リーズ・ナブルは此れにて御免 ~ 元軍人付与士は冒険者として成り上がる~

アゲインスト

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ダボンナ王国独立編 ~リーズ・ナブルの人理《ひとり》立ち~

リーズ・ナブルはあれよあれよと

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 さんざん酔っぱらった挙げ句部屋へと帰還した時の記憶が存在しない、どうもリーズ・ナブルだ。
 いい気分で飲み明かしたのだが、起きたら起きたで頭が痛い。最悪な気分だ、美味いからってあんなにバカスカボトルを開けるんじゃなかった。
 この世を恨みながら起床した俺は、しばらく痛みに耐えながらベッドの上で頭を抱えて唸っていた。
 
 それでも世界は回っているし、人の営みは終わることはないのだ。
 まあつまりは朝食の時間になったわけなんだが、部屋から出ていくような気力は俺にはないのだ。屍が如き俺をどうかほっといてくれ。
 だがそんなことを貴族の使用人が許すようなことはなく、情けも容赦もなく無慈悲に扉が叩いてモーニングを告げてきやがる。
 
「・・・リーズ様、朝食の御時間でございます」
 
 うるせぇ、死ぬぞ、俺が。
 たかだか扉を叩く音、女の金切り声でもあるまいにこうも頭にひびくのか。もう深酒はしないことを何かに誓おう。何かは知らんが。
 どうせ忘れてしまうようなうっすい誓いを脳内でほざきつつ、動けばまた痛みだすことは必然とばかりにその呼び掛けを無視する方向で姿勢を固める。
 
「・・・失礼いたします」
 
 それでもやっぱり職務には忠実に。
 返答しない俺の様子を確認するため、部屋へと侵入してくる。
 
「リーズ様、起きて・・・ひゃあ!!?」
 
 入ってきたはいいものの、俺の姿を目にした瞬間に今まで起伏のなかった声に感情が乗る。
 気を付けることだ、それは俺を容易く殺すぞ。
 
「な、なんて格好をしているんですか!?」
「・・・・・・うるせぇぞ、頭に響く・・・」
 
 そこまで驚くんじゃねぇ、お前だって暑かったら服ぐらい脱ぐだろうが。だったら、
 
「全裸なっても仕方ねぇだろうが」
「なにを言ってるんですかこの変態!!」
 
 確かに全裸はよくないかもしれんが、変態はなくない?
 いつの間にか脱いでいたので俺にはどうやっても責任なんてとれない、俺は悪くねぇ!
 バタンと音がするほど扉を閉めて、ダダダダダと遠ざかっていく足音がさらに俺を苦しめたが、もうそんなことはいいからとにかく気持ちが悪かった。
 
「・・・・・・あ、吐きそう」
 
 
 
 
 
 
 それから吐き気と戦っていた俺は、屋敷に来たときの執事が来たことにより事態の改善を図られていた。
 二日酔いに効く秘伝の薬を飲まされ、いくらか体調が回復したと思えば別の部屋に連行された。
 下着だけは穿かせてもらえたが、それでも九割裸の男が廊下を歩くものではない。こちらが拒否る前に行動に移させる手腕に驚愕する他なく、俺は衣装部屋らしきところでメイドに囲まれて採寸されている次第である。
 
「ワッツ?」
「昨晩にそういう話をされたとか」
 
 昨日?
 え、俺なんか話してたっけ?
 
「酒盛りの最中に式典の服がないことをお聞きしたようで、それは流石にまずいだろうということをお話されて、急遽御当主様の礼服の一部を使用するよう御指示をいただきました」
「まじかよ」
 
 どんだけやねん。
 え、嘘、俺そんな話してたの? 全然覚えてないんですけど。記憶がぶっ飛んでますわ。
 そんな風に驚いている俺をよそに採寸をしていたメイドたちは仕事を続けている。若干一名鼻息の荒いのがいるんだが大丈夫か? 身の危険を感じるんだが。
 
「しかし、よく鍛えられておりますな」
「それよりこの人どうにかしてくれない?」
 
 絶対それって仕事に関係ないよね? その手のタッチング感別の意図を含んでいるよね? 鼻息どころか呼吸が乱れているよね?
 鳥肌すら立ってきた俺を正面から見ていた執事は背後で欲望を発散させているメイドを無視して俺の体に見入っている。
 軍人として、何より部隊長として鍛えていた俺の体は貧弱子供時代から革新的な変貌を遂げ、バキバキに筋肉を纏ったものとなっている。傷もそれなりについているが、胸のもの以外はうっすらと残っている程度だ。
 
「やはりいくらか種類を用意しておいてよかったですな。身長はともかく肩幅が違いますし、肉の付き方が違います。扱う得物の違いでしょうか?」
「それより見るところあるよね、俺の背後にいるよね、とんでもない変態が抱きついてきてんだけどそこんとこにツッコミ入れるところだよね」
 
 ええい離せ! 触れるな! 撫でるな! 顔を擦り付けるんじゃない!!
 
「明日には縫い上げて試着してもらいます、式典当日には完璧なものを用意いたしましょう」
「ありがたいんだけど、服装ばっかよくしたって俺礼儀とかあんま知らないぜ」
 
 服に着られるどころの話ではなく場違い、それどころか勘違い野郎とみられてもしかたないくらいに礼儀作法とか知りません、そんなんいらない生活だったものでな。
 
「ご安心ください」
「え?」
 
 そんな俺にものすごーく頼りになりそうな、それ以上にものすごーく不安になる表情を浮かべた執事のおっさんが、おもむろに手を叩いて何かを呼び寄せた。
 
「当家と関係のあるお方に恥を掻かせるわけには参りません、ええ参りませんとも」
 
 そして現れたのは知能集団みたいな面々。無駄に眼鏡が光ってるし、サディスティックな表情で嬉々として鞭をしならせている奴がいる。
 
「テーブルマナー、言葉使い、歩行時の姿勢、やることはまだまだありますぞ。式典までに学んでいただかなければならないので詰め込めるだけ詰め込んでいきますが、死なないでくださいね?」
「まるで意味がわからんぞ」
 
 この後、めちゃくちゃマナーを学んだ・・・のか?
 ここから俺の記憶がなくなっており、気がついたときには式典当日まで時が進んでいた。
 身に染み付いていた技能の数々を認識できるのに、それを学んでいた時のことを思いだそうとすると体に震えが走ることから、俺は考えることをやめたのだった。
 
 快晴に恵まれた式典は、そんな俺を置き去りにして始まっていくのであった。
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