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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~
リーズ・ナブルは夕食を囲む
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それからの話をしよう。
リティアと父の関係が改善し、本当に親子になれた後のことを。
お姉さんとの気まずいお茶会に、父親を伴って現れたリティアの少し赤くなっていた目尻を確かめたとき、俺は自分の役目を果たせたことがわかった。
彼女の向きたかった先に行けたんだと確信した俺は、なんだか肩の荷が降りたような気がしてそっと息を吐いていた。
姉妹が涙を流しながら抱き合う姿と、それを眩しそうに眺める父親の見守るような姿。
この景色を見れただけで、俺は満足だった。
俺ではもう、望めやしない光景だったからだ。
それからはあっという間だったというか。
相変わらず頑として変わらない顔の当主様ことダグラス様より心のこもったお礼の言葉をいただき、ついでとばかりにこの日の夕食の場にお呼ばれされた。
よく見るような長いテーブルではなく、一般的な家庭で囲むような円形のものにそれぞれ向かい合う形で座っている。
「・・・こうして家族で卓を囲むことも、どれほど昔のことであったか」
「だめよ御父様! 今は暗い雰囲気は無しでいきましょう! 折角のお食事なのだから!」
「その通りですよ。リーズも遠慮して料理に手をつけられないではないですか」
「あ、お気になさらず。マナーを確認していただけなんで」
いやはや、変われば変わるもんだな。
実際にギスギスしていたところを見たことがない俺だが、今までそうだったとは思えないくらいには和やかな感じだ。
マナーを確認なんていっているが、本当はこのやりとりにちょっと面食らっていただけだ。
正直いって、ちょっと背中を押しただけでここまで関係が改善するのなら、もっと早くこうなってもおかしくなかったはずなんだが。よほどこの家族のことが触れられないようになっていたのか、などと邪推してしまう。
「リーズ。今日の料理はそこまでマナーを気にしなくていいものだ。特にこの牛肉の煮込みなどおすすめだぞ」
ほら、なんて軽い調子いってくれるが、ちょっと待ってほしい。
そんな風に差し出されては誤解が生じてしまう。
「・・・ずいぶんと、近いじゃないか・・・・・・!」
やっぱこうなるかーーー!
さすがに距離感を考えるべきだった、親近感を出すためにいろいろやったが、年頃の女性にするべき関係構築のやり方ではなかった!
親御さんめっちゃ顔怖いんですけど!
「だ、大丈夫だから。ちゃんと食えるから・・・」
「そうか?」
迫るフォークを退けて、なんとか危機を脱する。
こんなことでは幾つ命があっても足りんぞ。後で言っておかないとまたやりかねん。
話題を変えるためにこちらから話を切り出す。
「そういえば式典には皆さんお揃いで?」
「そうなるな。なにせ国を挙げての大きな式典になる、王都の近くに居を構えているものだけでなく、報せを受けた全ての貴族が集まる」
話を式典に移したが、その規模に今更ながらに驚いてしまう。しかもそれを二日後にやろうというのだから対応が早い。
討伐した魔物が腐敗しないようにするためでもあるんだろう。あの大きさのものをそのままにしようとすれば莫大な労力がいる。国の威信付けのための式典が終わりしだい様々な用途に使われるからな。保存には気を使うことになるだろう。
「しかし、お前はあの魔物の素材に興味がなかったのか?」
「魅力はあったが、扱いきれるとは思えなかったんでな。まだ未熟なもんであまり高位の魔物の素材での魔法の行使はできないんだよ」
リティアは俺の魔法を見たことがあるからこその話題だったが、それを知らない他の面々にはどういうことかわからずに疑問気な表情で注目を集めてしまう。
「・・・報告にあった付与の魔法であったか。魔物の魔力を使うというなはそこまで難解なものなのか?」
親父さんは防衛の観点から目新しい技術に興味があるようだ。今までの個人でやるような付与の魔法とは違う手法なので、既存のものとどう違うのか知りたいのだろう。
