事故から始まる物語

maruta

文字の大きさ
上 下
26 / 88

大会

しおりを挟む
 ユニホームが配られて数週間が経ち大会が始まっていた。大会はトーナメント式で昨日までで3回戦まで終わっていて、この試合に勝てば決勝だった。相手は去年優勝した明峰学園で第3クォーターが終わった段階で11点差で負けていた。私たち1年生も応援席から応援していたが中々にシュートが決まらず詰まっていた。第4クオーターが始まってメンバーを見るとキャプテンが外れて代わりに京子先輩が入っていた。
 試合が始まってPGの照先輩にボールが集まる、相手も照先輩が厄介なのか2枚のディフェンスをつけていた。しかし、照先輩は上手く躱してシュートを決めて行くため3人目のディフェンスが付こうとした瞬間に京子先輩にパスをして京子先輩はそのまま3ポイントを決めて点差は近付いていた。ディフェンスも他の先輩たちと連携してパスコースを絞り上手くカットしていきそのまま速攻で決め終了間際でスコアは逆転しており、そのまま試合は終わった。
 昼休憩を挟んだあと決勝戦がある。お昼は会場内であれば自由な場所で食べていいとの事で先輩たちは各々弁当を持って自由な場所に行っていた。私はどうしようかと思って居たら詩音が声を掛けてきた。

「優希、一緒に食べよー!」

「詩音、どこで食べる?」

「んー、どうしようか」

 そう悩んでいると照先輩と飛鳥先輩が前を通っていたので一緒に食べていいか聞いてみようと詩音に言って照先輩たちの元に走った。

 優希「照先輩!飛鳥先輩!」

 照「ん?どしたん?」

 優希「お昼一緒にいいですか?」

 飛鳥「うん、いいよ~!」

 詩音「ありがとうございます!」

 いいと言われどこで食べるのかなと照先輩たちについて行くと会場の3階はコートが見えるが席は無い広場みたいになっていてその広場の端に来た。

「ここで食べようか!」

 飛鳥先輩がそう言って照先輩と飛鳥先輩が並んで座りその前に私と詩音が座った。座った所で飛鳥先輩は弁当を持っているが照先輩は手ぶらに気づいてご飯を食べないのか聞いた。

 優希「あれ?照先輩お昼はないんですか?」

 照「ん?あるよ?」

 優希「?」

 飛鳥「照の弁当はここにあるよ~」

 そう言うと飛鳥先輩は持っていた弁当の袋から弁当箱を2つ取り出した。

 優希「え、飛鳥先輩が作ったんですか?」

 飛鳥「そうだよ!」

 照「いつも弁当は飛鳥が作ってくれとるね」

 詩音「え!そうなんですか!愛妻弁当じゃないですか!」

 照「?」

 飛鳥先輩が弁当を作ってあげているのに驚いていると詩音が愛妻弁当などと言い出して照先輩は何言ってるんだと困惑した顔をしていた。お昼を食べて先輩たちと話していると照先輩が左腕に付けているリストバンドが試合中のと違うなと思い聞いてみた。

 優希「照先輩のリストバンドチームのやつじゃ無いですよね?」

 照「ん?そうやね、これは個人の」

 詩音「え!その刺繍かっこいいですね!」

 照「やろ!お気に入りやね!」

 詩音「へぇー!どこで買ったんですか?」

 照「これは貰い物」

 詩音「え?」

 照先輩のリストバンドには鳥の柄が刺繍されていて詩音がどこで買ったか聞くと貰い物だと言いながら飛鳥先輩の方を見ていた。

 飛鳥「うん、私が刺繍してあげたやつだよ」

 詩音「えぇ!?めっちゃ上手ですね!?」

 飛鳥「ありがとう!」

 優希「でも、なんで鳥なんですか?」

 飛鳥「・・・」

 優希「?」

 なぜ鳥の柄なのか聞いたら飛鳥先輩は黙った状態で照先輩の後ろに隠れた。すると、照先輩がケラケラ笑いながら答えてくれた。

 照「飛鳥って漢字で飛ぶ鳥って書くけん飛んどるかっこいい鳥を刺繍してくれてん」

 優希「あ、なるほど!」

 詩音「へぇー、いいですね!」

 飛鳥「・・・」

 照「あはは、飛鳥恥ずかしがってん」

 飛鳥「照うるさい!」

 照「・・・いった!なんで叩くん!」

 飛鳥「照がうるさいから!」

 照「えぇ」

 照先輩が飛鳥先輩が恥ずかしがっていると笑いながらバラし、バラされた飛鳥先輩は照先輩の背中をバシバシと叩いていおり、私と詩音はそれを見ながら笑っていた。
しおりを挟む

処理中です...