姿食堂始末記 ヤンキー君は隠れ、男の娘は惑う

Ann Noraaile

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第6章 激情

43: 告白

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 王に抱いてもらったあと、いつもなら彼の体にしがみついてセックスの余韻に浸りながらまどろむのだが、その日、キョウは奇妙に冴えていた。 
 キョウは王の脇腹を鼻先でくすぐってみる。 
 ほとんど反応がないので、もう少し強く鼻をこすりつけてみる。 

「何だ?」 
 キョウは身体をずり上げて、王に腕枕してもらったままで、さらに、ぴたっと密着し、彼の顔を間近から眺めた。 

「起こしちゃった?」 
「いや、眠ってはいなかったが、、、」 
「明日、忙しい?」 
「そうでもないな、大きな契約が一段落したところだから」 
 キョウは、鼻先で彼の肩の筋肉をツンツンと突つきながら、王の目をじっと見つめた。 

「どうしたんだ?」 
 キョウは返事をせずに、彼の肩に鼻をすりつけた。 

「おかしな奴だな……」 
「ね、お話して、」 
「何の話だ?」 
「なんでもいいよ」 
「、、中国の話だ。金瓶梅。河北の清河県で、薬屋を営む西門慶は、大金持ちの趣味人で色事師だ。……痛いっ!」 
 キョウは王の肩を甘噛みしたのだ。 

「こら」 
「うふっ」 
「よし、わかった。今日はキョウのために時間をとってやるぞ。」 
「ほんと?」 
「明日、昼寝でもするさ」 
「いいの?」 
「キョウの話したいことを聞いてやるぞ」 
 キョウは最近自分の身の回りで起こった色々な事を王と話したかったのだ。 
 カムイ先生の事やおやっさん、美有香の事も、そして王に一番伝えたい岩田瞬の事、、。 

「キョウは幸福か?」 
「うん」 
 幸せ、と一言で言っても、とらえ方はいろいろあるだろう。 
 まず基本的な部分は保障されている。
 父親からはその額に差はあるものの毎月、お金が振り込まれ、住まいもあるし、今はそれに加えて王からの多大な援助がある。 
 キョウの今までの生活感覚から言えば、それだけでも十分に幸せなのではないだろうか。
 精神的な価値観の話は、そういう生活があっての事だとキョウは思っている。 

「そうか……」 
 王は優しい眼差しでキョウを見つめている。 
 よく見ると鬢の生え際は白くなっていて、首筋の皮膚が弛み、目尻には深い皺が刻まれている。
 考えてみれば、キョウの父親といってもおかしくない年齢なのだ。 
 ……あたしはこの人が好きになってしまっている……それは理屈では語れない。 
 衣食住に恵まれている幸福は勿論だが、それよりもっと深い幸福感に包まれている。 

 ふと、王が手を伸ばしてきて、キョウの胸の小さな先端に触れた。 
 その瞬間、キョウは細く描いた眉をしかめた。 
 ……快感ではない。羞恥心を伴ったくすぐったさだ。 
 少なくとも、本物の女の子が感じるような性的快感ではないはずだ。 

「そこが感じるようになって、よかったか?」 
「うん」 
 次に、王はキョウの手首を握り、自分の下腹部へと導いていった。 
 触ってみると、王のペニスは萎えたままだ。
 さっきキョウの体内に放出してから、、まだ小一時間ほどしか経っていない。 
 掌の中の縮こまった肉塊が、ひどく愛おしく感じられる。 

「俺のペニスをケツの穴にハメられる関係だぞ。キョウは、それで幸せなのか?」 
「はい」 
 それまでの甘えた返事ではなく、キョウはきっぱりと返事した。 

「キョウ」 
「……はい」 
「俺はな、若いときから男が好きだったわけじゃないんだ。自分で言うのも何だが、俺はノーマルだったんだよ。ただし、性欲は人一倍強かったな、いい女を見ると強引に口説き落として、セックスに及んだものだ、自分で商売を始めるようになって、使える金の額が大きくなると俺は素人の女に手を出すのをやめたんだ。水商売の女なら金で割り切れる、向こうも承知している、それで、俺はお水系のいい女とやりまくっていた。今思うと、仕事のストレスをセックスで発散させていたのかもしれん……」 
 いつもの王とはちがう……、いつもならキョウを子ども扱いして、自分は保護者然としているのに……どうも様子がちがった。 

