席が見当たらない。

 

「えっ、もしかして…………」


 予想は的中! 俺の右隣の席が空いてる。

 両隣を双子の姉妹に挟まれたこの席。なんだか嫌な予感がする。そして、俺は高校入学初日の翌日から、このフラグをゆっくりと回収していくことになる。

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