獣人世界へ、ようこそ?

ふにゃー

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  「荷物は?」と聞き、運んでくれようとするビルさんは、やはり狼獣人。

  下手に聞こうとしなくて良かった。

  「コイツは例の製作者だから」と、アランが濁して……

  「あー、なるほど」と納得出来るって……

  衛兵の詰所で、もしかして有名になってたのか、魔法袋。

  「アマイルのダンジョンなら、方向性が違うから知られてないか」

  そう言って、心配そうになったビルさんと違い……

  「おい、猫っ子、くれぐれも作れるなんて言うなよ」

  小さいのは事実だけど、子猫扱いするな~!

  ムッとしながら、部屋に行けば……

  個室は、甲板から階段を上がるけど、パテ部屋は階段を降りて直ぐ。

  扉が左右に5つずつ並んでいて……

  思い浮かんだのが、寝台列車。

  雑魚寝の人達は、更に階段を降りて行ってる。

  「ここだな」という扉を開けたら……

  まさしく寝台列車。

  上下2段のベッドにカーテンが付いてる仕様だった。

  「何処にする」と、小声で言い合ってるので……

  「上段で」と言って、さっさと左上の梯子に手を掛けた。

  「俺も上」と言って、アランも右上に上がって行く。

  猫系は上が好き?

  そんな事を考えてたら、「本当に上で良いの?」と困惑気味に言ってるけど、尻尾が振られてるよ。


  昼ごはんは食べる人と食べない人が習慣上居るけど……

  自分は乗船までに食べて来た。

  船は点呼後直ぐに出航した。

  下りは蒸気は使わず、川の流れで辿り着けるみたい。

  甲板で船を楽しもうかな?とも考えたけど……

  アランに「落っこちると魚の餌になるぞ」って茶化されるし!

  「割とお上りさんって、大人でも子供みたいにはしゃぐ傾向にあるよね」

  ビルさんまで、そんな事を言ってるから、外には出ず……

  部屋にある丸い窓から、外を眺めてたんだ。

  けど、アランじゃないけど、猫は寝子なので、お昼寝してた。


  暗くなったと思ったら、部屋に付いてる魔力ランプに灯りが……

  オレンジ色で、魔石使用の魔道具なんだけど……

  天井部の灯りではなく、ベッド毎に1つずつって優雅!

  って、そこそこお値段高かったね。

  それにお腹が空いて来たなあ。と思って、ゴソゴソ。

  だって、船に食事処はないから、各自の持ち込みなの。

  だから、魔法袋から出したっていう風にして、ワカサギのフライを挟んだパンに齧り付いてたら……

  「それ、裏で燻製にしてたやつか?」

  アランも起きたのか、眉間に皺を寄せて、聞いて来たので……

  「これは燻製じゃないよ。燻製はツマミで、これは油で揚げたもの」

  燻製を入れてる琺瑯の入れ物を出して見せたら、皺が深くなった。

  モゴモゴ何か言ってるけど、聞こえないと思ったら……

  摘んでた燻製の重みが無くなった。

  下のビルさんがモグモグしてて、「これ凄く美味しいね」と言ってた。

  唖然とした自分に、「ビル、お前ずるいぞ!」とアランさん叫んでた。

  「俺だって我慢してるっていうのによォ!」唸ってた。


  「この入れ物も綺麗だし、凄いね」

  ビルさんがいう様に、作ったんですよ。

  この世界の食品や料理を入れる物って、重たい陶器か、1回しか塗ってない漆の木のもので……

  葉っぱがラップの様に使われてるところもある。

  まあ、その葉っぱが有能で、腐るのを抑えるとかいう効能があったのには、仰け反るくらいに驚いたけど……

  漆は、何回塗り重ねるかで、高級品になって行く代物だし、漆自体もダンジョンのトレントが落とす品だし……

  漆の使い方が分かるまでは、蜜と違って捨てられてたらしいけど。

  自分も、木工でお皿やカトラリーを作って、漆は買って塗ってみたけど……

  水分を含むものには不向きって事もあって、試してみたの。

  ガラスの容器で、透明感があるものなんて高級品だし、割れたら困る。

  割れないガラスって、確か、なにか金属?入れるんだよね?