「ある日、俺は酔っ払ってオカマとセックスしてしまったんだ。だがな、そいつが勤めていたのはニューハーフの店じゃないぞ。本物の女ばかりの高級クラブだ。色っぽい女でな、いつかはモノにしてやろうと狙ってたんだ。足繁く通いつめて、値の張るプレゼントを買ってやったりして気をひいて、ついに待ちに待った時が来たんだ……」 

 王の記憶の中で、その女は、ほっそりとした首、なよやかな肩のライン、むっちりとした白い肌、豊満な乳房、涎が出そうなほどのセクシーな肢体だった。
 いい女とセックスするのが、成功の階段を駆け上がっている証だと信じていた若き王は、有頂天になっていた。 
 そして、いざ事に及ぼうとしたとき、彼女の股間にペニスが付いていた。 
 驚きはしたが、不思議なことに王のペニスは萎えなかった。 

 相手が単なる女装の男だったとしたら、きっと殴り倒していただろう。
 ところが、そのとき、王は彼女の妖しいまでの魅力に眩惑されてしまったのだ。
 男なら誰でも寝てみたいと発情するような極上の美女の股間にペニスが付いている。
 不思議なことに王には、彼女が男だという認識が訪れてこなかった。
 ペニスの存在が女体の完成を裏切っている、そこに本来あるべきはずの女の性器がなくて、不可解なことに男の性器が生えている。 

「俺の為に、神様が作ってくれた妖精が現れたんだと思ったよ、その夜が始まりだった……」 
 王の言葉が何故か、はるか昔に犯したあやまちを告白している老人のような風情に見えて、キョウの胸を揺さぶった。 
 キョウは首を伸ばし、王の口唇に自分の口唇を重ねた。 


「その夜、俺は生まれて初めてアナルセックスを体験した……」 
 キョウのキスに応じてから、王は再び話しはじめた。 
 王は男どうしのホモセックスが、肛門性交しなかいという感純な思いこみが、大きな間違いだと知った。
 それまで、王は、男と男のホモセックスを気色悪い行為としか見ていなかった。 
 おぞましいにもほどがある変態セックスじゃないかと。 
 ところが、その夜のめくるめくセックスは、王の忌避する単なる男どうしのホモセックス以上のものだったのだ。
 女以上に色っぽい体ではあるが、彼女はまぎれもなく男だった、なのに、、というところか。 

「男のケツの穴も女の性器も、しょせん同じ肉の穴だ。ペニスを突き刺す肉の穴と考えれば大差ない……」 
 王を魅了したのは悩ましく身悶えする女体と勃起したペニスの組み合わせだった。
 それは妖しくも淫らなコントラストであり、男と女の二元論では到底説明のつかない別世界だった。 

「難しい事を言うつもりはない。、、、つまりな、女を抱くよりも刺激的だった、というわけだ。」  
「俺はな、この時は口で言うほどアブノーマルとか倒錯とかいうはっきりとした感覚はなかった。しかし、ノーマルなセックスじゃない、という後ろめたさとか、タブーを犯している刺激はあったと思う……」 
 王は、それは質は違うが、不倫の刺激などと通い合うかも知れない、とも言った。
 してはいけないことをしている、普通の人間ならしないことをしている……そんな扇情性もあったのだ、とキョウに分析してみせた。 

「そうやって、俺はペニス付きの美女に目覚めたんだ。もう20年以上も昔のことだ……」
 ・・・そしてその頃から、俺の運気は上昇し始めた。
 こんな事業をしてると判るが、物事の成功とは、必ずしもその人間の実力だけではないことがわかる。
 つまりこの妖精との出会いは、俺にとってそういう意味合いも含まれていたんだと今では思っているよ。

 王の告白は続く。 
 20年以上も過去ということは、キョウがまだ赤ん坊の頃だろうか……。 
 今まで、王はキョウにあまり素顔を見せてくれることはなかった。
 けれども、こうして自分の歩んできた道を、寝物語とはいえ、キョウに語って聞かせてくれている。 キョウは感激していた。 

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