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第1章
目覚めのとき
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身体中が痛い。特に左肩が。
「知らない床だ…」
気づいたら石の床に転がっていた件について。
とりあえず身体の状態を確かめるために手足を動かそうとしたがうまく動かない。すわ大怪我でもしたのかと思って見おろすと身体に毛布が巻きついていた。どうりで石床なのに寒くないわけだ。
ところでどうやって毛布から脱出しよう。
床をコロコロと転がることにより、リキガクテキに身体から毛布を分離して立ち上がると自分のいる部屋全体が見えた。
石床石壁の6畳ほどの空間に簡素なベッドがひとつと部屋の真ん中に落ちている毛布が1枚。ベッドから最も遠い壁にこれまた簡素なドア。机も椅子も、窓すらない。
よくいえばシンプル、悪くいえばショボい部屋だ。床にはあちこち埃も溜まっている。物置きから荷物を出して、代わりにベッドを置いたらこうなるんじゃないかな。
ふむ。この状況からわかることがひとつだけ。
「俺寝相悪くない?」
たぶん最初はベッドに寝ていたんだろう。身体の左半分ばかり痛いのは左から落ちたから。ベッドはシーツがヨレているし、試しに触ってみるとほんのり温かい。
「犯人はまだ近くにいる!」
そう、ここにいる俺だ! ババーン
あ、遊んでるわけじゃないぞ! なんとなく言わなきゃいけない気がしたんだ。
誰にともなく心の中で言い訳したところで、シーツに埃がついていることに気づいた。慌てて身体を見回すとペラッペラの木綿らしい上下と剥き出しの手足が灰色だ。そりゃあ埃まみれの床を転がったらそうなるよな。
うん? ということは毛布もか。ここがどこかわからないし、いつまでここにいるのかもわからない。これから長くお世話になるかもしれない毛布が埃まみれなのは、衛生的にも精神衛生的にもいかにもまずい。すぐにでも床から救出しなくては。
「毛布姫! 今助けに参ります!」
ノリノリの茶番劇再開で勢いよく振り返った先にはドアの前に立つ小柄な人影。ドアはしっかりと閉じられている。バッチリ目が合ってるね。
「お前さっきから何やってんの?」
見られてました。恥ずかちい。
茶番劇を目撃した少年の名前は七尾くんというらしい。
小学校低学年くらいかな。身長は俺の腰くらいで、目つきは悪いけど稚い雰囲気についお菓子をあげたくなる。持ってないけど。
フワフワとした短い天然の金髪と、榛色とでもいうんだろうか、茶色っぽい黄色の目をしている。その容姿に違和感がないのは欧米人っぽい顔立ちのせいだろう。
その代わりに、容姿と名前のギャップがすごい。思いっきり和風だね。横文字の名前は苦手だからとても助かるんだけども。ハーフとかなのかな。日本語もぺらぺらだし。
「七尾くんはどうしてここに、いってぇ!」
優しさを前面に押し出して話しかけると思いっきり脛を蹴られた。俺の向こう脛はサッカーボールじゃないですよ。
「その小馬鹿にした呼び方をやめろ」
「小馬鹿にって。名前を呼んだだけじゃないか」
「てめぇにくんづけされる筋合いはねぇ!」
背伸びしたいお年頃なのか。自分のことを俺と言ってみたりかわいい女の子にいいとこ見せたくなる時期なんだろうな。
だけど不機嫌さを表してぷっくりと膨らんでいるほっぺたはすごく子供っぽいよと言ってやりたい。つついたりしたらもっと怒るんだろうな。いたずら心がウズウズする。
「ったく、最近の若いモンは礼儀もなってねぇ。年長者に対する態度も知らねぇときた」
「年長さんだったのか。じゃあもうじき小学校だねベヘェッ!」
痛いよ! またなの?
