転生皇子の新生活

𝐍 𝐢 𝐚🐾

文字の大きさ
105 / 410
本編 幼少期

94



 ザワザワ、ガサガサ

「ぅん......うるさい」


 次の日の朝、ルーカスはいつもより少し遅い時間に目が覚めた。目覚めた途端、ルーカスの脳内には、動物の鳴き声や草木の擦れる音が一気に押し寄せてきた。その為、ルーカスは今、少し不機嫌になっている。


 はぁ、体も髪も土まみれだ。水浴びをしたい。


 ルーカスは馬車にタオルを取りに行く。


「殿下、おはようございます。水浴びですか?」


「ああ」


「お供致しましょうか?」


「いや、いい」


 モニカはルーカスが寝起きは不機嫌になる事を知っていた為、直ぐに引き下がった。

 ルーカスはタオルを持って1人で川へと向かい、昨日と同じく、髪を解いて肌着になった。


 この森に動物や魔物が多いからって、夜中に騒ぎすぎだよ。本当にうるさい。


 川に入るとルーカスは頭まで潜る。少しして顔を出すと、幾分かすっきりする。ルーカスの機嫌が良くなるのは、いつも起きてから半刻程かかる。だが、今日は少し遅めに起きてしまい、身支度にもあまり時間を使えない。
 その為、汚れた体や髪を綺麗にするついでに、水浴びですっきりしようと思ったのだった。





 ルーカスが水浴びに行ってから四半刻後、モニカ達は朝食の準備を終えて、火の始末をしていた。


「レノ様、テオ様は少し遅すぎないか?」


「そうだな。あれから四半刻程経っておりますし、何かあったんでしょうか?」


「確かに少し遅いですね。殿下のご様子を見に行きましょう」


 念の為、モニカ達は全員で川の方へ向かった。







◇ ◇ ◇


 どれ程時間が経ったかな。そろそろ上がろうか。


 ルーカスは川から上がり、タオルと服を置いた岩まで歩いていく。すると、後ろからガサガサと草の擦れる音がした。


 っ、しまった!


 ルーカスは直ぐに後ろを振り向き構える。だが、そこに立っていたのはモニカ達だった。


「そなたらか。悪い、遅かったか?」


「……」


 ルーカスが話しかけるが、モニカ達は一向に口を開かない。ルーカスはタオルを取って、再び話しかける。


「どうしたんだ?」


 モニカ達の方へ振り向くと、5人は蒼白な顔色で、驚いた表情をしている。


 どうしたんだろう?


 そう思っていると、ジュードが戸惑いながら言葉を紡ぐ。


「おい。何だよその傷……」


 傷? っ!? しまった、服が透けて傷が見えてしまっている……!


 昨日は、夜遅くで暗く傷が透けても見えなかったが、今は明るく、白い肌着の為、ルーカスの傷はくっきりと目に見えた。


「で、んか。まさか……? ど…して、私は、気づかなか、、た」


 モニカは、ずっと一緒にいたはずなのにルーカスの傷に気付かなかった事に心底呆れた。そして、ルーカスの体に付いている酷すぎる傷を知り、全身の力が抜けその場に座り込んだ。


「っ! モニカ!」


 ルーカスは座り込んだモニカに近づいて体を支える。


「もうし、わけござい、、ません。私は……」


「落ち着きなさい、モニカ。君は何も悪くない。僕が君に身支度も湯浴みも手伝わせていないんだ。気づける訳が無い」


 ルーカスの言葉を聞いても、モニカは自分を責め続けた。そして、この口調を聞き、ジュード達は心底驚いた表情を浮かべた。


「話は後でするから。傷の事は君達は首を突っ込まない方がいい。だけど、気になるんだったら憶測で話すくらいは許すよ」


 ルーカスはラシャドの方を見てそう言った。


「クリード、モニカを馬車まで運んでくれるかい?」


「あ、ああ。分かった」


 ジュードがモニカを抱えて、ルーカス達は馬車へと戻った。
 モニカとルーカスは馬車に乗り、白虎は少し離れた所で待機する。


「モニカ、少し落ち着いたかい?」


「申し訳ございません。殿下の口調が彼らに」


「いや、構わないよ。元々彼らには教えようと思っていたから」


「寛大なお心遣い、ありがとうございます。殿下、その傷はレア様が……?」


「うん。ごめんね、見せる気は無かったんだけど、寝起きで油断した」



 モニカは暗い表情のまま黙り込んだ。


 こんな時、なんて声をかければ良いんだろう。自分を心配してくれる彼女に何を言えばいい?


「……殿下」


「なに?」


「傷の事は陛下方は……?」


「多分もう気付いたと思うよ」


「お願いします、ルーカス殿下……! もっと、ご自身を大切にして下さい。殿下はいつも、誰かの為に無理をなさる」


 モニカが泣き出しそうな表情で、苦しそうな表情でルーカスに懇願する。


「リリアン皇女様の為だというのは重々承知しております。しかし…! 私達はリリアン皇女様と同じ位、殿下の事も心配で大切なんです!」


 不謹慎だな。モニカが悲しんでいるのに、僕はそれが凄く嬉しい。あぁ、こんなに大切にしてくれている彼女を、彼らを僕は悲しませてしまったんだ。


「うん。ごめんね、モニカ。心配してくれて、ありがとう」





感想 21

あなたにおすすめの小説

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

転生先は猫でした。

秋山龍央
BL
吾輩は猫である。 名前はまだないので、かっこよくてキュートで、痺れるような名前を絶賛募集中である。 ……いや、本当になんでこんなことになったんだか! 転生した異世界で猫になった男が、冒険者に拾われて飼い猫になるほのぼのファンタジーコメディ。 人間化あり、主人公攻め。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

王道学園のモブ

四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。 私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。 そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

寄るな。触るな。近付くな。

きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。 頭を打って? 病気で生死を彷徨って? いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。 見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。 シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。 しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。 ーーーーーーーーーーー 初めての投稿です。 結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。 ※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。