混沌王創世記・双龍 穴から這い出て来た男

Ann Noraaile

文字の大きさ
71 / 82
第6章 魁けでの戦い

71: 瑠偉とマテウス

しおりを挟む

「俺達は未知の外界を、このスピードで移動してるんだぞ。すげえのはこいつさ。」
 シャビエルはそう言って、自慢げに自分の隣で操縦桿を握っている甥の瑠偉を見た。
 だが当の瑠偉は、苦虫を噛みつぶしたような表情を浮かべている。
 そんな瑠偉の様子を見ながら、ゲナダは少し前にシャビエルと交わした会話を思い出した。

「甥の瑠偉はな、外界とかバイオロイドとかが嫌いなんだよ。瑠偉の目には、そういうモノが汚染された異物に見えるらしい。ガチガチのヒューマンロード主義者なんだよ。あの声だってバイオアップで治せたんだ、それさえ拒んでる。ところが俺はなんでもありなサルベージマンだろ。」
 半分は自嘲気味に、しかしそれが良いんだという口調でシャビエルは言った。

「、、、瑠偉の母親は、奴のそういう極端な所が気にかかるらしくて、俺に何回か相談を持ちかけてたんだ。で俺は何回か無理矢理、瑠偉を外界に引っ張り出してやった。ビーグルも騙して、運転させてやったんだ。外界で俺が病気になった事にして、とにかく瑠偉が自分で運転せざるを得ないように仕組んでな。まあ荒療治だな。で、結果は吃驚したよ。瑠偉は地雷は勿論、外界の様々な危険を見事に回避してアクアリュウムに戻りやがった。隠れた才能というより、ああいう自分が怖くて嫌いなモノの存在を、本能的にビンビン感じるんだろうな。」

「その話からすると、あんた、又、甥っ子を騙してここに連れて来たんだろう?」
 ゲナダは楽しそうに言った。
 ゲナダが瑠偉のような人間の立場に共感を示すような事は金輪際無い。

「そうさ、瑠偉に、俺は抜き差しならない状況に追い込まれて、今度の仕事をお前と一緒に受けおわなきゃ殺されるんだって言ってやった。でも奴は平気な顔をしてやがった。だから、こう言ってやったのさ。俺が死んだら、お前は平気でも、お前の母親は悲しむだろうなって。」
「酷い野郎だな。」

 ゲナダはシャビエルが上手い手を使ったと思った。
 普段の瑠偉の様子を見ていても、母親に対する愛情は深そうな人間だなと思わせる面が多々あった、ようはマザコンだ。
 マザコンとヒューマンロード主義者とは心理学的な関係がありそうな気もしていたが、ゲナダはそれ以上考えなかった。

「俺が酷いだと?おいおい、そのお陰で、あんたらは助かったんだろうが。」
 ジャビエルが笑いながら言った。
「・・しかしあんた、この仕事よく引き受けたもんだな。確かに、こちらも金は弾んだが、生きてていくらだろうが、俺があんたみたいな男だったら、端からこんな仕事は引き受けねぇ。」
「、、この船だよ。こいつはサルベージマンにとっては、革命的な代物だ。コイツを動かすハウトゥーは俺と瑠偉で戴く。構造の勘所も瑠偉には頭に入れろって言ってある。瑠偉にはそれだけの頭があるからな。」
 この男は、この仕事で生きて帰れると判断しているのだと思った。

「そんな事なら、この計画が成功したら、アンタにこの機体が手にはいるように、上とかけやってやるよ。」
 曙号のリストアデータは、既にこの男に手渡してあるが、空中空母を個人の力でリストアはするのは相当難しい。
 やれたとしても数年かかる。
 第一、その前に、元になる機体を外界から引き上げねばならない。

「ホントか?」
「ああ、計画が終われば俺達には必要のない機体だからな、いずれ処理することになる。それにコイツの関係で、俺達に又、何かがあれば、アンタを頼ればいい。」
「そいつは良い。願ったり叶ったりだ。」
「だから必ず、俺達を混沌王の所まで連れて行ってくれ。」
「判った、まかしておけ。」

 レイチェルは、自分がこういう駆け引きをする部分を嫌っているのを知っていたが、ゲナダにしてみれば逆の思いもあった。
 自分は相手の欲望につけ込んで相手を取り込んでいくが、レイチェル達はそれを欲望ではなく「思想」に置き換えているだけなのだと。
 思想と欲望、人間にとって、どちらが果たして上なんだ?とゲナダは考えていた。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。 【あらすじ】   異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。  それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。  家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。  十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。   だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。  最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。  この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。  そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。  そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。  旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。 ☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。 ☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...