  そこまでは覚えてなかったけど、琺瑯は、金属の上にガラスコーティングしたものだと知ってたので……

  「ポーション瓶の出来損ないを溶かして、容器に纏わせた様なものだから、蓋が微妙に合わさらないんだよねえ」

  空気が入っちゃうと綺麗にならないので、勢いも大事なんだと分かったけど、素材も揃わないので、何回も作れないし。

  薄いところと厚くなっちゃったところもあって、漆は塗り重ねる時に是正もできるけど、溶けてるガラス=高熱なので下手に触れないし……

  空気の泡が残るのは困ると慌てて、ダマが出来たところもあるし……

  アッチの記憶で、綺麗な琺瑯製品を見てるから、琺瑯といっていいのか、技術がない者が作った不出来な代物なんだよ。

  技術を持った者が作ったら…とは思わないでもないけど……

  愚痴ってみたけど……

  「水分を含むものを入れるとなったら、重たい陶器になるだろ」

  そうは言ってるけど、結局欲しいのは、魔法袋に行き着くんだよねえ。

  付加で、空間に軽量や圧縮が必ず付くから。

  それに、商業ギルドでの魔法袋納品の契約は……

  終わりじゃなく、止まったって状態なんだ。

  総勢、30個作って、納品したので、トワイゾの町でどれだけ行き渡り、どのくらい王都のギルドに、根回しで渡されたか……

  自分には一切知らされてないけど、自分を特定されない為だって話だったけど……

  魔王国に向かおうと知ったら、魔法大国に囲われたりして……

  ダメダメ、フラグ立っちゃうよ!


  その後、彼ら、夕飯を買わずに乗船したと分かって、譲ってあげた。

  勿論、対価は払って貰ったけど。

  幾つか出して選択させてあげようかと思って、思い留まった。

  暖かい状態の携帯食が幾つもある=時間停止の魔法袋があるって思われるって事でしょ?

  魔法袋を持ってるのは知ってるだろうけど、それもかなり緩やかな時間経過だって事くらいまでは。

  でも、時間停止となれば、話が違って来るから。

  それはマズイって事で、照り焼き肉は出さず、食べてたワカサギのフライ挟みにしておいた。

  んだけど……お魚が減っちゃったにゃ……

  鮭鱒、早く釣りたい……

  あそこの川なら、遡って来て産卵しそうな要素あったんだけど……

  水底が見えない深さには、産卵しないって聞いた気がするから……

  「アマイルのダンジョンの近くに、川ってあるです?」

  川があるなら、何匹釣ろうかと思案しながら、聞けば……

  「川っていうか、アマイルのダンジョンの中に水辺があるんだぞ?」

  知らないのか?と聞かれた。アランに。

  馬鹿にした様な顔で!

  「情報は、ダンジョンに潜る前に、現地のギルドでって思ってたので、リノアールの花蜜以外は詳しくないです」


  川辺があるのは低層だけど、釣る前に釣られるぞと、アランには笑われたのと……

  60階層まである上級のダンジョンだから、気を付ける様に言われた。

  ちなみに、リノアールの花蜜は、自分が辛うじて採集できるだろう14階層。

  15階層は、徘徊型の中ボスなので、遭わずに抜けられると、自分にはラッキーぽい。

  16階層より下は、パーティ推奨になるそうです。

  ただ、低層といっても、下の階層に落ちる罠が、あちこちにいっぱいあるので、気を付ける様にって言ってるけど……

  ビルさんや、それってフラグっていうんだよ?

  まだ未踏の階層に落ちて、行方不明になったポーターが居るって……

  ん?そうか……

  行方不明になったと見せかけて、逃げるか!  








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