屈んで視線を合わせた途端、左フックが飛んできた。
神ちゃんといいこの子といい、最近の子って容赦ないね。お兄さんショックだよ。もう少し手加減とか躊躇いが欲しかったな。
痛む頬をさすってみたらざらざらしていた。さっきの埃が顔にもついているのか。手足ならともかく、顔についているなんてなんとも不快な。
両手の埃を払ってから頬の埃を叩いたらなんとも痛い。当たり前だ。ついさっき殴られたもんな。でも埃がついてるほうが嫌だから我慢我慢。
俺が四苦八苦しながら埃を払っている間、七尾少年は何かを考え込んでいる様子だ。
「お前ノベド語大丈夫か?」
「ノベドゴ?」
何それ? 魔法の呪文みたいなものかな。なんてったってここは異世界だもんな。ちびっ子が魔法を使えてもおかしくない。
「ああ、わかった。お前、異国から来たんだろ」
「そうだよ。よくわかったね」
異国というより異世界だけど。異世界から来たなんて言っても信じてはもらえないだろう。そんな奴がいたら、俺なら病院に連れて行く。それに、「違う国」という意味では嘘じゃない。屁理屈も理屈も理屈のうちだ。
七尾少年は俺の言葉に神妙な顔で頷いた。
思っていた反応と違っていて驚いた。幼稚園児ならここでもっと自慢気にするかと思ったのに。
「やっぱりな。呪術系統の魔法の気配がする。珍しいから不思議だったんだが、言語魔法なら納得がいく。大方、ヴィー様の仕業だろうよ」
神ちゃんの仕業です。
って、あれ? 言語魔法のスキルはもらったけどいつの間に使ってたんだろう。自動で発動するものなのかな。
言語魔法が発動してるってことは七尾くんが話してるのは日本語じゃないのか。
それにしても『ジュジュツ系統の魔法云々』ってことは、魔法にはいろんな系統があるんだろう。学問的に研究されているなら魔法学なんてものもありそうだな。魔法があるなら使ってみたいと思っていたけど勉強するのは嫌だなぁ。
もうひとつ、七尾少年の言葉に気になるところがあった。
「ヴィー様?って誰かな」
「そんなことも…って、そうか。言語魔法が必要なくらいなら、碌にこの国のことを知らねぇのも頷けるか。ヴィー様ってのはこの国の王の右腕、宰相だよ」
「王様の右腕!? なんでそんなにエラい人が俺の話に出てくるの?」
「気絶でもしてたのか? お前をここに連れて来たのがヴィー様だよ。『ペットの散歩をしてたら面白そうなものが落ちてたから拾った』とは言っていたが」
「宰相さん自由だな」
珍しい石を拾うような感覚で人間を拾っちゃうのか。
散歩をするってことはペットは犬かな。
今、俺の脳内では厳格そうな爺さんが森の小道を柴犬とテクテク歩いている映像が流れている。
犬がちょこちょこと小走りをしては立ち止まって振り返る。目が合う一人と一匹。再び走り出す犬。それをゆっくりと追いかける爺さん。なんとも和むなぁ。
「俺もまさかヒトを拾ってきていたとは……」
「なんかごめんね?」
深いため息を吐いて額をおさえる七尾少年からは年季の入った疲れが滲み出ている。この歳でこの雰囲気は出ちゃあまずいよな。苦労しているのか、大丈夫だろうか。心配になってきた。
「知らない床だ…」
気づいたら石の床に転がっていた件について。
とりあえず身体の状態を確かめるために手足を動かそうとしたがうまく動かない。すわ大怪我でもしたのかと思って見おろすと身体に毛布が巻きついていた。どうりで石床なのに寒くないわけだ。
ところでどうやって毛布から脱出しよう。
床をコロコロと転がることにより、リキガクテキに身体から毛布を分離して立ち上がると自分のいる部屋全体が見えた。
石床石壁の6畳ほどの空間に簡素なベッドがひとつと部屋の真ん中に落ちている毛布が1枚。ベッドから最も遠い壁にこれまた簡素なドア。机も椅子も、窓すらない。
よくいえばシンプル、悪くいえばショボい部屋だ。床にはあちこち埃も溜まっている。物置きから荷物を出して、代わりにベッドを置いたらこうなるんじゃないかな。
ふむ。この状況からわかることがひとつだけ。
「俺寝相悪くない?」
たぶん最初はベッドに寝ていたんだろう。身体の左半分ばかり痛いのは左から落ちたから。ベッドはシーツがヨレているし、試しに触ってみるとほんのり温かい。
「犯人はまだ近くにいる!」
そう、ここにいる俺だ! ババーン
あ、遊んでるわけじゃないぞ! なんとなく言わなきゃいけない気がしたんだ。
誰にともなく心の中で言い訳したところで、シーツに埃がついていることに気づいた。慌てて身体を見回すとペラッペラの木綿らしい上下と剥き出しの手足が灰色だ。そりゃあ埃まみれの床を転がったらそうなるよな。
うん? ということは毛布もか。ここがどこかわからないし、いつまでここにいるのかもわからない。これから長くお世話になるかもしれない毛布が埃まみれなのは、衛生的にも精神衛生的にもいかにもまずい。すぐにでも床から救出しなくては。