やり方を理解したかといって出来るようになるわけではないので、少しばかりそのやり方などについて話を進めることにした。
「俺が扱うのは魔物の素材に宿っている魔力を使った魔法です。よく鍛冶屋やなんかで見るような魔剣みたいなもので、素材に使ったものの特性によって効果が違います」
俺は先ほどからいい匂いを放っている、この家自慢の料理らしい牛肉の煮込みを指差して、そこに視線を集める。
「この方法のいいところは自分の魔力だけで付与するよりも効果的にできることです。魔物の魔力を足すことで消費を押さえ、元から宿っている性質に沿った効果を発揮するので変質させる手間も省けます」
おもむろにフォークを手に取り、牛肉に突き刺す。
フォークの刃先は抵抗らしい抵抗を受けることなく沈んでいく。よほどじっくりと煮込まれたのだろう、口に入れれば溶けてしまうことが予想できる。
「通常であればこう、でも」
俺は自分の懐から出した鉄板のようなものを机の上に置いた。
「これは『アイアンシザーの甲殻』です。あいつの体の堅さはご存じですよね」
「若い頃の遠征で何度かな」
「私も新人騎士としての研修で上司が倒すところを見させてもらった」
どうやら騎士の二人は見たことがあるようなので、どんな魔物かは説明しなくていいみたいだ。ミス・プリシアもそこまで興味はないっぽい。まあ簡単にいえば鉄みたいに固い体を持つカニとかいう生物によく似た魔物だ。
「俺はこれを使って、対象の防御力、攻撃に対する抵抗を高めることができます。効果発動、展開」
短い詠唱で魔法が発動し、黄土色の淡い光が皿を包む。その光景に卓についている三人ばかりでなく、周りにいた使用人も驚いたような様子をみせている。
俺はそれに構わず、もう一度料理に向かってフォークを下ろしていく。すると先ほどとは打って変わって刃先は微塵も刺さろうとしない。
「とまあ、こんな感じで」
若干強く突き刺してもびくともしない。このくらいならお手のものといった感じかな。
「・・・ほぉ」
「まあすごい!」
「こんなこともできるのか・・・」
思いもよらない光景に息の飲む三人。それに気を良くした俺は次々と小技を披露しては場を沸かせた。
こうして楽しい夕食は笑いの絶えないものとなって過ぎていくのだった。
リティアと父の関係が改善し、本当に親子になれた後のことを。
お姉さんとの気まずいお茶会に、父親を伴って現れたリティアの少し赤くなっていた目尻を確かめたとき、俺は自分の役目を果たせたことがわかった。
彼女の向きたかった先に行けたんだと確信した俺は、なんだか肩の荷が降りたような気がしてそっと息を吐いていた。
姉妹が涙を流しながら抱き合う姿と、それを眩しそうに眺める父親の見守るような姿。
この景色を見れただけで、俺は満足だった。
俺ではもう、望めやしない光景だったからだ。
それからはあっという間だったというか。
相変わらず頑として変わらない顔の当主様ことダグラス様より心のこもったお礼の言葉をいただき、ついでとばかりにこの日の夕食の場にお呼ばれされた。
よく見るような長いテーブルではなく、一般的な家庭で囲むような円形のものにそれぞれ向かい合う形で座っている。
「・・・こうして家族で卓を囲むことも、どれほど昔のことであったか」
「だめよ御父様! 今は暗い雰囲気は無しでいきましょう! 折角のお食事なのだから!」
「その通りですよ。リーズも遠慮して料理に手をつけられないではないですか」
「あ、お気になさらず。マナーを確認していただけなんで」
いやはや、変われば変わるもんだな。
実際にギスギスしていたところを見たことがない俺だが、今までそうだったとは思えないくらいには和やかな感じだ。
マナーを確認なんていっているが、本当はこのやりとりにちょっと面食らっていただけだ。
正直いって、ちょっと背中を押しただけでここまで関係が改善するのなら、もっと早くこうなってもおかしくなかったはずなんだが。よほどこの家族のことが触れられないようになっていたのか、などと邪推してしまう。
「リーズ。今日の料理はそこまでマナーを気にしなくていいものだ。特にこの牛肉の煮込みなどおすすめだぞ」
ほら、なんて軽い調子いってくれるが、ちょっと待ってほしい。
そんな風に差し出されては誤解が生じてしまう。
「・・・ずいぶんと、近いじゃないか・・・・・・!」
やっぱこうなるかーーー!
