混沌王創世記・双龍 穴から這い出て来た男

Ann Noraaile

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第4章 異世界で相まみえる二人の王子

46: 宇宙人の乗り物

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 場所はアクアリュウム外壁近くに指定されていた。
「なんだあれは?子どもの玩具か?」
 葛星は高速ビーグルの運転席で、ランデブー地点に現れた、『宇宙人』の乗り物を見てそう言った。
 姿を現したのは、子どもが引っ張ったり、それに乗っかったりするようなキリンの模型の玩具の形をしていた。
 ご丁寧にも、その蹄の部分には車輪が付いている。

「彼らの船は、緑腐界の方に落ちたらしい。あの乗り物も、そっちの方向から来ただろう?つまり。あれは自前のビーグルってことじゃないのか。」
「お前、今まで俺に、その宇宙人の姿形の事を言った事がないから、俺は勝手にそいつらの外見を人間そっくりなんだって思ってたけど、違うのか?キリンみたいに首が長いとか、、」
「いやダンクのいうとおり人間そっくりだよ。第一、いかにも宇宙人ですって姿してて、トルクワン通りで商売できないだろ?ヴィジホンの画面に映ってたのは普通の叔父さんだったよ。」

 やがて木馬ならなぬ木キリンは、弾駆達が乗車する高速ビーグルの横に停車した。
 高速ビーグルはスポーツ仕様でそれ程大きくない代物だが、宇宙人の乗り物はそのビーグルの1.5倍ほどで、どちらかというとボリューム的にはみすぼらしい感じがした。
 ただし高さがある。
 もし操縦席が、キリンの頭部にあるのなら、運転手はそうとうな見晴らしを得ることになるだろう。


「はじめましてと言った方が良いですか?ヴィジホンではなく、実体のあるもの同士で、こうやって落ち合ったのですから?」
 妙な言い回しをしながら、高速ビーグルのコンソールに埋め込まれてあるディスプレイに、二人の男の顔が並んで映し出された。
 外界に出ると、途端に通信状態は不安定になるから映し出された画像は精緻なものではないが、そこにいる二人は双子のように見えた。
 顔立ちは、モンゴリアンとヨーロピアンの中間くらいだった。

「はじめましてでいいですよ。俺の横にいる奴は、あなた方とは、初対面ですからね。この男は俺の相棒の葛星弾駆です。」
「はじめまして、葛星弾駆さん。わたしはコーザノストラ、彼はコーザフェストラです。道案案内をヨロシクお願いします。」
 画面の中の二人が同時に深々と頭を下げた。

「あっ、ああ、こちらこそヨロシクお願いします。」
 弾駆は舌を噛みそうに答えた。
 なにもかもが調子外れだった。

「じゃ早速、出発しましょう。視認で付いてきてください。外界に出たら探知関係の電子器機はあまり宛になりませんからね。それと俺達から離れないことと、同じコースを必ず辿る事です。」
 アレンが調子よく答える。

「地雷の存在ですね。」
「そうです。でも心配しないで、俺達が持ってるマップは、どのサルベージマンのものより、安全で早く光の壁に導いてくれますからね。兎に角、俺達にしっかりついて来てくれれば大丈夫です。」
 普通のアクアリュウム人なら、この辺りで、アレンの「軽さ」に気付き初め、不安を感じるのだが彼らは純朴なのか、画面の向こう側で素直に頷いている。
 アレンが通信画面を切った途端に弾駆が言った。

「あれ、本当に宇宙人なのか?」
「だと思うよ。だってあんな田舎くさいアクアリュウム人もゲヘナ人もいないだろ。」
「それにしちゃ、地雷なんて言葉をしってたな。」
「うーーん、地雷はそんなに特別なサルベージマンの隠語ってわけじゃないだろ?それに彼らだって必死に外界の事を調べたんじゃない?」
「お前、、ホントに軽いね、、」

「ダンクが考えすぎるんだよ。相手が自分が遭難した宇宙人だって言うなら、そうしとけばいいじゃん。俺達がそれで損をしないかぎりはね。」
 弾駆は後方カメラに写っているキリンをズームアップした。
 蹄のある部分が車輪になっているその脚は本当に細い。
 だがどういう仕組みなのか、脚は地面の凹凸を完全に吸収しているし、その形状からくる走行上の不安定さはまったくないようだ。

