リーズ・ナブルは此れにて御免 ~ 元軍人付与士は冒険者として成り上がる~

アゲインスト

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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~

父と子の

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 私、リティア=ラインホードがこうして父と二人で話をするのは、遠い昔のことのように思えるほど、あまりにも機会のないことだった。
 リーズから借りた隊員の服から、貴族の娘として相応しい格好になって、父の部屋で、父の背中を見ていた。
 
 
 
 
 
 
 貴族然とした人だった。
 何も変わっていない、私の父だ。
 娘が危機にあっても、それが騎士としての役割だと割りきっている部分があることを、私は知っている。
 そこについては、私がどうのこうのいうことはない。
 それが騎士として生きた、父のあり方だと理解しているからだ。
 だから。
 
「・・・御父様」
 
 私がするべき事は、そんなことではないのだろう。
 なあ、リーズ。
 
「・・・リティアよ。我が娘よ・・・よく戻った」
「多くの助けがあってのことです。彼らには感謝しています」
 
 支援部隊の者たちには、よくよく感謝しなければならん。
 陛下からの恩賞とは別に、私個人からも何か彼らに報いなければならないだろう。
 
「高位の魔物。どうであったか」
「強く、何よりも恐ろしい存在でした」
「そうか。騎士であるならば、いずれはあのような存在から国の民を守ることもあろう。若くしてその経験を積むことができたのは行幸ともいえる。恐怖を味わい、乗り越えたお前はもっと強い騎士となろう。今後も励んでいくことだ」
「はい。肝の命じておきます」
 
 父の言葉に嘘はないのだろう。
 騎士としてのことで、この人の言うことが外れることは無いに等しい。
 
「ですが、御父様。私には、まだ恐怖がございます」
「・・・私が見た限り、そのようなものはないはずだ」
「はい。騎士として、それはございません・・・・・・ですが、あなたの娘として、ずっと怖かったことがございます」
 
 リーズ。
 私は踏み込むぞ。
 一歩進んだその先に、私は行くぞ。
 
「ずっと、私は御父様の愛を望んでおりました。魔物との戦いで死ぬかと思った時も、そう願いを口に出すほどに」
 
 思えば親子ではあったが、家族ではなかったのだろう。
 貴族とは、そういうものだと思えばそれまでだが、私たちはそれで終わってはいけない。
 
「その願いを聞いて、こう言ってくれる者がいました。『それだけじゃ寂しい』と。どういうことなのかと聞いて気づかされました。そしてそれは、今までずっと私が遠ざけていたことです」
 
 父は黙ったままで、私の話を聞いている。
 
「覚悟ができていなかった私に、彼は勇気をくれました。私は今、彼の言葉助けられてここにいます。それは、真実に立ち向かうこと」
 
 
 
 
 
「---どうかお願いします。御母様のことを教えてください」
 
 
 
 
 
 
 魔物と一戦交えた娘が、どうにも化けて帰ってきた。
 私の背を見るその瞳には、今までとは全く違った光が宿っていることだろう。見ずともわかる、なんと言っても私の娘だからな。
 さて、ああ、その時がきたのだなと、相も変わらぬこの顔の内でそう思う。
 
「・・・寂しいか」
「はい」
 
 よくもまあ、貴族の娘にそれをいい、そしてそれを言わさせるとはな。よほどの傑物か、あのリーズという男は。
 謁見の間で見たときは、そこまでの男とは思わなんだ。見てくれ通りの平民の男だと。
 しかし、娘を連れて城下の店より出てきたとき、娘の変わりようを見て、ただの男でないことを悟った。
 そして、その考えが間違いでないことを、この娘の変わった気配が教えてくれる。
 ここまで真っ直ぐに言葉を話す娘ではなかったというのに、まったく。
 
「・・・母のことであったな」
「はい。彼がいう通り、私は母のことについて知らなさすぎる。子供の誕生には母の愛がなければと。だから、母の愛を私は確かめたいのです」
 
 ・・・・・・愛、か。
 そうか、母の愛か。
 お前の口からそんなことがな。
 
「・・・知ってどうする?」
「私の間違いを正したい」
「間違い?」
 
 その間違いがなんなのか、興味があった私はそこで初めて娘の方へと体を向けた。
 娘は堂々と、振り返った私の目を見ている。
 その瞳はやはり、今までにない強い光を放っている。
 
「私は間違えていたのです。見えるものだけに固執し、それが真実だと思っていたのです。父と、姉と、家にいる者たち。それが全てだと、そう思っていた。それが間違いだと、見逃しているものがあるのだと、彼が自分の過去をもって証明してくれました。
 友のその覚悟に、私は応えたい。
 逃げたままの自分ではいたくないのです!」
 
 言葉に込めた思いの丈が、どれほどのものか。容易にわかるというものだ。しかし、この子がここまで力強く、私に主張することがあっただろうか。
 握り込んだ拳が震え、ドレスにシワを作っている。そんなことに気が回らないほどに、この子は今真剣なのだ。
 
 ならば父として、応えないわけにはいかない。
 
「・・・そうか。そこまでの覚悟があるのなら、私が思っていたよりも早くその時が来たということ」
 
 
 
 
 
「話そう、お前の母のこと。彼女が最後に語った言葉まで、全てをお前に教えよう」
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