さすがに距離感を考えるべきだった、親近感を出すためにいろいろやったが、年頃の女性にするべき関係構築のやり方ではなかった!
親御さんめっちゃ顔怖いんですけど!
「だ、大丈夫だから。ちゃんと食えるから・・・」
「そうか?」
迫るフォークを退けて、なんとか危機を脱する。
こんなことでは幾つ命があっても足りんぞ。後で言っておかないとまたやりかねん。
話題を変えるためにこちらから話を切り出す。
「そういえば式典には皆さんお揃いで?」
「そうなるな。なにせ国を挙げての大きな式典になる、王都の近くに居を構えているものだけでなく、報せを受けた全ての貴族が集まる」
話を式典に移したが、その規模に今更ながらに驚いてしまう。しかもそれを二日後にやろうというのだから対応が早い。
討伐した魔物が腐敗しないようにするためでもあるんだろう。あの大きさのものをそのままにしようとすれば莫大な労力がいる。国の威信付けのための式典が終わりしだい様々な用途に使われるからな。保存には気を使うことになるだろう。
「しかし、お前はあの魔物の素材に興味がなかったのか?」
「魅力はあったが、扱いきれるとは思えなかったんでな。まだ未熟なもんであまり高位の魔物の素材での魔法の行使はできないんだよ」
リティアは俺の魔法を見たことがあるからこその話題だったが、それを知らない他の面々にはどういうことかわからずに疑問気な表情で注目を集めてしまう。
「・・・報告にあった付与の魔法であったか。魔物の魔力を使うというなはそこまで難解なものなのか?」
親父さんは防衛の観点から目新しい技術に興味があるようだ。今までの個人でやるような付与の魔法とは違う手法なので、既存のものとどう違うのか知りたいのだろう。
やり方を理解したかといって出来るようになるわけではないので、少しばかりそのやり方などについて話を進めることにした。
「俺が扱うのは魔物の素材に宿っている魔力を使った魔法です。よく鍛冶屋やなんかで見るような魔剣みたいなもので、素材に使ったものの特性によって効果が違います」
俺は先ほどからいい匂いを放っている、この家自慢の料理らしい牛肉の煮込みを指差して、そこに視線を集める。
「この方法のいいところは自分の魔力だけで付与するよりも効果的にできることです。魔物の魔力を足すことで消費を押さえ、元から宿っている性質に沿った効果を発揮するので変質させる手間も省けます」
おもむろにフォークを手に取り、牛肉に突き刺す。
フォークの刃先は抵抗らしい抵抗を受けることなく沈んでいく。よほどじっくりと煮込まれたのだろう、口に入れれば溶けてしまうことが予想できる。
「通常であればこう、でも」
俺は自分の懐から出した鉄板のようなものを机の上に置いた。
「これは『アイアンシザーの甲殻』です。あいつの体の堅さはご存じですよね」
「若い頃の遠征で何度かな」
「私も新人騎士としての研修で上司が倒すところを見させてもらった」
どうやら騎士の二人は見たことがあるようなので、どんな魔物かは説明しなくていいみたいだ。ミス・プリシアもそこまで興味はないっぽい。まあ簡単にいえば鉄みたいに固い体を持つカニとかいう生物によく似た魔物だ。
「俺はこれを使って、対象の防御力、攻撃に対する抵抗を高めることができます。効果発動、展開」
短い詠唱で魔法が発動し、黄土色の淡い光が皿を包む。その光景に卓についている三人ばかりでなく、周りにいた使用人も驚いたような様子をみせている。
俺はそれに構わず、もう一度料理に向かってフォークを下ろしていく。すると先ほどとは打って変わって刃先は微塵も刺さろうとしない。
「とまあ、こんな感じで」
若干強く突き刺してもびくともしない。このくらいならお手のものといった感じかな。
「・・・ほぉ」
「まあすごい!」
「こんなこともできるのか・・・」
思いもよらない光景に息の飲む三人。それに気を良くした俺は次々と小技を披露しては場を沸かせた。
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