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【 東南アジアの旅 】

13: 初めてのバリ旅行 ジャランジャランは明日から ⑦夜とゴア・ガジャ

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 今、海外旅行先で出会う、香港・中国・台湾の観光客のイメージって、ポロシャツの襟を立てて、生青白い脚がニョキッとでたバミューダ、金銀のブレスレット・・数年前の日本人のイメージだよね。
 日本人の方は、多少はこなれて来たのか、地味派手路線の人が、男性で女性でも多くなった感じ。

 でも日本人の若いバックパッカーは少なくなっているんじゃない?
 外国の若い子は、そういうの、どんどんやってるよ。
 なんだか寂しい。

 旅先でそれぞれの国の、お国柄を考えてしまうのは、その服装スタイルとかだけじゃないんだよね。
 この日のお買いものツアーが終わった夜は、「インダス」って店に、またまたインドネシア料理を食べに行ったんだけど、ここが最悪。
 お店自身の雰囲気は、渓谷の側にあるオープンテラス形式で決して悪くない、でも、外国人さんの「団体」が入っちゃったのね。
 他の小さなテーブルもヨーロッパ系のお客さんばかりで予め埋められていたんだけど、こちらは極めて静か。

 後から10人以上の頭数で入って来た白人さんたちの喧しいこと。
 その雰囲気、まったく日本人が、「おー、これから二次会行くべ。」って騒いでるのと同じ乗り。
 テーブルについても、席を頻繁にたってワインを注いで回っている姿も、日本の宴会そっくり。
 外国人のくせに、日本人がやるような宴会酒盛りすんなよ(笑)。
 折角、念願のバリハイにありつけてウブドの夜をどっぷり楽しもうと思っていたのに。

 「インダス」を早々に引き上げて、宿泊先ホテルのレストランで死ぬほど甘いチョコレートケーキとバリカピで、気持ちを取り直す。
 相方は椰子の実をくり貫いた器に乗ったフルーツポンチみたいなのに舌鼓を打っている。
 すると闇の遠くでゲココッという声が聞こえた。

「トッケーかな?」
「違うよ。蛙だよ。声がおおきもん、あのサイズのヤモリはあんな野太い声出せないよ。」
「そうだね。トッケーはチュクキューって鳴いてるって言ってたもんね。」
 相方はウブドで一日目にトッケーを見つけて以来、ずっと爬虫類関係を発見し続けている。
 TVの特版で出てくるようなトカゲにも出くわしたらしい。
 アンは全然見ていないのに、幸せな奴だ(笑)。
 見たい人には見つけられなくて、見たくない人にはどんどん目に付くのが、彼らかも知れない。

 部屋に戻ってから「でもこのホテルってどうして虫の類が全然いないんだろうね。壁の向こうは即ジャングルって感じなのに。」って言いながらTVを付ける。
「きっと、きつい薬撒いているんだよ。」
「そうかなー。朝なんかすごいんだよ。鳥の声とか、よく見ると、そこらじゅうでリスが駆け回ってるし、、。」
 TVではCMが流れている。
 見てる限りでは、どれもこれも日本の氷川きよし君が出演してる洗剤CMの作りに似てる感じがした。
 内容じゃなくて、限りなくイメージで押し切るタイプの奴ね。
 ドラマもみんな大味。
 こんなんで満足できるんだろうか、、。


 バリ滞在の最終日、今日はウブドの遺跡ゴア・ガジャにレンタサイクルで遠出の予定。
 昼食はモザイクでフランス料理のランチと、後はホテルのプールで泳いで、お昼寝をして、、。

 自転車に乗っていると、狭い道でバイクや車に何度も強引な追い越しをかけられる。
 けれど、不思議と苛つかない。
 信号停止でもないのに、交通の流れが止まったので前を見てみると、一台の小型トラックが道幅一杯を使った無茶な切り替えしをやっている。

 でも誰も、それを非難している様子がない。
 みんな黙って、さも当たり前のようにトラックが動き出すのを待ちながら、お互いが吐き出す排気ガスを仲良くすっているのだ。
 そのくせ、一旦走り出すと、交通の流れは異様に荒っぽい。
 そう、ここにあるルールが日本のそれとは違うのだ。
 きっと間違ってもクラクション殺人事件なんてものは発生しないのだろう。

 5kmのサイクリングをやって、古代遺跡ゴア・ガジャの表示があるフェンスの内側に入った。
 途端に巨大な駐車場と、みやげ物屋群が出現。
 、、、今日は、平日のせいか、がら空きだったけど。
 自転車を止めようとしたら、守衛さんみたいな服を着たおじいさんがやって来て手を出す。
 アンたちの側では、地元の若い子達が自分たちの乗ってきたオートバイを平気で止めてスタスタとどこかに行ってしまう。
 勿論、彼らには駐車料金なんて払う様子なんて微塵もない。
 一瞬、カチンと来たけど、自分たちが外国人観光客である事を思い出して、要求されたRpを払う。

 何も表示が無いので、それが法外な値段なのか、更に言えば本来徴収されるべきものなのか、、何も分からない、、でも、もうどうでいいって感じだった。
 しかし、これがベトナムなら、どんなに疲れていてもムカついていたに違いない。
 観光客として、むしられても不思議と腹が立たないのがバリなのだ。
 それが何処に由来するのか、未だによく判らないのだけれど。

 もっとも一部、例外はある。
 ラヤ・ウブド通りのタクシーの客引きだ。
 ここは意味なく、しかもしつこく声をかけてくる。
 市場の「へーいらっしゃい、らっしゃい」のかけ声なみの気軽さというか、ノリなんだけど、市場のかけ声は不特定多数に向けられる。
 ここのは一本釣りだ。
 こっちが自転車に乗っているのに「タクシー乗ってかない」と言われた時にはマジでムカついた。







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