獣人世界へ、ようこそ?

ふにゃー

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  虎獣人さんに出来上がった魔法袋を渡した頃には、盛夏だった。

  この町にまで罹患者は出なかったけど、王都より南の町で、「七日熱」の罹患者が出たそうな。

  自分が依頼され納品した万年雪の氷の塊があった事で、調薬が早く出来、王都にまで広がらずに済んだらしい。

  例年なら、万になるほどの患者が出るらしいので、軽度で済んでるみたい。

  ちなみに、自分は夏バテでへばってる。

  それで、トカレ村に避暑を兼ね、やって来たって事になってる。

  魔法袋を渡す為に来たなんて、公には出来ないでしょ!

  実際、トカレ村、涼しいし。

  また、薬師ギルドから万年雪の氷の塊の納品を依頼されるのも面倒なので、避暑に行ってくるとは伝えてない。

  それに、薬師連中が万年雪の採集に、氷河に上がりに行ってる可能性がないともいえないので。

  で……

  虎獣人さんに頼んで、熊と鹿の内臓を手に入れる予定。

  ただ、対価が出来上がったソーマだったんだけどね。

  出来上がる予定のソーマが1本じゃないので頷ける話だけど……

  まあ、物が最上級回復薬(疾病用)だけに、金貨10枚にもなる代物だけど、手元にあるか否かであれば、持っていたい代物だよね。

  調薬した本数全部が、リーナの腕前だと完成はするけど、ランクが多少はブレる事もあるの。

  爺ちゃん村長がランクの落ちてる物を買い取りたいと言われた。

  サーペントを公に出来ないので、ギルドに卸すのは出来のいい物を数本で、後は地産地消で。と伝えたら、超ご機嫌。

  一応、使うサーペントの内臓の量が多かったので、30本は作れる予定なので、手元に残すのは5本。

  虎獣人さんに3本、ギルドに5本、村に残りはさすがに多いと言われ……

  村が10本で充分で、対価が出せんと渋られた。



  虎獣人さんが多いなと言いながらも狩って来て、自分が調薬をして本封蝋して、爺ちゃん村長に渡すまで10日。

  バイパーだったり、内臓の量で、鹿と熊の内臓の量も変わるので、出来る本数も、日数も変わってしまうのよ。

  だから、次の満月が近付いて来てたんだけど……

  「町に帰る」と告げてた。

  理由は、ヒゲが……台風並みの雷雨が来そうと。

  虎獣人さんだけじゃないけど、村の獣人がカンカン照りの青い空を見上げ、眉をひそめてるほどなんだよ。

  まあ、濡れるのが好きな犬系獣人は反応してないけど、弱者に分類される系統の獣人ほど、既に避難するべく動き出してる。鼠とか栗鼠とか。

  兎は見た目ほどか弱くないけど、気にはしてる。

  でも、この村の近場は開墾してないので、崖崩れが起きそうなのは街道沿いかな?

  あ、トカレ村よりバレジ村の方がマズイかも……

  木を伐採し過ぎると、森の貯水機能が落ちるので、大雨が降ると土砂崩れが起きるっていう覚えがある。

  それに、あと、川が増水して橋が流されそうな気がする。

  バレジ村の備蓄がどうかは分からないけど、空を凝視して雲の流れを見てた獣人たちは足早に動き始めてた。

  森の恵みを採集に出掛けたんだと思う。

  ちなみに、爺ちゃん村長に売った回復薬は、下級から最上級まで色々だけど、魔力系は少ない。

  魔力持ちの獣人も居るけど少数で、魔力回復薬が要るくらいに使う攻撃魔法属性の獣人というのは稀。

  獣人の多くが持つ魔法が身体強化って言うのが、獣人の特性なの。

  だから、回復薬の大半が状態異常回復薬。

  そうそう、ソーマ残り全部、村に残せた。

  理由は、薬草畑にある素材で使いきれてないのを活用するのに、爺ちゃん村長の助言を得る事で。

  そのお陰で……

  世界樹から仮が取れたし、薔薇の垣根の大群は超貴重種だった。

  花色で使用する方法が違うもよう!