「毛布姫! 今助けに参ります!」
ノリノリの茶番劇再開で勢いよく振り返った先にはドアの前に立つ小柄な人影。ドアはしっかりと閉じられている。バッチリ目が合ってるね。
「お前さっきから何やってんの?」
見られてました。恥ずかちい。
茶番劇を目撃した少年の名前は七尾くんというらしい。
小学校低学年くらいかな。身長は俺の腰くらいで、目つきは悪いけど稚い雰囲気についお菓子をあげたくなる。持ってないけど。
フワフワとした短い天然の金髪と、榛色とでもいうんだろうか、茶色っぽい黄色の目をしている。その容姿に違和感がないのは欧米人っぽい顔立ちのせいだろう。
その代わりに、容姿と名前のギャップがすごい。思いっきり和風だね。横文字の名前は苦手だからとても助かるんだけども。ハーフとかなのかな。日本語もぺらぺらだし。
「七尾くんはどうしてここに、いってぇ!」
優しさを前面に押し出して話しかけると思いっきり脛を蹴られた。俺の向こう脛はサッカーボールじゃないですよ。
「その小馬鹿にした呼び方をやめろ」
「小馬鹿にって。名前を呼んだだけじゃないか」
「てめぇにくんづけされる筋合いはねぇ!」
背伸びしたいお年頃なのか。自分のことを俺と言ってみたりかわいい女の子にいいとこ見せたくなる時期なんだろうな。
だけど不機嫌さを表してぷっくりと膨らんでいるほっぺたはすごく子供っぽいよと言ってやりたい。つついたりしたらもっと怒るんだろうな。いたずら心がウズウズする。
「ったく、最近の若いモンは礼儀もなってねぇ。年長者に対する態度も知らねぇときた」
「年長さんだったのか。じゃあもうじき小学校だねベヘェッ!」
痛いよ! またなの?
屈んで視線を合わせた途端、左フックが飛んできた。
神ちゃんといいこの子といい、最近の子って容赦ないね。お兄さんショックだよ。もう少し手加減とか躊躇いが欲しかったな。
痛む頬をさすってみたらざらざらしていた。さっきの埃が顔にもついているのか。手足ならともかく、顔についているなんてなんとも不快な。
両手の埃を払ってから頬の埃を叩いたらなんとも痛い。当たり前だ。ついさっき殴られたもんな。でも埃がついてるほうが嫌だから我慢我慢。
俺が四苦八苦しながら埃を払っている間、七尾少年は何かを考え込んでいる様子だ。
「お前ノベド語大丈夫か?」
「ノベドゴ?」
何それ? 魔法の呪文みたいなものかな。なんてったってここは異世界だもんな。ちびっ子が魔法を使えてもおかしくない。
「ああ、わかった。お前、異国から来たんだろ」
「そうだよ。よくわかったね」
異国というより異世界だけど。異世界から来たなんて言っても信じてはもらえないだろう。そんな奴がいたら、俺なら病院に連れて行く。それに、「違う国」という意味では嘘じゃない。屁理屈も理屈も理屈のうちだ。
七尾少年は俺の言葉に神妙な顔で頷いた。
思っていた反応と違っていて驚いた。幼稚園児ならここでもっと自慢気にするかと思ったのに。
「やっぱりな。呪術系統の魔法の気配がする。珍しいから不思議だったんだが、言語魔法なら納得がいく。大方、ヴィー様の仕業だろうよ」
神ちゃんの仕業です。
って、あれ? 言語魔法のスキルはもらったけどいつの間に使ってたんだろう。自動で発動するものなのかな。
言語魔法が発動してるってことは七尾くんが話してるのは日本語じゃないのか。
それにしても『ジュジュツ系統の魔法云々』ってことは、魔法にはいろんな系統があるんだろう。学問的に研究されているなら魔法学なんてものもありそうだな。魔法があるなら使ってみたいと思っていたけど勉強するのは嫌だなぁ。
もうひとつ、七尾少年の言葉に気になるところがあった。
「ヴィー様?って誰かな」
「そんなことも…って、そうか。言語魔法が必要なくらいなら、碌にこの国のことを知らねぇのも頷けるか。ヴィー様ってのはこの国の王の右腕、宰相だよ」
「王様の右腕!? なんでそんなにエラい人が俺の話に出てくるの?」
「気絶でもしてたのか? お前をここに連れて来たのがヴィー様だよ。『ペットの散歩をしてたら面白そうなものが落ちてたから拾った』とは言っていたが」
「宰相さん自由だな」
珍しい石を拾うような感覚で人間を拾っちゃうのか。
散歩をするってことはペットは犬かな。
今、俺の脳内では厳格そうな爺さんが森の小道を柴犬とテクテク歩いている映像が流れている。
犬がちょこちょこと小走りをしては立ち止まって振り返る。目が合う一人と一匹。再び走り出す犬。それをゆっくりと追いかける爺さん。なんとも和むなぁ。
「俺もまさかヒトを拾ってきていたとは……」
「なんかごめんね?」
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