「見れば見るほど、不思議なもんだな。」
「ものを造る上での優先順位とか価値観が根こそぎ違うんだろうね。だから逆に、彼らから見たら、俺達の乗り物なんて、意味不明なんじゃないか?」
「、、、やっぱりお前は柔軟だな、アレン。俺はお前に拾われて本当に良かったのかもしれん。」
 弾駆はそう言って、視線を光の壁が待っている方向の外界へ向けた。
 だがその横に座っているアレンの表情は、ダンクが知っているかってのアレンのものではなかった。
 ダンクが変化していくように、アレンも又、運命に翻弄されその人間性を微妙に変え始めていたのである。


 その夜、二台のビークルはやや小高い荒れた丘の麓で野営をした。
 外界運行はマップ通りに進めば必ず安全が約束されているというものではなく、基本は視認による危険回避走行であり、夜はそれが出来ない。
 一番の問題は、やはり地雷と呼ばれる特異点の存在だった。
 それに引っかかってしまうと、全てのものが分解され消えてしまうのだ。

 今は、その地雷がかなりの密度で隣り合っている地点だった。
 ロストワールドのハイテク電子機器でも、その存在は探知出来ない。
 ただ不思議なことに「気配」は、あるのである。
 人間の第6感とは、視聴覚などの総合相乗効果的な感知能力だと言われているが、その文脈上に見える存在が、地雷なのだろうと考えられている。
 あるいは、病んだこの星を生き物に例えるなら、地上の異常気象が皮膚病であり、内臓疾患が皮膚に吹き出たものが地雷だと捉えられていた。
 もちろん、この星がどんな内臓疾患を患っているのか、その原因は何なのか、ゲヘナを含めて、それを解明した人間はいない。

 サルベージマンの何人かには、この地雷の密度が、光の壁に近づく程高くなる事から、光の壁との関係性を唱える者もいるが、地雷自体は、密度の問題は別にして外界のどこにでもある。
 アレンは、光の壁と地雷とは別の成り立ちを持つ現象だが、後にお互いが影響を与えあって現在に、至っているのではないかと考えていた。


    ・・・・・・・・・

 ケーンと響く、外界の闇の中に遠く引きずるような鳴き声が複数聞こえた。
 だがかすかものだ。
 アレンには聞こえまいと葛星は思った。

「岩飛び砂漠狐だな、、発情してるみたいだ。若い雄の群れだ。もうそんな時期か、、」
「驚いたなアレン。お前、そんなのが聞き分けれるようになったのか?」
「ん、、まあな、、何事でも鍛錬だよ。」
 そこからいつもなら下らないジョーク合戦に繋がっていく会話だったが、この時はそうはならなかった。
 アレンが念の為にと、レーダーのモニターを開いたからである。
 音が届く距離なら、外界でも、動く物体程度なら、かろうじて探知できる。
 二人の目は、そのモニターに釘付けになった。

「奴ら、なにトチ狂ってやがる!奴らの移動してる方向は、地雷のある方だぞ。それに物凄い早さだ。アレン、宇宙人達に連絡してやれ!」
 アレンにも弾駆の言っている事が直ぐに理解できた。
 地雷のある直ぐそばに、岩飛び砂漠狐の雌のグループがいるのだ。
 雄はそれに誘われている。
 動物にも微かに地雷を気配を感じる能力があるが、発情期に入った若い雄の群れに、そんなものを求めるのは無理だった。

 弾駆はビーグルのアクセルを踏み込むかどうかで迷っていた。
 今までのデータだと、例え砂漠狐が地雷に引っかかっても、ぎりぎり葛星達がその影響を受けないで済む位置にはいる。
 だが地雷という現象に「絶対こうだ」という保証はない。
 かといってここからビーグルを移動させた場合、夜間の外界走行に不慣れな宇宙人たちを引き連れて、安全な地点まで無事に移動できるだろうか。

 アレンと宇宙人達の激しいやり取りの間、フロントガラスの向こうに砂漠狐たちの光る尻尾の軌跡が飛び跳ねながら横切るのが見えた。
 その動きは思ったより直線的ではなく、大きく左右にぶれていた。

「駄目だ!いくぞ、アレン!彼らに無理でも付いて来させろ!」
 長いように見えたが、弾駆の判断は数秒だった。
 シートに身体が沈み込むような加速のあと、弾駆の操るビーグルは数キロ直進し、やがて尻をふりながら東へ右に大きく曲がった。
 目の前に新たに出現した地雷ポイントを迂回したのである。

「大丈夫だ!彼らは付いてきてる!」
 レーダーモニターを必死に覗いているアレンが言った。
 その直後に、彼らの後方で夜空を貫くような光の柱が真っ直ぐ地面から立ち上がった。
 砂漠狐たちが、地雷に接触したのである。


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