  「アンナ、書き残しとらんのか!?」と怒られたけど……

  逃げる時、魔法袋に適当に放り込んだからさあ。

  もしかすると、入り切らずに残して来ちゃってる可能性もあって……

  何やら、爺ちゃん村長考え込んでた。

  「地下に置いとったのは全部、持ち出せたんか?」

  「地下と保管庫にあったのは全部」といえば頷いた。

  「調合室は釜と機器、器具とか道具を優先したから、居間にあった本棚の本が……」

  耳がペタンとなってるだろうなと分かる感覚。

  「大丈夫じゃ。アンナなら大事な物は地下で、居間のは見栄え重視の筈じゃから」

  そう言って、カラカラと笑ってた。

  「早う、町に戻って、大雨の間、家に籠って、資料を読め」

  そう言って、背中を押されて、手を振って、トカレ村を離れた。

  まあ、土産に、猿獣人が5mもの木から捥いで来た黄色い果物をくれた。



  大雨が降る気配なんて、現代日本にあった雨雲レーダーでもない限り、気付けない程の良い天気で、家に帰り着き……

  商業ギルドにあった大きな置型でも良いから、エアコンが欲しいと思いながら、貰った果物を鑑定したら……

  「カティア」で、生食でも美味しいけど、皮はむかずに乾燥させると、ねっとりとした濃厚な甘さになるようだった。

  言葉だけだと柿っぽいイメージだけど、見た目は洋梨形で、色はグレープフルーツの様な黄色。

  猿獣人が取ってきたというように、5m越えの木の枝の先に実り、枝がしなるって……

  自分じゃ採集は無理そうだ。

  とりあえず、納品分の回復薬各種などを持って行きがてら、備蓄するのに市場で買い物しておこうと思ってた。


  白や薄緑のナスなど、薬草畑にない野菜に、チーズなどの加工品、ソイの実は買わなくても良いんだけど、見っけもん!があるかもなのでランベルト商会に寄って……

  息を飲んだのが、コーヒー豆だ!

  といっても、ローストされた完成品のものではなく、果肉が、それも熟してワインの様な赤に斑になってるもの!

  この世界の者、赤い=毒っていう忌避感が強くて……

  黒も避ける傾向あるけど、黒は魔力を多く持つ色なので、英雄でもあるの。

  だから、召喚勇者の髪が黒髪で黒目までとなったら、歓喜って……

  そう、ラノベで定番だったよね……遠い目になりそう。

  その召喚の魔法陣が何処か欠けたのか、出来なくなったらしいって、婆ちゃんのところに来てた人が言ってたんだけどなあ。

  そう、人族主義の国がフェラージ帝国にまでのし上がった原動力が、勇者召喚だったの。

  その帝国が、エスペラント王国に攻め入ってきたって事は……

  まさか!召喚の魔法陣が稼動できた!?

  ヒゲがぴくぴくするって事は、当たらずも遠からずってところか……

  でも、今はそれよりコーヒー豆って事で!

  事情を聞けば……

  コーヒー豆は貴族でも特権階級が好んでるけど、どういう状態で手に入るのか確認せず、安く手に入るって事で、手に入れたらしい。

  そしたら、毒に犯された様に斑な赤に染まった豆って事で、意気消沈して、捨てるつもりで外に出してたそうな。

  そこを自分が見付けたのか!

  「この状態で採集しても良いんだけど、ワインの様な深い赤になるまで発酵させると、果肉を削ぎ落としやすくなるの。コフェにするのは中の種で、炒って粉にした物に熱湯を注ぐのよ」

  豆を手に持って、そういえば、一気に破顔した。

  「果肉が要るのではないのですか!」と驚いてたけど……

  交易するなら、ちゃんと商品の勉強をしようよ。

  
  とりあえず、果肉が硬い状態だと綺麗に取れないんだとは伝えたよ。

  個人的に欲しかったので、買い取れる可能分だけ買って戻り……

  まだ発芽可能な実の状態だったので、薬草畑の温室に植える事にした。

  勿論、大半は発酵させ果肉を取り除いて、ローストさせるけどね!

  ただ、コーヒーとかカカオは熱帯のベルト地帯と言われた場所でしか育たないっていうほど、寒さに弱いんだよね。

  まあ、あくまでアッチでの認識なんだけど。

  だから、育てるには温室必須だけに、亜空間という理ではどれだけ生育可能なんだろう?

  それに、どの温室に入れる?

  アウラウネやマンドレイクと言われる魔植物たちが闊歩してる温室に入れると、変な影響がありそうだし……

  メロンやスイカって温帯だよね?

  あ、柑橘系も温帯だったよ……

  今から天候が荒れるって時に、温室を作るのに川に行く?












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